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            チャッピー物語    by イッチャン

        続  編 前編はこちら 後編はこちら


全て創作であり、誰かをモデルにしたものでは有りません。

ご愛読下さい。

目  次


B05 BO6 B07 主人 N153 なぜ  N159 喜びN165 紹介 N171
苦労 N177 C06 節子 N182  N188 早紀 N194  N200 B08 B09 B10
徹夫 N205 喝采 N211 浦島  N217 C07 C08 綾子 N221 高峠伝説 N226
竹取物語 N234  C09 徹夫 N238 C10 竜崎 N243 健二 N249 B11,B12、B13
竜崎 N252  C11 節子 N257 N264 C12 鉄腕アトム N270 モンロー N276 C13,C14
徹夫 N280 C15,C16  柿沢 N284  N290  C17 波乱 N295 B14,B15 流転 N301
悔い N307


チャッピー物語(150)   ”男と女” やはり       

やっと棚卸しのメモが出来てくれば、

それをどう魅力的に表現するか

行数、大きさ、位置、など

を講師から教わり、

いろいろ苦労して書いてみると

今までのものとは格段に
みばえのいいものができた
そして講師にアドバイスを求めた。


今度の求職の履歴書には
良いものが書けたと思った。

が結果は同じく不採用の通知だった。

『俺がいたんじゃ お嫁にゃ行けぬ
  わかっちゃいるんだ 妹よ
  いつかおまえの よろこぶような
  偉い兄貴に なりたくて
  奮闘努力の 甲斐も無く
  今日も涙の 今日も涙の
  日が落ちる 日が落ちる』

男はつらいよ   渥美清


チャッピー物語(番外)   (5)作者より       

連載も150回を迎えました。

多くのかたの励ましのおかげです。


”こちカメ”(こちら葛飾区亀有公園前派出所)

みたいになれとの激励もいただきました。

あちらはすごいもので、全国的なフアンがあり

何かの紹介では1億以上売れている

作品(ページ数も多い)なので、私のものなどとは比べ物に

なりません( いやだねったら嫌だね ブツブツ!)

でも憤慨しながらも、逆に叱咤と思い

続けられる原因となっています。


チャッピー物語(番外)   (6)作者より       

なを歌が多く掲載していますが。

ここで説明しておきます。

勿論文面の補強としてムードを

伝えたいのですが。なかなかぴったりしたのが

ないので差し替えをしたりしています。

でも読者の仲にはその歌について

別の思い入れがあったして、文面との

違和感なり、逆の感情移入されたりする

のを危惧していますが。

(こだわりのイッチャンでして)

それにしても古い歌ばかりで若い人には

分らないといわれそうですが、そのとうりです。

作者自身が知っていて感情移入できるもの
でないと、載せられないのでよろしく願います。
また若い人も覚えてくれればありがたいです。

でも多くの歌を掲載するにあたり
いい歌が多いと気づきました。

皆さんのカラオケとかくちずさみの選曲にも
入れて下されれば結構と思います。


チャッピー物語(番外)   (7)作者より       

ではこれからどうなっていくのか

まったく作者も分りません。

あいかわらず頭を悩ましていますが。

物語なので”ほんとかな?こんなのありえない”

というものを、ほんとらしく作りたいのですが。

『あそこはこう思う』とか
『誰だれを多く登場させて欲しいとか』
『筋書きはこうあるべきかとか』

皆さんの希望を載せてくだされ
ありがたいと思いますが。

シビヤな意見でも結構です。

(以前よりも若干余裕ができたかな?)

参考にして筆力と頭の許す限り連載は続けるつもりです。


チャッピー物語(151)   ”男と女” 家族       

節子は夫の守に相談した。

『そうか棚卸か、節子はとても料理にうまく

とくに”おろし”が上手だよ、

この間の大根おろしなんて固まりが

多く入っていてとても美味しかったよ』

子供たちもいつの間にか来て

『僕たちの人参おろしなんて

みじん切りのところが多かったよ

でも鼻をつまんで食べたらよく食べられたよ』



『緑の丘の 赤い屋根
  とんがり帽子の 時計台
  鐘が鳴ります キンコンカン
  メーメー小山羊も 啼いてます
  風がそよそよ 丘の家
  黄色いお窓は おいらの家よ』

童謡   鐘のなる丘(とんがりぼうし)


チャッピー物語(152)   ”男と女” 料理       

節子は言った

『皆さんどうもすみませんね

大根おろしも

人参おろしも食べにくかったんでしょうね』

『でも勉強してきたので次から頑張るよ』

(一度料理も自分でやってみたらいいのよ

人の苦労も知らないで !

言いたいことばかり言って  もう!)



チャッピー物語(153) ”男と女” 主人       

旅館に話が戻る。

時枝と早紀の話をじっくり聞いた順三は

大変驚いた。仲居頭と近所の温泉のお嬢さん

の言う事である。相当の衝撃を順三に

与えた。”新参の仲居の女は女将に取り入り

良雄を篭絡し温泉までも自分のものにしたいと

たくらんでいる”との事であった。

『水にただよう 浮草に
おなじさだめと 指をさす
言葉少なに 目をうるませて
俺をみつめて うなずくおまえ
きめた きめた
おまえとみちづれに』

みちずれ   牧村三枝子


チャッピー物語(154)  ”男と女” 対処      

しかしながら順三も苦労人であった。

話は一方だけを聞くと必ず偏る。

これは一家の問題だし、息子の将来に

かかわる事であるし、じっくり対処する事にした。

『涙には幾つもの 想い出がある
心にも幾つかの 傷もある
ひとり酒 手酌酒 演歌を聞きながら
ホロリ酒 そんな夜も
たまにゃ なァいいさ』

吉幾三    酒よ


チャッピー物語(155)  ”男と女” 息子よ     

順三はすでに園子と良雄から女との

結婚話をきいていた。

順三は”息子がよければ良いといった”

ということで、主体性がないというか

養子の身で園子の意見に

承諾せざるを得なかった。

しかし息子の幸せは人一倍願って

いた。女に対しても若き日の園子に

似た麗しい雰囲気があり、ある意味

好感は持っていた。

『呼んでいる 呼んでいる
  赤い夕陽の 故郷が
  うらぶれの 旅をゆく
  渡り鳥を 呼んでいる
  馬鹿な俺だが あの山川の
  呼ぶ声だけは おーい 聞こえるぜ』

三橋美智也  赤い夕陽の故郷


チャッピー物語(156)  ”男と女” 男の出番       

時枝と早紀の意見にもどうかなと

感ずるところもあった。

ここからが”男の出番”である。

普段はあれこれ言わないが、いざという時には

世間が広いというか、感情に左右されない確かな

見方ができる事を期待されるのだろう。

『嵐も吹けば 雨も降る
  女の道よ なぜ険し
  君をたよりに わたしは生きる
  ここに幸あり 青い空』

大津美子   ここに幸あり


チャッピー物語(157)  ”男と女” 付き人 

順三はまず女将の園子に

相談した。”ちょっとした仕事に

女を付き人として使いたい”と。

順三はまず女の人柄を直接確かめたかった。

そして女と仲居頭の時枝との距離も置きたかった。

園子はこれからの事もあるし賛成した。

また順三が提案したりして、やる気になる

ことに喜んだ。

『静かな静かな 里の秋
  お背戸に木の実の 落ちる夜は
  ああ母さんと ただ二人
  栗の実煮てます いろりばた

 明るい明るい 星の空
  鳴き鳴き夜鴨の 渡る夜は
  ああ父さんの あの笑顔
  栗の実食べては 思い出す』

童謡   里の秋


チャッピー物語(158)  ”男と女” 仕事       

順三は女にあれこれ命じ、

その結果を確かめた。

やはり園子が感心したとうり、

その心配りは深く、

温泉のため、お客のため、そして

主人の為、しっかり考えながら

行動して結果をだしていった。

仕事の要件として”ほうれん草”があるが、

報告、連絡、相談といったことも

的確で順三を困らせることはなかった。

それどころか見せびらせないが、

思いやりの行為が秘められていた。

『与作は木をきる
ヘイヘイホー ヘイヘイホー
こだまはかえるよ
ヘイヘイホー ヘイヘイホー
女房ははたを織る
トントントン トントントン
気だてのいいこだよ
トントントン トントントン
与作 与作 もう日が暮れる
与作 与作 女房が呼んでいる
ホーホー ホーホー』

北島三郎   与作


チャッピー物語(159)  ”男と女” なぜ       

順三は確信した。女は温泉のっとりを

たくらむような人ではないと。

これは時枝と早紀の思いちがいだと。

でもそれを言葉にして説得しても

表面はうなずいても心からは

納得しないだろう。

なぜこういうことになったのか

と順三は思いを廻らした。

『病葉(ワクラバ)を 今日も浮かべて
  街の谷 川は流れる
  ささやかな 望み破れて
  哀しみに 染まる瞳に
  黄昏の 水のまぶしさ』

川は流れる    中宗根美樹


チャッピー物語(160)  ”男と女” 思案       

順三は考えた。

(時枝にとっては、長年の頑張りが、

女将の園子に認められなくなった事

が原因)であり、

(早紀にとっては息子の良雄を取られた)

ということだ。


いずれも思いこみも相当あるようだ
さてどうしたらよいだろう。


『アカシアの 花の下で
  あの娘がそっと 瞼を拭いた
  赤いハンカチよ
  怨みに濡れた 目がしらに
  それでも涙は こぼれて落ちた』

赤いハンカチ    石原裕次郎


チャッピー物語(161)  ”男と女” 決断       

単なる言葉で説得するより、結果として

できるだけ良い方向にするには

どうすればよいだろう。

苦労人の順三はあれこれ思いを

廻らした。

そして順三は決断した。

『愛は愛とて なんになる
男一郎 まこととて
幸子の幸は どこにある
男一郎 ままよとて
昭和余年は 春も宵
桜吹雪けば 蝶も舞う』

赤色エレジー   あがた森魚


チャッピー物語(162)  ”男と女” 提案       

順三は女将の園子に時枝を

番頭代理になってもらったら

と提案した。長年の苦労を称え

これからさらに総合的に旅館を

見てもらいたいと。

女将も仕事の忙しさに

忘れがちになっていた時枝の

処遇をこれで決められ、

そして他の女性従業員のはげみになり、

さらに温泉の発展に繋がるだろう

と思い賛成した。

『めだかの学校は川のなか そっとのぞいてみてごらん
そっとのぞいてみてごらん みんなでおゆうぎしているよ』
  童謡  めだかの学校


チャッピー物語(163)  ”男と女” 深慮       

順三は揉め事については

一切園子には言わなかった。

嫌なことを言って心配させ、また揉め事を

増やすより結果として、良い方向を望んだ。

憎しみの連鎖を避けたかったのだ。

こういうことは苦労人の順三のみに

できる事だった。

『俺ら岬の 灯台守は
  妻と二人で 沖行く船の
  無事を祈って 灯をかざす
  灯をかざす』

喜びも悲しみも幾年月  若山彰


チャッピー物語(164) ”男と女” 称え        

順三は番頭代理という事を、時枝に伝えた。

順三は時枝の長年の功績を称えた。

従業員の成長振りを称え、

全部時枝の指導によるところと褒め称えた。

そして最近面倒みている仲居の女の

誠心誠意ぶりもそれとなく紹介した。

共に、これからはさらに巡業員を

まとめて欲しいということを望んだ。


『旅のつばくろ 淋しかないか
  おれもさみしい サーカス暮らし
  とんぼがえりで 今年もくれて
  知らぬ他国の 花を見た』

松平晃  サーカスの唄


チャッピー物語(165)  ”男と女” 喜び        

時枝はまったく驚いた。最近は

まったく相手にされないで

(自分の青春は何だったのだろうか)

(身を粉にして働いてきたのに)

と思っていたのに主人、女将は分って

いてくれたのだと。

若い時から苦労が報いられる事になり

大変感激して嬉しかった。

『どこかで春が うまれてる
どこかで水が 流れ出す
どこかでひばりが ないている
どこかで芽の出る 音がする』

 童謡  どこかで春が


チャッピー物語(166)  ”男と女” 視野    

さらに憎んでいた女にたいしても

いまだ釈然とはしなかったが、

主人の言い分を聞いては、

見直しをしなければとも思った。

女将、主人の直属にもなり

いずれも褒めているとは

”私の見方も一面だけかも知れない。”

人のいうことは聞いておくべきで

あろう。どうしても自分だけでは

視野がかたよりがちだ。


『春は名のみの 風の寒さや
  谷の鴬 歌は思えど
  時にあらずと 声も立てず
  時にあらずと 声も立てず』

童謡  早春賦


チャッピー物語(167)  ”男と女” 選ばれしもの 
       
ところが

時枝が番頭代理として選ばれた時

あらたな苦脳を背負い込んだ。

いままで女を苛めてきた報いが

他の仲居の態度に表れてきたので

ある。一応新番頭代理であるので、

表面上は逆らう事はないが、

どこかよそよそしかった。そして

明らかに時枝に反感と恐怖を

示すのである。親身に近くに寄ってくるという

時枝との信頼関係はまったく無かった。

『あの人の姿 懐かしい
  黄昏の 河原町
  恋は 恋は 弱い女を
  どうして 泣かせるの
  苦しめないで ああ責めないで
  別れのつらさ 知りながら
  あの人の言葉 想い出す
  夕焼の高瀬川』

京都慕情   渚ゆう子/ベンチャーズ


チャッピー物語(168)  ”男と女” 孤独        

いくら時枝といえども一人では

なにも出来ないし、時枝は孤独を感じた。

選ばれしものの苦悩は今までの

女に対する仕打ちが生み出したものと

時枝は感じざるを得なかった。

その時 誹謗中傷される

女の気持ちが分ってきたのである。

時枝も少しずつ変らざるを得なかった。

『京都 大原 三千院
  恋に疲れた女がひとり
  結城に塩瀬の素描の帯が
  池の水面にゆれていた
  京都 大原 三千院
  恋に疲れた女がひとり』

デュークエイセス  女ひとり


チャッピー物語(169) ”男と女”  早紀        

順三は次には早紀のことを考えた。

人の恋愛感情だけは難しい。

簡単にはいかない。それも

幼い時からの一途の思いだからだ。

息子の良雄のことをそんなに思ってくれるのは

親としてはうれしいが。

こんな状況では返って困った。

『この道はいつか来た道
ああそうだよ
あかしやの花が咲いている』

 この道


チャッピー物語(170) ”男と女”  山ほどの男        

順三はさらに考えた。

(早紀は小さい時から、小さい北国の

温泉の世界だけに生きてきて、

世界が狭いのではないか。

ここだけでは、良雄が一番かもしれないが

男は山ほどいる。もっともっと素敵な

早紀にふさわしい人がいるのだ。)

『ささの葉さらさら のきばにゆれる
お星さまきらきら きんぎん砂子』

 童謡  たなばたさま


チャッピー物語(171)  ”男と女” 紹介        

順三は同じ旅館経営をしている

早紀の親に就職先を

斡旋した。都会の知り合いに

将来の女将を育てたいという

温泉があり、それを紹介したのだ。

早紀の親としても、将来を考えて

訓練の場を希望し、早紀を旅に

出す事が良かろうと考えた。

勿論 順三の紹介ならば間違いなかろう

という信頼の元だった。


『春を愛する人は心清き人
すみれの花のような

ぼくの友達

夏を愛する人は心強き人
岩をくだく波のような
ぼくの父親』

四季の歌


チャッピー物語(172)    ”男と女” 新天地       

早紀も両親にいわれ、都会の温泉に修行に

出かけることに、とまどいながら結局同意した。

今のままでは苦しみだけで、

展望が開けないからだ。

時枝もなぜか、最近は話しに乗らなくなり

早紀も孤独感を増していた。

そしてなにより、失恋の苦しみを

忘れたかった。そして新天地を

求めた。それがまた新たな出会いが生まれることになる。

順三の悩みは苦心の末

解決の方向に向かっていった。

『アカシアの雨に うたれて
  このまま死んで しまいたい
  夜が明ける 日がのぼる
  朝の光の その中で
  冷たくなった わたしを見つけて
  あの人は
  涙を流して くれるでしょうか』

西田佐知子  アカシアの雨がやむとき


チャッピー物語(173)  ”男と女” 母娘        

編集長高子の話に戻る。

高子は久しぶりに休暇をとって

田舎へと向かった。電車に乗って

母 澄江の所に帰るためであった。

病気がちな母を見舞う為である。

母は疲れた様子ではあったが、

久しぶりに高子に会えて大変喜んだ。


『母さんお肩をたたきましょう タントン タントン タントントン
母さん白髪がありますね タントン タントン タントントン』

童謡  肩たたき


チャッピー物語(174)  ”男と女” 歓待        

澄江は出来る限りのごちそうを

つくり高子を歓待した。

病気がちで老齢に進む澄江にとって

なにより高子に会うことがうれしかった。

『高子元気でいたかい。

大阪は大変暑いのではないかい』

何時までたっても母は母である。

『かあさんは 夜なべをして
手袋 編んでくれた
木枯らし吹いちゃ つめたかろうて
せっせと編んだだよ  故郷のたよりはとどく
いろりの匂いがした』

童謡  母さんの歌


チャッピー物語(175)  ”男と女” 心配        

一段落すると母がいつも言うのは、

『これからどうするのかい

仕事仕事もいいけど

いい人を見つけたかい

お母さんが一番心配なのは

それなんだよ』

いつものことでまたかと

高子は思った。

『時には母の無い子のように
だまって海を見つめていたい
時には母の無い子のように
ひとりで旅に 出てみたい
だけど心は すぐ変る
母の無い子になったなら
だれにも 愛を話せない』

カルメンマキ 時には母の無い子のように


チャッピー物語(176)  ”男と女” 父親        

澄江は無き父親のことを持ち出した。

『お父さんは気性の強い人で

いつも人と争っては金を稼いでいたが。

それで成功と失敗が極端で

お母さんは苦労したんだよ

それに女遊びも激しかったのよ

お母さんはどれだけ悔しい思いを

したのだが、高子が年頃になって

傷ついてはいけないとじっと我慢

してきたのよ』

『他人に聞かれりゃ お前の事を
年の離れた妹と
作り笑顔で答える私
こんな苦労にケリつけて
たとえひと間の 部屋でよい
母と娘の暮らしが欲しい』

金田たつえ  花街の母


チャッピー物語(177)  ”男と女” 苦労        

『それにお父さんは不思議と女の

ほうから寄ってきてね。

私もその一人かもしれないが

なにか男の色気と度胸が、

あってとてもよかったよ。

でも一緒になってからも

女出入りが激しく

お母さんもいつも泣いていたのよ』

澄江は愚痴か自慢なのか分らず高子に話した。

過去は大げさにも、美しくも見える。

『白樺 青空 南風
こぶし咲く あの丘 北国の あ
あ 北国の春
季節が都会では分らないだろと
届いたお袋の 小さな包み
あの故郷へ 帰ろかな 帰ろかな』

千昌夫  北国の春


チャッピー物語(178)    ”男と女” 真実        

『それでも亡くなってしまえば
いつもお父さんのことを
思い出すのよ。』

そして高子のこれからを気遣い
『人間というものは、しらぬまに、過ちを犯したり
悪い道に陥ることもあるのよ。

でもそこで居直ったり、ごまかしたりしたら
いけないよ、すみませんと素直に謝り
正直になることで、真人間に戻れるのよ。

そこでごまかすと、よけい悪い道から抜けられなく
そして不幸が増してくるんだよ』

『おふくろさんよ おふくろさん
空を見上げりゃ 空にある
雨が降る日は 傘になり
お前もいつかは 世の中の
傘になれよと 教えてくれた
貴女の貴女の真実
忘れはしない』

森進一    おふくろさん


チャッピー物語(179)  ”男と女” 滞在        

『高子には いい人と
一緒になって幸せになって欲しいのよ
こんな私がいるので
結婚しにくいのかも分らんが』

病気の負担が高子にかかっているのに
澄江は気兼ねしていた。

『高子もお父さんの気の強いところが
似ているので心配だよ。
余り強い女は男には
好かれないよ』

高子は分った分ったといいながら
2−3日を母の所で過ごした。

『うさぎ追いしかの山
小鮒つりし かの川
ゆめはいまもめぐりて
忘れがたき故郷

如何に在ます 父母
  恙なしや 友がき
  雨に風に つけても
  思い出ずる 故郷』

 童謡   故郷


チャッピー物語(180) ”男と女” 見送り        

やがて帰る日が来た。

多くの土産をもらった。

高子は"暑いし見送りは良い"といって

家をでた。

ところが 知らぬまに澄江は駅まで

足を引きずり、コ1時間のところを歩いてきた。

そして汽車が構内にくるまで

じっと待っていた。

高子はもういいよといったが

聞かずに待っていた。 やっと汽車が入ってきて

高子が乗り込んだ

『泣いて 泣いて
泣いているのを 知らぬげに
窓は二人を遠くする
こらえきれずに 見返れば
すがるせつない 瞳のような
星が飛ぶ飛ぶ  哀愁列車』

三橋美智也  哀愁列車


チャッピー物語(181)  ”男と女” 母娘        

高子が汽車に乗りこんだ後

いよいよ発車のベルがなり

澄江はよろよろと手を振

別れを惜しんだ。

こんなに心配してくれている

いつまでたっても母は母なのだ。

ここまでくるのに身体も相当疲れるはずだ。

発車してから母が見えなくなってから
高子は涙がでて止まらなかった。

乗客は怪訝な顔をしていたが
それでも涙があふれて来た。

『母は来ました  今日も来た
この岸壁に  今日も来た
とどかぬ願いと 知りながら
もしやもしやに もしやもしやに
ひかされて

呼んで下さい 拝みます
ああおっ母さん よく来たと
海山千里というけれど
なんで遠かろ なんで遠かろ
母と子に』

菊池章子/二葉百合子   岸壁の母


チャッピー物語   コーヒブレイク(6)

高子の母の澄江がでているが、子供のころ私の母は

いつも短編とか和歌などを書いていた。

母は小さいころから、手紙を書いては

人から褒められていたそうである。

簡潔にして要領よく、人をほろっと

させるような文を書きたいといつも言っていた。

母の川柳で思い出させるのは、

”苦しき事のみ多くして、花の命もなかりけり”

これは、林芙美子の”放浪記”の

”花の命は短くて、苦しき事のみ多かりき”

をもじったものである。

私が60歳にもなって突然こんなに書き出したのも

母の遺伝であろうか。個人的な話ですが。


チャッピー物語(182)  ”男と女” 節子 
       
節子の話に戻る。

あれから何回も求職活動をしたが

どの会社からも、履歴書のみで

不採用の返事がくるだけであった。

節子なりにがっくりしたが、何故だめなのか

いまだ判然としないところがあった。

勿論自分の力量が無い事は分っていたが

それでもあきらめてしまう事には今まだ

全力を尽くした思いがなかった。

『でんでん虫むし かたつむり
お前の頭はどこにある
角出せ槍だせ 頭だせ』
童謡  かたつむり


チャッピー物語(183)  ”男と女” 節子        

節子なりに考えて、どうも相手側の都合

が分らずにこちらの希望のみの

一方通行のような気がした。

つまり相手の会社がどういう人を

望んでいるのかを考えるべきだと感じた。

今までは自分都合ばかりであったので

それではいけないと思った。

『やっとこやっとこ くりだした
おもちゃのマーチが らったった
人形の兵隊せいぞろい お馬もわんわも らったった』
  童謡  おもちゃのマーチ


チャッピー物語(184)  ”男と女” 節子        

節子はさらに就職セミナーに通った。

講師は熱弁を振るった。

『中国の春秋時代の孫子のいう

敵を知り己を知れば百戦危うべからず

こちらの条件、内容だけは分っていても

肝心かなめの

求人している会社がどのような人を

求めているかを知るべきです。』

『ちいちいぱっぱ ちいぱっぱ
すずめの学校の先生はむちを
ふりふり ちいぱっぱ』

雀の学校


チャッピー物語(185)  ”男と女” 節子        

『そのためにはどうすればよいか

ここで勉強していきたい。

ハローワークのパソコンから

選んでプリントした求人用紙の

中に多くのヒントが隠されています。

その会社がまず何を目指しているのかを

会社概要で書かれています。

そこを大枠つかむのです。

ちょっとした会社ならホームページを

開設しています。

そこからもつかむのです。』

『大きな栗の木の下で あなたとわたし
楽しく遊びましょう 大きな栗の木の下で』
 童謡  大きな栗の木の下で


チャッピー物語(186)  ”男と女” 節子        

『またどういう仕事で採用したいかが

書かれています。ここが一番大切です。

履歴書も之にあわせて書き直すべきです。

相手の要請の琴線に触れないで

自分の都合だけで、空振りしてみても仕方ありません。

自分の実績、可能性を試されていると思い

書き直してください』

『花屋の店先に並んだ
いろんな花を見ていた
ひとそれぞれ好みはあるけど
どれもみんなきれいだね
この中で誰が一番だなんて
争うこともしないで
バケツの中誇らしげに
しゃんと胸を張っている

それなのに僕ら人間は
どうしてこうも比べたがる?
一人一人違うのにその中で
一番になりたがる?

そうさ 僕らは
世界に一つだけの花
一人一人違う種を持つ
その花を咲かせることだけに
一生懸命になればいい』

SMAP 世界にひとつだけの花


チャッピー物語(187)  ”男と女” 節子
        
講師は続けた。

『もしその会社で採用されたらその仕事が

をしなければならないのです。

その前に自分がどう向き合うかが

大切です。

まったく興味とか関心とか持てず

対応出来る事がが無いのならば、その会社自身を

受けるのを止めるべきです。

そのほうがお互いのためです。』

講師は厳しくも力強く真剣だった。

節子は今まで履歴書などは

一度うまく書けば書き直しなどはしたことが

無かった。

『歌を忘れたカナリヤは後ろの山に
捨てましょか いえいえそれはなりません
歌を忘れたカナリヤは背戸の子藪に
埋けましょか いえいえそれはなりません』
  童謡  カナリヤ


チャッピー物語(188)  ”男と女” 節子        

講師は続けた

『また求めている対象も知るべきです

最近は法律の関係により

求める年齢とか、男女とか

を明らかにしない事が多いです。

また勤務先までの距離、時間なども

考慮すべきです。 会社としては通勤費用も

抑えたいのを、直接的に書かないで

分りにくくなっています』

『海は荒海 向こうは佐渡よ
雀なけなけ もう日は暮れた
みんな呼べ呼べ お星さまでたぞ
暮れりゃ砂山 汐鳴りばかり
雀ちりじり また風あれる
みんなちりじり もう誰もみえぬ』

  童謡  砂山


チャッピー物語(189)  ”男と女” 節子        

『しかし読みきれます。どこかに書いております。

当社は若い女性が活躍していますーー20台くらいの女性

就業時間は相談に応じますーー主婦、年配でも結構

経験者を求むーー即戦力

資格がいるーー管理指導的な立場

補佐的な仕事をして欲しいーー人手不足
未経験でも結構ーー教えてくれる。簡単な仕事

通勤費用限定ーー近くの人を望む

夜間に掛かっているものーー夜も可能な時間的に余裕ある人』

とか読めるわけです。

『砂山に さわぐ潮風
かつお舟 はいる浜辺の
夕焼けが 海をいろどる
きみの知らない ぼくのふるさと
ふるさとの はなしをしよう』

北原謙二  故郷の はなしをしよう


チャッピー物語(190)  ”男と女” 節子    

講師は続けた。

『また自分を知るべきです。一般的に

就職する条件は@お金、待遇A生きがい

B自分の特技を生かしたいC社会貢献

D友人を作りたいE時間、距離を有効に

など色々ありますが、全てを求めるのは

虫が良すぎます。

そんな会社は皆殺到し激戦ですし、まずありません。

これだけは譲れないものを決めて、

それを絞って、後は我慢をするのが必要です。』

節子は今まで漠然としていたが、

2つに絞って挑戦する事にした。

生きがいと時間である。

高子並とは言わないが、何かを求めたいし、

子供と主人の送り迎えの時間は確保したい

からだ。節子は以前よりすっきりしてきた。


チャッピー物語(191) ”男と女” 節子        

節子は講師の言う点をメモにして

次回からの応募に生かしていき、

そして履歴書を書き直していった。

会社の求める意図を組み込みながら

単に給与、処遇とかで選んでいたのを

反省して

また自分がそこにふさわしいかどうかを

考えながら応募していった。

それでも不採用の通知が来た。


『線路は続くよどこまでも
野を超え山超え谷こえて
はるかな町までぼくたちの
楽しい旅の夢つないでる』

アメリカ民謡 線路は続くよどこまでも


チャッピー物語(192)  ”男と女” 節子        

節子は夫の守に相談した。

守ーー『そうか 自分を知り、相手の状況を読むべきか。 
でも隣の奥さんが節子に感心していたよ』

節子ーー『なんて』
守ーー『いつもいいにおいをして、とても
カレーが好きなんですね ほほほ!と』

子供達も寄ってきた。

子供ーー『隣のミヨちゃんも、うらやましがっていたよ』

節子ーー『なんて』

子供ーー『いつものにおいがして母さんは

カレーが上手なんだねと。

でも僕たちハンバーグも食べたいな』


『仲良し小道ははどこの道
いつも学校へみよちゃんと
ランドセル背負って元気よく
お歌を歌って通う道』

童謡  仲良し小道


チャッピー物語(193)  ”男と女” 節子        

節子ーー『カレーばかりでどうも

すみませんね

でもみんなの好みをどう組み込むかを

勉強しているので、これからは

ハンバーグやお好みのものも

バラエテーよくだせるようになるわよ ふふふ』

(冷蔵庫の余りものの都合もあるのよ!

守も、わざわざ隣の奥さんを

引き合いにして言う事を聞かせようとして!

子供達も守に似てきて スカンやつ! もう)

『春よこい 早く来い
歩き始めたみいちゃんが
赤い鼻緒のじょじょはいて
おんもへ出たいと待っている』
童謡  春よ来い


チャッピー物語(194)  ”男と女” 早紀     

早紀の話に戻る。

順三の紹介で都会の旅館へ

女将を養成するという修行のため

新たな決意で就職してきた。

一応オーナーは順三の知り合いではあるが

旅館に入れば一従業員であった。

今までのように、お嬢さんとして通るはずも無かった。


『そよ風みたいにしのぶ あの人はもう
  私の事などみんな 忘れたかしら

  のばらをいつも 両手に抱いて
  朝の窓辺に 届けてくれた
  なぜだか逢えなくなって 恋しい人なの』

小川とも子   初恋の人


チャッピー物語(195) ”男と女” 早紀
     
まず部屋に通された。

仲居部屋といっても旅館だから

布団をおいているだけの2畳一間

であり、薄暗い電灯ひとつであった。

それは布団部屋の空いた所であった。

そこに荷物をおいて翌朝早朝から働くことになる。

各部屋の掃除、跡かたづけ庭の掃除、水うちなど

新米でも出来ることは何でも命じられた。

そしてぼろぼろに、しかられまくった。

『いのち短し 恋せよ少女
  朱き唇 褪せぬ間に
  熱き血潮の 冷えぬ間に
  明日の月日は ないものを』

ゴンドラの唄  松井須磨子


チャッピー物語(196)  ”男と女” 早紀     

早紀は女将の修行とか聞いていて

それでも張り切ったところもあった。

”ここの女将に各種女将の修行を

かんで含めるように教えてくれるのでは”

と思っていたが、これでは

体のいい働き奴である。

今ではお嬢さんとして認めてくれたり、

文句も聞いてくれる人はいない。

『さよならと さよならと
  街の灯りが 一つずつ
  消えてゆく 消えてゆく 消えてゆく
  その手を早く 離しておくれ
  涙を早く 拭いとくれ
  あしたの晩も 会えるじゃないか』

マヒナスターズ   泣かないで


チャッピー物語(197)  ”男と女” 早紀     

女将の見習いとして、やってきたのは

早紀一人ではなかった。

数人の人が黙々と仕事をこなしていた。

故郷に帰りたいとは幾夜思ったか。

やっと仕事から解放されて

布団のなかで泣いて過ごした。

『あかく咲く花 青い花
  この世に咲く花 数々あれど
  涙にぬれて つぼみのままに
  咲くは乙女の 初恋の花

想う人には 嫁がれず
  想わぬ人の 言うまま気まま
  悲しさこらえ 笑顔を見せて
  散るもいじらし 初恋の花』

  島倉千代子  この世の花


チャッピー物語(198)  ”男と女” 早紀     

早紀は良雄に振られてあれほど

辛い思いはこれから無いだろうと

思っていたが、それ以上の過酷さ

を思い知らされた。

都会の真ん中に放り出された

気持ちで早紀は日々こぎ使われていた。

『泣くな妹よ 妹よ泣くな
  泣けば幼い 二人して
  故郷を捨てた 甲斐がない

遠い淋しい 日暮れの路で
  泣いて叱った 兄さんの
  涙の声を 忘れたか』

人生の並木路   デイック・ミネ


チャッピー物語(199)  ”男と女” 帰れない     

段々馴れてくると今度は

宴会のお客に、ご飯とか酒とか

運ぶ役目もやらされた。

酔った客に言いたい放題いわれ、

じっと我慢の日々だった。

それでも今更帰るとなると

ここでもだめだったのか

人にもいわれ、自分にも

余計みじめになるだろうと

故郷に帰ることだけは

やっと思いとどまった。

『祭りも近いと 汽笛は呼ぶが
  洗いざらしの Gパンひとつ
  白い花咲く 故郷が
  日暮れりゃ恋しく なるばかり

 小川のせせらぎ 帰りの道で
  妹ととりあった 赤い野苺
  緑の谷間 なだらかに
  仔馬は集い 鳥はなく

  ああ 誰にも 故郷がある

  故郷がある』

五木ひろし   ふるさと


チャッピー物語(200) ”男と女” 思い出     

数ヶ月すぎて見習いのなかでも

止めていく人も多かった。

しかし早紀は踏みこたえた。

その時に故郷で時枝と共に

痛めつけた仲居の女を思い出した。

あの人もなんのバックアップもなく

私に苛められて生活を

していたのではと思い起こした。

『雪は降る あなたは来ない
雪は降る 重い心に
むなしい夢 白い涙
鳥はあそぶ 夜は更ける
あなたは来ない いくら呼んでも
白い雪が ただ降るばかり
ララララ ラララ
ララララ ラララ』

アダモ   雪は降る


チャッピー物語(番外)    作者より(8)     

皆さんの応援を得て連載も200回を

迎えました。ご愛読有難うございます。

世界の王のホームラン記録868回を目指せとか

まったく気の遠くなることですが、

はるかな灯台と思っていきたいですが。

(話はどうでもいいから?)

歌だけ続けて欲しい、家族での楽しみに

なっているとか。

と言われ、それが励みとか、目標になってきました。


チャッピー物語(番外)    作者より(9)     

今まで難しい点を言えば、女性心理であり、

どう表現しても”これは違うのでは”と思いながら、

書かざるを得ません。男性心理なら、違って

いても自分がそうだと居直れますが。

女性の場合はそうもいかず。

女性はどう思うのかということの
(勿論ひとりひとり異なるとは思いますが)
アドバイスなり評価を頂ければと

思います。(作者)からみた女性心理という

ことだとして下さい。

そしてこれからは主人公のカメラマンの男を”徹夫”

主人公の女(現在仲居)を”綾子”とさしてください。

これまでは、一般的に男とか女としてイメージを

膨らまそうと考えてきたのですが、登場人物も

増えてきましたので、表現の区別する為にご了解下さい。


チャッピー物語(番外)   作者より(10)     

人形浄瑠璃で有名な近松門左衛門は著書

”虚実皮膜論”の中で芸とは嘘と実の間に

あるものだといった。つまり虚構であるけども

虚構ではない。真実であるけれども真実でない

物の間に芸の真髄があると言っている。

これからも本当らしく、それだけではつまらないし、
虚構らしく、しかも現実にありそうな

ワールドを展開していきたいと 思ってます。

多少の難解さとか、バカバカしさは
辛抱下さい。そのうちにしびれてくると
思いますが。はたしてどうでしょうか

阪神下柳投手   ”勝てたらいいな”
作者  ”書けたらいいな”


チャッピー物語(201)    ”男と女”     

ここで再度、登場人物と内容の整理してみよう

女(綾子)ー男と離婚  主人公 現在 温泉旅館の仲居

良雄ーー旅館の若主人
園子ーー良雄の母 旅館の女将

順三ーー良雄の父 旅館の主人
早紀ーー近所の旅館の娘
時枝ーー旅館の新番頭代理
千佳子ーー旅館の仲居

男(徹夫)ーカメラマン 綾子と離婚  主人公

高子ーー雑誌社の編集長  澄江ー高子の母
竜崎ーー雑誌社の重役兼販売部長

節子ーー高子の友人 守ーー節子の夫

綾子は離婚の傷心の旅の途中、職を得た旅館で
女将園子、主人順三および千佳子に見守られながら、
息子の良雄に求婚されている。

時枝は番頭代理に抜擢されたが、苦悩する。
早紀は失恋の末、女将修行に出かける。

徹夫は雑誌社の編集長の高子に会い、葛藤をへながら
カメラの仕事に取り組む。

高子には元恋人の竜崎と
母の澄江がいる。節子は夫の守と子供に支えられ
就職活動に励むがうまくいかない。


チャッピー物語(202)   ”男と女” 見方     

早紀は良雄の事も思い起こした。

良雄とてやはり苦労はしているだろうが

なんといっても由緒ある温泉旅館の

若主人である。あの人だけが素晴らしいのか

と段々客観的にみれるようには

なってきた。

早紀としてはまったく異なった

世界からいろんな見方が

出来るようになってきた。

『恋人に振られたの よくある話じゃないか
世の中変って いるんだよ 人の心も変るのさ』
日吉ミミ  男と女のお話


チャッピー物語(203)   ”男と女” 早紀     


あの女(綾子)の事も再度見直した。

自分は良雄を取られたせいで

悪人と思っていたが、そればかりだろうか

時枝とかに苛められながら

女将、主人の信頼を

そして良雄の愛を勝ち得ていくとは。

負けず嫌い早紀にとっても

認めざるをえなっかた

自分だったらどうだろうと

つくづく振り返った

『匂い優しい 白百合の
  濡れているよな あの瞳
  想い出すのは 想い出すのは
  北上河原の 月の夜』

ダークダックス  北上夜曲


チャッピー物語(204)  ”男と女” フロント     

そのうちに早紀はここの女将から

フロントにでてみないかと

声をかけられた。

いままでのフロント係が辞める事になったので

臨時ではあるが。

フロントは旅館の最前線である。

先輩に怒られながら勤めを

果たしていった。

それがまた早紀の転機になるのである。

『美わしき さくら貝ひとつ
  去りゆける きみに捧げん
  この貝は 去年の浜辺に
  われひとり ひろいし貝よ』

桜貝の歌


チャッピー物語(205)  ”男と女” 徹夫     

カメラマンの男(徹夫)の話に戻る

徹夫はいろんな地方に行って、

シャッターを押して回った。

しかしどうももうひとつ旨く

いかないことを感じていた。

徹夫は今まで写真屋で修行を

積み実地の経験は充分踏んでいた。

しかも女(綾子)と別れるという風な

修羅場も踏み いわば

心の鍛錬というべきものも

経験し立ち直ってきた。

そして編集長の高子の

指摘を受けてより理論面と、

最新の技術の導入も計ってきた。

『勝つと思うな思えば負けよ
負けてもともとこの胸の
奥に生きてる柔らの夢が
一生一度の
一生一度を待っている』

  美空ひばり   柔


チャッピー物語(206)  ”男と女” 徹夫     

高子の雑誌社でプロジェクトも経験し、

読者の観点からの見方も考える

事もできるようになってきた。

雑誌社の売行きも順調になり

フアンというべきものも多くなった。

しかし徹夫は考えた。

これくらいの事はだれでもやってきている

のではないか。

『君の行く道は果てしなく遠い
だのに何故 歯をくいしばり
君は行くのか そんなにしてまで』

   黒沢久雄(ブロードサイドフォー)   若者たち


チャッピー物語(207)  ”男と女” 徹夫     

だから惰性の作品しかできない

徹夫は苦悩した。このままではいけない、

しかも雑誌社の強力なバックアップもある。

編集長高子の苦しい立場も充分分ってきた。

それに個人的に感情も交じっていた。

高子を何とか助けたいとか。

一方分かれた綾子の行方も捜し

もう一度会ってみたいという心の

矛盾も気が付いていた。


『七色の虹が 消えてしまったの
シャボン玉のような あたしの涙
貴女だけが生きがいなの 忘れられない
ラブユー ラブユー 涙の東京』

   ラブユー 東京  黒沢明とロスプリモス


チャッピー物語(208)  ”男と女” 徹夫     

そして悶々と、どう製作すべきかを探していた。

その時、徹夫は高子に送られた時の

喫茶店での出来事を思い起こしていた。

それは

@別れた綾子との喫茶店のシーン
A別れた綾子との思い出
B高子との思い出

あの時 3つの映像が順繰りに

出現し、万華鏡のようにランダムに繰り返した。
あれは夢か幻か、何かヒントになりそうで

それは何かと自問していた。

『北国の 旅の空
流れる雲 はるか
時に 人恋しく
くちびるに ふれもせず
別れた女 いずこ
胸は 焦がれるまま

熱き心に 時よもどれ
懐かしい想い つれてもどれよ
ああ 春には 花咲く日が
ああ 夏には 星降る日が
夢を誘う 
愛を語る』
 小林旭   熱き心に


チャッピー物語(209)  ”男と女”  喝采 

仕事の終わった後、温泉で休息をとって一息
していた時、聞き覚えの歌謡曲が
有線で流れてきた。

『いつものように幕が開き  恋の歌うたう私に
届いた報せは  黒いふちどりがありました
あれは3年前  止めるあなた駅に残し
動き始めた汽車に  ひとり飛び乗った
ひなびた町の昼下がり  教会の前にたたずみ
喪服の私は  祈る言葉さえ  失くしてた

つたが からまる白い壁  細い影長く落として
ひとりの私は  こぼす涙さえ忘れていた
暗い待合室   話す人も無い私の
耳に私の歌が   通り過ぎていく
いつものように幕が開き  降りそそぐライトのその中
それでも私は 今日も恋の歌  うたっている』

いわずとしれた ちあきなおみの ”喝采”である。


チャッピー物語(210)  ”男と女” 喝采     

詩情あふれるこの歌をきいていた徹夫は

ただ歌に酔っていたが、何かを感じた。

”まてよこの歌は何かがある、何かが違う”

と思った。勿論 ちあきなおみの歌のうまさ

もあり、ちあきワールドというべき世界にも

ひかれていた。そして、ちあきなおみ自身も

夫の死の直後 テレビ、マスコミから消えた

というミステリアスな事も聞いていた。

その事が、この歌のフアンにもたまらなく

させるのであろう。 でもそれだけか


チャッピー物語(211)  ”男と女” 喝采     

徹夫は”喝采”を歌うだけでなく、歌詞を

写して調べてみた。

すると時系列的に歌詞が追える。

@『いつものように幕が開き  恋の歌うたう私に
届いた報せは  黒いふちどりがありました』ーー現在

A『あれは3年前  止めるあなた駅に残し
動き始めた汽車に  ひとり飛び乗った』−−過去(3年前)


B『ひなびた町の昼下がり  教会の前にたたずみ
喪服の私は  祈る言葉さえ  失くしてた』  @の続き
現在進行形

C『つたが からまる白い壁  細い影長く落として
ひとりの私は  こぼす涙さえ忘れていた』−−Bの続き
現在進行形

D『暗い待合室   話す人も無い私の
耳に私の歌が   通り過ぎていく』ーーCの続き
現在進行形

E『いつものように幕が開き  降りそそぐライトのその中
それでも私は 今日も恋の歌  うたっている』ーーDの続き
同時進行形

男は思った。 ”まてよEは問題だな”


チャッピー物語(212)  ”男と女” 喝采     

一般的に時間というものは

過去ーー>現在ーー>未来

へと流れる。我々の意識としては

今という現在がゆるやかに進行していく

そして未来も時期が来れば現在に

なり、現在は過去になり、過去はその過去

(大過去)へと移っていくのである。

そして移りすぎた時は過去の思い出

となってくる。逆にいえば現在から未来を

予想なり予感なりするのである。


チャッピー物語(213)  ”男と女” 喝采
    
ここで繰り返すと

D『暗い待合室   話す人も無い私の

耳に私の歌が   通り過ぎていく』ーーCの続き

E『いつものように幕が開き  降りそそぐライトのその中
それでも私は 今日も恋の歌  うたっている』

これは主人公(ちあき)が、何処でテレビを聞いているのか。

すなわち待合室のテレビを見たのならば、

EはDの同時進行形のはずだ(すなわち過去に録画し

たものを見ている)。

しかしそれだけでは腑に落ちない。中に”それでも”

と今回の失恋の内容が入ってるではないか。


チャッピー物語(214) ”男と女” 喝采     

Eでは『それでも私は 今日も恋の歌ーー』とある

(それでも)とあるように恋人を失ったことの

痛手に耐えて恋の歌を歌って

いるのならばEは現在より後(未来)ではないか。

もしEが未来のことならばそれは時間の経過より現在になる。

すなわち(痛手に耐えて歌っているのならば)

歌っている事全体が現在(E)になる。

そして@からD自体が過去になる。すなわちEからみて、

@-Dの過去をフラッシュバックしているのではないか。

そして、これらはEは進行形 or 未来の2重写しを、

たくみに表現しているのではないだろうか。


チャッピー物語(215)  ”男と女” 喝采
     
そしてまた@−Eまで繰り返され、知らぬ間に

時間空間を回転する。

@『いつものように幕が開き  恋の歌うたう私にーー』

すなわちこの歌自身が時の流れを4次元的に

いったりきたりの繰り返しを表現しているのだ。

しかもひそかに秘めているのが、この曲の魅力でもあろう。

もし作者が意識してこの4次元(点線、平面、立体、時間)

(作詞:吉田旺  作曲:中村泰士)

空間を作ったいるとしたらそれこそ”喝采”ものだ。


チャッピー物語(216)  ”男と女” 喝采     

徹夫はもう一度”喝采”を歌ってみた。

『いつものように幕が開き  恋の歌うたう私に
届いた報せは  黒いふちどりがありました
あれは3年前  止めるあなた駅に残し
動き始めた汽車に  ひとり飛び乗った
ひなびた町の昼下がり  教会の前にたたずみ
喪服の私は  祈る言葉さえ  失くしてた

つたが からまる白い壁  細い影長く落として
ひとりの私は  こぼす涙さえ忘れていた
暗い待合室   話す人も無い私の
耳に私の歌が   通り過ぎていく
いつものように幕が開き  降りそそぐライトのその中
それでも私は 今日も恋の歌  うたっている』

4次元空間をわずか5分の歌の中に

こめられるとはこれが写真に応用できないか

徹夫はさらに苦悩していった。生みの苦しみと

いうべきものか


チャッピー物語(217) ”男と女”  浦島太郎    

徹夫はふと、子供の時の童話を

思い出した。 浦島太郎の話である。

浦島太郎が子供に苛められいた

亀に連れられて竜宮城へ

連れられて乙姫様に歓待を受けて

帰る時に玉手箱を貰った。

故郷に帰ると皆知らない人ばかり

玉手箱を開けるとたちまちお爺さんに

なった話は皆知っているところである。

『むかしむかし 浦島は  助けた亀に連れられて
竜宮城へ来てみれば 絵にも画けない美しさ

乙姫様のご馳走に 鯛やひらめの舞踊り
ただ珍しくおもしろく 月日のたつのも夢のうち』

童謡 浦島太郎(1−2)


チャッピー物語(218)  ”男と女” 解釈     

浦島伝説を現代の目(大人の目)で

解釈すると 人生の日々は

(特に快楽のおぼれたような日々は)

歳月を忘れ、知らない内に老いてしまうと

解釈が一般的であろう。

教訓めいた内容でもある。

ところがSFでは、

浦島太郎は竜宮城という異次元空間

に迷いこみ そこでは時間が例えば10倍も

速く進むとすれば、 通常の1年が10年も

経っており、浦島太郎も竜宮城で

数十年を経過したのでお爺さんに

なってしまったという解釈もできる。

『遊びにあきて気が付いて お暇乞いもそこそこに
帰る途中の楽しみは 土産に貰った玉手箱』
童謡 浦島太郎(3)


チャッピー物語(219)  ”男と女” 解釈     

あるいは浦島太郎が亀にのったというのは、

夢を見せられていて、実際はロケットに

乗って、ある宇宙の星につれられた。

亀で海の中なら浦島は息が出来ないので

溺れてしまう。ロケットは光速度に近い

もので、時間の進み方が遅いため、若いままでいて

地上ではそのまま時間が進み、

浦島太郎が返って来たとき、周りは

すっかり変ってしまった(ウラシマ効果)
という説もある。

『帰ってみればこはいかに もといた家も村もなく
道にいきあう人々は 顔も知らない人ばかり』

童謡 浦島太郎(4)


チャッピー物語(220) ”男と女” 浦島太郎     

徹夫は浦島太郎の寓話の中にも

なにか感じるところはあった。

それは何だろう

やはり一挙に”お爺さんになる”ことだろう。

このような簡単な寓話のなかにも

時間空間の飛び越えを、表現しているのだ。

しかし理屈は分っても、徹夫の求めるものには

届きそうで、いまだ届かなかった。

『心細にふたとれば あけてくやしき玉手箱
中からぱっと白煙 たちまち太郎はお爺さん』

童謡 浦島太郎(5)


チャッピー物語  コーヒーブレイク(7)

歌がストーリーに関わってくると
以前に述べましたが、ここで繰り返すと

”忘れな草をあなたに”が徹夫と綾子が
別れる時に(NO44)とそして徹夫が

高子におくられるシーン(NO135)である。
それは徹夫が3重写しを夢見る機縁となる。

”別れても別れても心の奥に”も気になるところである。

そしてちあきなおみの”喝采”の歌を聞いて
そのすごさを発見するのである。(NO209)

”喝采”の徹夫の発見はどういうことか
くりかえし、読んで下さればありがたいな、と思うのですが。

”降りそそぐライトのその中”、”細い影長く落として”の明と暗
”動き始める汽車に飛び乗った”の動、
”こぼす涙さえ忘れていた”の静

そして主人公の心にも影を落として?

そしてきっとあなたにも
なにかの発見があると思いますが


チャッピー物語  コーヒーブレイク(8)

作者がこんなに歌にこだわるのは多分
小さい時に、近所にミリオン座という映画館があり

そこは日活専門で、全盛期の石原裕次郎、小林旭、
吉永小百合、高橋英樹
渡哲也、赤木圭一郎などが大人気であった。

その映画館からは、スターの歌だけでなく
いろんな歌謡曲が拡声器で大きく流れてきており、

知らぬ間に耳にしていたと思われる。”この物語”の下段に

作者の少年時代に聞いた歌も多く乗っているのも
その理由であろう。古い歌が多いのである。

『いまでは指輪も まわるほど
やせてやつれた おまえのうわさ
くちなしの花の 花のかおりが
旅路のはてまで ついてくる
くちなしの白い花
おまえのような 花だった』

渡哲也  くちなしの花


チャッピー物語(221)    ”男と女” 綾子     

旅館の女(綾子)の話に戻る

あれから綾子は良雄にも

再度結婚をせまられていた。

『過去にこだわる事も
分るがそれより、未来を作ろうよ』

女将であり、母の園子にも『良雄の
望みをかなえてやって欲しいと、

そして温泉を2人で再興させて
欲しい』との依頼を受けていた。

ちあきなおみシリーズ

『からにしてって酒も肴も 今日でおしまい 店仕舞い
5年ありがとう 楽しかったわ 色々お世話になりました
しんみりしないでよーー ケンさん 新宿駅裏 紅とんぼ
思い出してねーー時々は』

紅とんぼ


チャッピー物語(222)  ”男と女” 綾子     

綾子が気にしていた早紀も

遠くへ女将修行に出かけたとの話を

聞き、気にすることが無くなった。

新番頭代理になった時枝も、

何か遠慮がちになってきた。

主人の順三も優しかった。

でも結婚ともなると、以前のことが

あり踏ん切りがつかなかった。

『雨の降る夜は なぜか会いたくて
濡れた舗道をひとり あても無く歩く
好きで別れたあの人の 胸でもう一度
甘えてみたい 行き過ぎる傘に あの人の影を
知らず知らずに探す 雨の街角』

 雨に濡れた慕情  ちあきなおみ


チャッピー物語(223) ”男と女” 綾子     

綾子は別れたときの
徹夫の言葉を思い出していた。

”何でも言える人に会えるかな”
綾子には、まだ良雄に遠慮があった。

何といっても由緒ある旅館の後取りで
あり、自分は、従業員の一人であり
しかも過去ある身である。

どうみても不釣合いではないか。
綾子も古いタイプの人間であった。

『連れて逃げてよ 付いておいでよ
夕暮れの雨が降る 矢切の渡し
親の心に そむいてまでも
恋にいきたい 2人です』

  矢切の渡し  ちあきなおみ


チャッピー物語(224)  ”男と女” 綾子     

でも良雄は退かなかった。

まわりの環境も日々そういう
ムードになりつつある。

綾子は困って、良雄に無理難題を
持ちかけて、これなら良雄も
あきらめるだろうと思った。

しかもそれは、”私のためなら聞いてくれるかな”
というかすかな期待もあった。

『良雄さんそれほどいうなら
私の望みを適えてくれる?』

『君のためならなんでもするよ』
『本当に?』
『本当に』

『例えば私が恋を恋をするなら 
4つのお願い 聞いて聞いて欲しいの
1つ やさしく愛して 2つ わがまま言わせて
3つ さみしくさせないで 4つ誰にも秘密にしてね
4つのお願い 聞いて聞いてくれたら
あなたに私は 夢中 恋をしちゃうわ』

  4つのお願い  ちあきなおみ


チャッピー物語(225)  ”男と女” 綾子 
  
綾子は良雄に切り出した。

”高峠の黒百合の花を
取ってきてくれない!”

”でもあれは伝説だよ”
”どうしても一度見てみたいのよ、

いやなら、無理にとはいわないわ!”
どこか綾子の賭ける思いを感じた。

”君がそれほど、いうなら取ってくるよ”
綾子にとっては最後の抵抗だった。

そしてこのような無理でも
聞いてくれるなら、良雄との垣根も
取れるような気がしていた。

それは甘えでもあった。
そして賭けでもあった。

『見捨てないでね 捨てはしないよ
北風が泣いて吹く 矢切の渡し
噂悲しい 柴又捨てて
舟にまかせる さだめです』

 矢切の渡し(2) ちあきなおみ


チャッピー物語(226)    ”男と女” 高峠伝説     

高峠の伝説というのはこうである。

この北国に伝えられたものである。

戦国時代 当時城主として治めていた、

備中の守(びっちゅうのかみ)という大名がいた。

そして高峠という峠に城を構えていた。

時の覇者豊臣秀吉の侵略に抵抗したが

勝てる筈もなく、落城の憂き目にあうのである。

『崩れしままの 石垣に
  哀れをさそう 病葉や
  矢弾のあとの ここかしこ
  ああ 往古を語る 大手門』

  三橋美智也  古城(2)


チャッピー物語(227)  ”男と女” 高峠伝説     

落城に際し、備中の守は子孫のため

財宝を高峠のどこかに隠したのである。

そして戦いはやぶれ、子孫は百姓に

身分を変え再興を期した。

言い伝えによると、備中の守は

財宝のありかを、ある呪文として残した。

”朝日さす、夕日さす、黒百合の花の下”

という呪文である。

『甍は青く 苔むして
  古城よ独り 何偲ぶ
  たたずみおれば 身にしみて
  ああ 空行く雁の 声悲し』

  三橋美智也  古城(3)


チャッピー物語(228)  ”男と女” 高峠伝説     

この呪文は特定の子孫しか教えらて

無かったが、いつのまにこの地方の

多くの知るところになった。

”朝日さす、夕日さす、黒百合の花の下”

この意味は渓谷深く、昼なお暗い高峠の山々で
黒百合が咲いているが、それも朝には朝日

にもあたり、しかも夕方にも夕日もさすような
場所に財宝を隠したという意味であった。

『春高楼の花の宴    
巡る盃かげさして    
千代の松が枝わけ出でし     
昔の光いまいずこ』 
 
  荒城の月(1)  滝廉太郎


チャッピー物語(229) ”男と女” 高峠伝説     

豊臣没落後の備中の守の子孫たちも

晴れて高峠の各所を探したが、

朝日差す、夕日さす場所のような

場所を発見する事も出来なく

まして黒百合の花さえも、どこにも見つからなかった。

しかし財宝探しのロマンというか、

伝説は途絶えることなく、伝えられていた。

『秋陣営の霜の色    
鳴きゆく雁の数見せて
植うる剣に照りそいし    
昔の光いまいずこ』
    
  荒城の月(2)  滝廉太郎


チャッピー物語(230) ”男と女” 高峠伝説     

時に一攫千金を夢見る者どもは、
高峠に乗り込み、巨額の資金を投入し、
掘り起こしたりした。

しかし、いずれも見つからず失意のうちに
引き下がざるを得なかった。

それどころか、備中の守の子孫以外の
者が高峠に野望を持って乗り込むと
いずれも非業の死を遂げていた。

この地方の人は何時とはなく、
”子孫でもないものが、財宝に手を
付けようとする”なんて、備中の守の

たたりに違いないと噂をした。
それもいつのまにか、伝説になっていた。

『いま荒城の夜半の月    
替らぬ光誰がためぞ    
垣に残るはただ葛    
松に歌うはただ嵐』

  荒城の月(3)  滝廉太郎


チャッピー物語(231)   ”男と女” 高峠伝説     

綾子はこの旅館に来てから
この伝説を聞かされていた。

当時は面白い昔話と思っていたが
この地方の人にとっては
強く信じられている話だと感じていた。

綾子はこの話を思い出し、最後の
切り札として良雄に持ち出したのである。

この事が思いがけない事件になるとは、
この時だれも想像しなかった。


『天上影は替らねど    
栄枯は移る世の姿     
写さんとてか今もなお      
鳴呼荒城の夜半の月』 

  荒城の月(4)  滝廉太郎


チャッピー物語(232)  ”男と女” 高峠伝説     

田舎にある伝説というのは、都会では
考えられないくらい、しっかりと根をはり、
それは代々語り伝えられ、単なる

ロマンだけではなく、そこに住む人たちの
規範とも生き方ともなっている事が多い。

良雄も小さい時から、高峠の
財宝伝説を叩き込まれ 興味を示しつつ、
一方そのタタリ伝説の恐怖も聞いていた。

しかも近年になっても高峠に立ち入る
近所の野心家達の非業な死に方も
その姿を多く目にしていた。

『夢まぼろしの 人の世は
流れる雲か 城の跡
苔むすままの 石垣に
栄華の昔 偲べども
風蕭条と 哭くばかり』

  氷川きよし  白雲の城(1)


チャッピー物語(233)   ”男と女” 高峠伝説     


良雄とて、備中の守の子孫ではない。
綾子がこんな事をもちだすなんて、

恐れと共に、ここでこの人の
いうことを引き受けなければ、
綾子は自分を見限るのでは。

それが男として、後には引けない
という思いもあった。

竹取物語のかぐや姫が求婚者たちに
無理をいって断ったように。

『月影浮かべ 満々と
湛えし堀も 水涸れて
名もなき花に 宿る露
幾星霜の 病葉が
積もりて朽ちし 大手門』

  氷川きよし  白雲の城(2)


チャッピー物語(234)   ”男と女” 竹取物語    

”竹取物語”によると竹から生まれたかぐや姫はお爺さんと
お婆さんに大切に育てられた。

大人になって非常に美しい娘になり

多くの人が結婚したいと求婚の申し入れ

に来たが、かぐや姫は一切聞き入れず

会うことも無く、受付なかった。

それでもどうしてもお嫁にしたいという

貴族が5人いた。その5人の人達が何度も

かぐや姫を訪れるので、かぐや姫は難題を
その人達に出した。

『熊祭(イヨマンテ) 燃えろよかがり火
ああ  満月よ 今宵 熊祭 踊ろう メノコよ
タムタム 太鼓が鳴る
熱きくちびる  われによせてよ
ああ  あああ ああああ ああああ  ああああ
あああ あああ イヨマンテ』

  イヨマンテの夜  伊藤久男


チャッピー物語(235)   ”男と女” 竹取物語 

かぐや姫は求婚者たちに
ある人には仏が作った石の鉢を、
ある人には海の中の蓬莱の玉枝を、
ある人には燕の子安貝を、

など無理難題をいい、かぐや姫に持って来た人には
お会いしてもいいと話をした。

5人は探しにでたが、悉く失敗して、
見つけることが出来なかった。

最終的には、帝が会いたいと言う事になったが、
かぐや姫は月へ帰ることになったのである。

皆知っている話である。綾子も良雄に対し、
黒百合の話を持ち出し、一面は困らせ拒否し、
一面はかすかな期待もあった。


黒百合は 恋の花 愛する人に捧げれば
2人はいつか 結びつく  ああーああー
この花 ニシパにあげようか 
あたしは ニシパが大好きさ』

黒百合の唄(1)  織井茂子


チャッピー物語(236)   ”男と女” 綾子      

一方良雄にとっても、ここが正念場に
なっていた。あれほど慕われた
早紀を袖にして、又母にも、父にも

報告し大賛成をしてくれたものの
肝心の綾子はどうだか、煮え切らない

態度を続けた。あれこれ説得したものの、
もうひとつ進展が見られなかった。

もともと温泉の若旦那であり、
おっとりとして、人生すべて旨く行くと

思っている所に、綾子からの黒百合の
頼みがあった。ここは一歩も引けないだろう。

良雄は真剣に取り組まざるを得なかった。

『黒百合は魔物だよ
花のかおりがしみついて
結んだ二人ははなれない
あああ……あああ……
あたしが死んだらニシパもね
あたしはニシパが大好きさ』

黒百合の唄(2)  織井茂子


チャッピー物語(237)    ”男と女” 伝説      

伝説というのは、今から見るとバカバカしく思えるかもしれないが
果たしてそれだけであろうか。 埋蔵金伝説というのも、

時の覇者に侵略され、追放,略奪、命を狙われるという最悪の

状況で財宝が将来の再興を願った子孫への最高の激励と
復活の一手ともとれるであろう。

 
失意の子孫も、それによって再起の希望を持ちつづけて、
勇気をふるいおこすのだ。また子孫以外のものが、財宝を

狙えば罰として、悲惨な運命をたどるというのも、他者の侵略を
これ以上許さず、警戒を厳重にしたい防衛案かもしれない。

テレビも新聞もインターネットも無い時代の先人の
思いやりと知恵を、見直してみるべきだろう。

そしてそれは子供にも解る話であり、しかも何十世代も続くとは、
逆に現代にそれだけの見識が果たしてあるだろうか。

『黒百合は 毒の花 
アイヌの神のタブーだよ
やがてはあたしも死ぬんだよ
ああああーーああああーー』

黒百合の唄(3)  織井茂子


チャッピー物語(コーヒーブレイク)(09) シリアの月

かぐや姫が月に帰る場面があるが、作者が以前に
アラビア半島のシリアに一家で観光旅行した時である。

ある民家に招待され多くのご馳走をされ、本当に
感激したものだった。食後に自家製の葡萄酒を
飲ませてもらいながら、テラスから見あげると、

大きな月が夜空に浮かんでいた。日本のお礼にと
その一家に日本の代表的おとぎ話、竹取物語の
かぐや姫の話をしてあげた。(もちろん通訳付きではあるが)。

通訳が席をはずしたときにその
家のおじいさんが一生懸命話かけてきた。
もちろん意味はわからなかったが、多分この家に
私たちが何度でも来て、自分の家のように
遊んでくれとベッドをたたきながら
身振り手振りでしめしてくれたようだった。

シリア人は人懐こく客を大歓待するとは、聞いていたが、
おじいさんも心からであった。
日本に帰って来てから、夜空に月が見えた時には
あのおじいさんはいかに暮らしているだろうと
思いだすのだが。元気でおわすやら。


チャッピー物語(238)  ”男と女” 徹夫      

徹夫の話に戻る。いろんな苦心とともに
シャッターチャンスの場所をさがしていたが、ある時
作品の一部をどこかへ、忘れたことに気が付いた。

完成品とそれ以外と2つに
分けて持ち運んでいたのだが、

すぐに納期が迫り、編集長の高子に郵送すべき

方を落としてしまった。 さあたいへんなことになった。

徹夫は青ざめ、色々当日足を運んだ
所に連絡を取った。しかし何処の
場所にも心当たりがないとの返事だった。

昼食を取った場所、途中立ち寄った所

景色を探したポイント

など各箇所にも再度行ってみたがどこにもなかった。


チャッピー物語(239)   ”男と女” 徹夫      

徹夫は今朝出た旅館に連絡を

取った。フロントにでた女性が

確かに預かっているとの返事を

くれた。フロントの女性は

井上と言っていた。

徹夫は大変助かった思いで

旅館に駆けつけ、その女性より

書類を受け取り、お礼をいった。

感じの良い応対であり、

それ以来、徹夫はその旅館を

利用する事が多くなり、その女性とも

打ち解けてきた。


チャッピー物語(240)   ”男と女” 徹夫      

徹夫は井上さんに

何かお礼をしたいと思った。

何がいいか考えてやはり

興味がもてるものと思い

話しかけてみた。女は映画が好きなようだが、

一人で都会に出て未だ、寂しくまごついて

いるようであるが、徹夫には何か

親近感を持っているようだった。


チャッピー物語(241)  ”男と女” 徹夫      

徹夫は思い切ってお礼にと

評判の映画と食事に誘ってみた。

井上さんは戸惑っていたが、

是非にと言う事で出かけることにした。

映画の前にニュースが放映されていた。

丁度1963年暗殺されたアメリカ大統領のJFケネデー

の記念式典の映像が

流れてきた。弟のロバートケネデーも暗殺され

そして子供も飛行機事故で亡くなると

いう悲劇の一家であった。

そして兄弟との関係が噂されていた

マリリンモンローもちょっとだけ写って

いたが、その時は気にしなくて

次の映画を待った。


チャッピー物語(242)   ”男と女” 徹夫      

映画の後食事に誘いそこでいろんな話がはずんだ。

井上さんの名前は早紀といい、

どうやら北国の旅館のお嬢さんで

女将の修行に来てるということだった。

あの早紀であった。徹夫も

気が許して、自分も雑誌社の要請で

カメラを持ち、各地を回っていることを話し出した。

当日は楽しく会話が進みより親密になっていった。

徹夫が早紀と思いがけない

つながりがあることがあることが

分るのはもっと先であった。


チャッピー物語 コーヒーブレイク(10) 映画

映画のシーンが今後も出てくると思いますが

私の子供時代、家では洋品店をやっており、

お手伝いさんが来てました。彼女の弟が

近所の映画館の撮影技師をやっており、

お手伝いさんに連れられ、ほとんど無料で

映画を見ていた。それで映画を見るのが、

好きになったものである。

お手伝いさんは市川雷蔵の大フアンであった。
子供には中村錦之助、東千代介(きんちゃん、ちよちゃん)
が、若い女性には市川雷蔵が大人気であった。

夭折したが、男の色気と壮絶さを併せ持つ稀なる俳優であった。
当時は里見浩太朗は、まだ駆け出しだった。

それにしてもよく映画の黄金時代に
でくわしたものと思われるが


チャッピー物語(243)   ”男と女”  竜崎     

出版社の重役兼販売部長の竜崎の話に戻る。

竜崎も販売部を中心に活躍していた。

プロジェクトの成功もあって、販売状況が

好調になり、より忙しく成って来て、

販売部でも増員要請をだして、

社員を募集をしていった。

だが、人事部より中々良い返事が

なく、半年以上たっていた。


チャッピー物語(244)  ”男と女” 竜崎      

雑誌の好調さとはいえ、社員100人

程度の会社であり、世間の認知度は

無名に近かった。しかも活字離れの世相と

大手出版社でも倒産の憂き目を

見るような時代でもあり、会社に応募してくる

人も少なかった。その中で久しぶりに

新卒の学生を採用し、彼を販売部に

回される事が伝えられた。

販売部長である竜崎も面接に立会い

たかったが、忙しさもあり人事部に

任せていた。


チャッピー物語(245)   ”男と女” 竜崎      

採用された新卒の学生は販売部としては、

誰が面倒を見るかで協議したが、
10人弱の人員の中で部下の仕事は

毎日手一杯であった。結局部長自ら
指導育成することとなった。

竜崎自身も過去、自ら指導された先輩に見習い、
新入社員時代を思い出しながら

やるからには会社のエースを
育てようと意気込んだ。

『やるぞみておれ 口にはださず
腹におさめた 一途な夢を
曲げてなるかよ くじけちゃならぬ
どうせこの世は 一ぽんどっこ』

  畠山みどり  出世街道(1)


チャッピー物語(246)  ”男と女”  健二      

配属された新入社員は間島健二といった。

地方大学の文学部の出であった。

竜崎は”入社おめでとう。これから

ともに頑張っていこう。”といいながら

出版社の現状と将来の構想を
伝えながら大いなる期待を

示していった。そしてまず基礎的な
仕事のやり方を教えていった。

健二は”はいはい”と返事をしながら
意欲的に覚えようとしていった。

竜崎はこれから本格的に教育できるぞと
その日は満足して過ぎた。

『男のぞみをつらぬく時にゃ
敵は百万 こちらはひとり
なんの世間は こわくはないが
おれはあの娘の 涙がつらい』

  畠山みどり  出世街道(2)


チャッピー物語(247)   ”男と女” 健二      

ところが、翌日定時になっても
健二は出勤してこなかった。

連絡もなかった。

特に昨日は変ったことは無いし、
どうしたことか、(もういやに
なって止めようと思ったのか)と

考えたが念ために携帯
電話をいれたが不通だった。

やっと夕刻にもう一度竜崎から
携帯をかけたとき、健二がでた。

その時の応対に竜崎は唖然とした。

『他人に好かれて いい子になって
落ちて行くときゃ 独りじゃないか
おれの墓場は おいらがさがす
そうだその気で ゆこうじゃないか』

  畠山みどり  出世街道(3)


チャッピー物語(248)   ”男と女” 健二     

健二は”昨日は入社祝いに、友人と飲みすぎて

今朝から気分が悪いので休んだのですが。”

”君は入社2日目じゃないのか”

”私は気分が悪いのに、

無理して出勤して会社で倒れたら

どうするんです。部長は責任取ってくれますか”
健二は何の悪びれる事もなかった。

竜崎はむっとしたが、”身体が悪いなら、
その旨朝一番に連絡をして来なさい。

会社は、お互いに相互のつながりで
仕事をしているんだから。”

竜崎は今頃の若者はこんなものなのかと
あきれ腹が立ってきた。

『あの娘ばかりが 花ではないさ
出世街道 色恋なしだ
泣くな怒るな こらえてすてろ
明日も嵐が 待ってるものを』

    畠山みどり  出世街道(4)


チャッピー物語(249)   ”男と女” 健二      

翌日健二は定時に出勤してきた。

竜崎は説教するのは止めて、まず簡単な仕事を与えた。

雑誌を棚に整理することである。毎月出版されるので

最新号を入れ替えし、積上げるのである。

2−3個、見本を示し後は、見出しどうり

雑誌を整理する事を教え、後は任せた。

竜崎は別の会議があるからであった。

夕刻竜崎はその場所に戻った時、

きれいに雑誌が積上げられてはいたが、

何か違っていた。よく見ると、

雑誌の置き場所が異なっていた。


チャッピー物語(250)   ”男と女” 健二      

竜崎は健二を呼んで雑誌の置き場所を

変っているのを指摘してこれは、

どうしたのかと詰問した。

健二は”今までの置き方を

雑誌のABC順番に置き換えたのですが

このようにすると素人でも探しやすいと

思ったので、その様に並び変えたのです。

これから楽に速くなりますよ”

”今までよくこんな乱雑に置いていたなあ!”

健二は平然と自信をもって答えた。


チャッピー物語(番外)   ”男と女” 作者より(11)     

皆さんのお蔭で250回も迎えることが

出来ました。サーチ件数も2500回を

超えております。

さて今回は特に物語らしき内容として、
凝ったつもりですが、いかがでしょうか。
お楽しみできたでしょうか。

尚、文中に出てくる石川備中の守は愛媛県西条市に

実在した人物で当家もその十八代目に当たります。
高峠も実在するものである。

高知県の教師であり、歴史家の朝倉慶景先生の

『石川氏および天正期 東予西讃の
諸将についての研究』(非売品)に詳しいが

ここでは、物語らしく北国の伝説に脚色しています。


チャッピー物語(番外)   ”男と女” 作者より(12)     


さて皆さんの意見、要望が最大の続ける要因に
なっていますので、聞かして

欲しいのですが、いかがでしょうか。

(それとももういいでしょうか)

登場人物の綾子、徹夫、高子、澄江、竜崎、健二

良雄、順三、園子,時枝、千佳子、

節子,守、子供達など

そして歌詞も

皆さんにはどのように映っているでしょうか。

どの人にもっと焦点を当てて欲しいとか、

またストーリーとしてはどう思われるかです。

色々のご意見の中でヒントも生まれるとは思いますが。


チャッピー物語(番外)   ”男と女” 作者より(13)     

それから皆さんも過去の内容(250回以前)をご覧になっては

いかがですか。多くの発見があると思いますが。

又あらすじの見直しもできると思います。

作者も時々内容を確認するために

さかのぼって見ています。

表現の反省点も多く見つかります。

またよく長い事やれたなと、自信を

取り戻し、これからの挑戦の糧とも

なっていますが。さてこれからが

佳境になり、いよいよ胸突き八丁であり

新人も登場して来てますので、ご期待下さい。

また皆さんも感想など聞かせて下さい。


チャッピー物語(251)   ”男と女”  竜崎      

竜崎は憮然としたが、此処ではっきりと

教えるべきと思った。

”この雑誌の置き場所は、売上高を考慮し、
多く扱うものを中央に取り易くして、

従来から販売部だけでなく、編集室、業者だの
が出し入れしたり、調査をするために使用して

いるのです。君の一存で変えたとなると、

多くの人たちが混乱したり、間違えるのだ。

君の創意工夫は分るけれど、それなら

会議にもかけて皆の同意を得て

からにしようじゃないか。

すぐに初めに言ったとおり並び変えなさい”

健二は”面倒な手続きをするなあ”と

不満そうだったが、取り掛かった。


チャッピー物語(252)   ”男と女” 竜崎      

翌日竜崎は出勤したが、早速各部から

”あの棚はどうなってんですか”

”やりにくくてしょうがない”といってきた。

竜崎は早速棚を調べてみると、

棚の整理は中途半端であった。

健二のABC順に並べた分が半分、

残っており、竜崎の指示した元の分は

半分ぐらいしか進めてなかった。


チャッピー物語(253)   ”男と女”  竜崎      

すぐに健二を呼んで詰問した。

健二は”部長のおっしゃるように

したのですが、5時になったので

また明日で良いかと思って、帰ったの

です。その後デートもありましたので”

竜崎はあいた口がふさがらなかった。

”多くの人が迷惑をしているのだ。

それと君がやった仕事なのだ。定時とは

いわずに最後まで綺麗にしてから、

退社すべきではないか”

健二は不服そうに

”今彼女との約束を破ると大変なんですよ。

そんなに急ぐのなら部長も手伝って

くれたら良かったのに。”


チャッピー物語(254)   ”男と女”   竜崎     

竜崎は人事部の担当者に問い合わせた。

”どうしてあんなものを採用したのだ”

担当者は、不思議そうにいった。

”彼は中々しっかりしていて、はっきりと

物をいい、創意工夫もありそうだった

のですがねえ。すみませんねー”

なるほど健二は自分流ではしっかりして

物怖じせず、ときにタジタジとする事もあった。

”それに今は、他の部門の増員も待って貰って

いますので、彼を辞めさすと、今度は

何時販売部に採用できるか分かりませんよ。”

人事部担当は自分のミスを認めたがらず、

若干の脅しも、かねていた。


チャッピー物語(255)   ”男と女” 竜崎      

そしてさらに人事部の担当は

”販売部は人材ぞろいで皆

竜崎重役が育てたということで評判で、

我々もチョットくらい個性があっったほうが、

重役が磨いて伸ばしてくれると安心してるんですよ”

”それにせっかくの新卒でもあるし、大学の先生の

紹介も、今後の為に大切にしたいし、重役!

お願いしますよ。長い目で見て、育ててくださいよ!”


チャッピー物語(256)   ”男と女” 竜崎      

人事部はさすがに持って生き方が上手だ。

竜崎は脅しすかしもあって、御丁寧に応対されて、

返って怒りにくくなった。

もうすでに部下なのだ。辞めさす事は

難しい。人の目もあることだ。

重役ともなると、返ってものを

いいにくいこともあるのだ。

”今後ともいい人を選ぶよう頑張って

くれよ。”というばかりであった。

そして今後とも、健二を指導していくしか

ないのかなと観念した。

そして竜崎の健二との苦闘はつづくのである。


チャッピー物語(コーヒブレイク)(11)

"最近の若いものは" という表現は
なんとピラミットの中にも見られるそうである。

作者もいまでは物分り良くなっているつもりであるが、
若いときを振り返ると、相当自分流であり(なに今もだって?)
先輩を困らせたものだと、つくづく思い出すのである。

多分若い時は、他を帰り見る余裕がなく
自分のことで精一杯であり、
また自分だけが、正しいと思い込むせいであろう。

また世慣れてなく、衝突もいとわないことにも
起因するであろう。それは決して悪いことではなく
それによって時代も変革されるからだ。

また年取れば自分は自己の若い時の未熟さを
忘れてしまうのだろう。

いずれにせよ今後も歴史は繰り返すのでは
”最近の若いものは”という言葉は


チャッピー物語(257)   ”男と女” 節子      

節子の話に戻る。

求職活動に頑張ってきた節子であった。

今まで履歴書の棚卸、そして自分の条件

受ける会社の状況などをセミナーで

学びながら一度も、面接までいかなかった。

しかし明るい夫の守と子供達に囲まれて、

節子は頑張ってきた。そしてついに

求職した会社より面接の案内が来た


チャッピー物語(258)   ”男と女” 節子      

節子はやっと面接まで来たかと小躍りした。

が直ぐに不安になった。面接ではどんな事を

聞かれるのか、またどんなふうに

答えたらいいのか、また服装とか、靴とか

化粧にも気を配らなくてはと考えた。

履歴書に書いたことは何度も目を通し、

自分で言える様に復唱した。

そして指定された日時に会社に赴いた。

応接間に通された節子の前に

面接官が現れた。中年の恰幅の良い人

だったが目つきは鋭かった。節子はそれだけで

ビビリ上がってしまった。


チャッピー物語(259)   ”男と女” 節子

面接官は若干の挨拶の後

質問を繰り返した。”どうしてわが社を選んだのですか。”

”あなたの職歴、そして得意分野はなんですか”

”あなたの特徴なり人柄について紹介下さい。”

節子は事前に考えてきた来た事があったが、

頭が真っ白になり、

どう答えていいのか戸惑い、小さな声で

ぼそぼそ答えたようだが、自分でも何を

言ったのか覚えてなかった。

面接官は”今日はご苦労様でした。結果は

又後で連絡しますから”と言って面接は終わった。


チャッピー物語(260)    ”男と女” 節子      

節子はそれでも期待して1週間待った。

封筒がきたが、やはり”今回はご期待に

添えません”という事務的な返事がきた。

節子はまたまた、がっかりしたが、あの面接の

状態ではやむを得ないとは思い返した。

それで面接をどうしたらよいかと考え

また求職面接のセミナーに

通い始めた。講師はかんで含めるように言った。

”人間の印象の55%は最初の目からのもので、
視線、態度、服装によるものである。

38%は耳から入るもので、声の大きさ、強弱により
決まり、残りはわずか7%である。

したがって目からみた印象と、声の応対を
よくすること、それがとっても大事でしょう。”


チャッピー物語(261)   ”男と女” 節子      

講師は進めた。

”まず面接の案内があったら、事前に会社に

見にいくことが必要である。それは

面接日当日時間に間に合うようにする為です。

場所は住所と地図とかに

書いてあるが実際には分りにくいことも

多いのです。当日会社を探すだけで

消耗するなど、すでに疲れてしまう。

それと共に、事前に会社の規模を

知っておくことが必要であろう。

実物をみて大きい会社か、小さな会社か
知っておくことは、大切になってきます。”

”大きすぎてビビルとか、小さすぎてがっかりとか
前もって違和感のないように感覚を掴むのです。

勿論ビルの大小では会社の良し悪しは分りません”


チャッピー物語(262)   ”男と女” 節子      

講師はさらに、事前訪問について続けた。

”履歴書を持参するようになっておれば、

事前に訪問した時、係りの人に会って挨拶し、

『会社を探すついでに訪問させてもらったのですが、

履歴書を持ってきました。』とさわやかに話すのです。

長居はいけません。相手の時間を割きますから”

”すこしでも自分の顔なりを知って貰ったら

それでよいのです。また当日その人が

応対してくれたら、こちらもとても安心できます。
向こうも覚えてくれます。”


チャッピー物語(263)   ”男と女” 節子      

講師は当日の面接の仕方について話を進めた。

”芸能会社を選ぶなら別ですが、普通の会社員

になる人が大部分でしょう。

服装、化粧は派手すぎずにする事です。

そして10-15分位前に着く事です。

早すぎても相手の時間を割くことも

あるので、まずいです。

まして遅れるなんて、その時点で失格と

思ってください。”

”それからあがりしょうの人もいるけど、

だれでもあがるのです。あがらないとか、

緊張しない人はいないのです。あなただけでは、

ありません。今更繕って自分を必要以上に
よく見せる必要はありません。

自分らしさをだそうと心がけください。”


チャッピー物語(264)  ”男と女” 節子      

講師はさらに面接の基本を続けた。

”面接官は1人または複数の場合がある。

最初の人は人事などで、その会社に

ふさわしいかどうかを選定する人であり、また

職場の監督者が同席する場合がある。この人は

直接自分の職場に求めているのだから、

質問もその部門の仕事中心になってくる。

勿論2回以上分けて、する場合もある。

中小企業なら、直接社長が同席する場合もある。

この場合は社長は、直感を大事にされる。

経営者は直感は鋭いものと心得たら

良い。自分の会社に役立つかどうか、

本能的にかぎ分けます。

会社の生き死にを担っているからです。”と

講師は力説した。


チャッピー物語(265)   ”男と女” 節子      

講師は続けて、待ち合わせの場所から面会場所へと

行く場合、ノックの仕方、

入場から椅子の座り方、挨拶の仕方

かんで含めるように、教えてくれた。

そして応対も長話はだめで、聞かれたことは

はきはきと大きめに答えるように

そして必ず聞かれる事は

@その会社を志望理由

A自分の過去の実績

B性格、あるいはモットー

C会社を替わる場合はその理由

面接の終了後、退出時の姿勢なども学んだ。


チャッピー物語(266)   ”男と女” 節子      

節子は1つ1つうなずきながらメモを

とっていった。そしてセミナーでは

擬似面接も行い実際節子も

やってみた。中々旨くはいかなかったが、

それでもだいぶコツが分ってきた。

後から担当者に礼状を書くことも学んだ。

それから、次の会社で面接までいった時

には大いに役に立ったが

やはり不採用の通知がきた。


チャッピー物語(267)   ”男と女” 節子      

節子は夫の守に相談した。

”そうか面接までいってもだめだったか

残念だが、気長にがんばったら良いのでは、

でも僕は初めて会った時から結婚するなら、

君だと思っていたよ”

子供達も寄ってきた。

”ママが幼稚園の参観に来ると、

僕らは、得意なんだよ

ママが一番若くきれいでやさしく、皆から

ほめられ、うらやましがられるんだよ、うん”


チャッピー物語(268)    ”男と女” 節子      

節子は”自分の家族が一番

自分を解ってくれてるのだ。”

と思い直した。

家族の思いほど頼りになるものはない。

(広い世間のどっかには

自分の価値が解ってくれ、

求めてくれる会社と人がいるはずだ。)と

落ち込み掛かった気分がほぐれ、

再挑戦の思いが湧いてきた。


チャッピー物語(269)   ”男と女” 節子      


でも守は一言多かった。

”節子を見たとき、俺が申し込まなかったら、

もう節子のほうには相手が無いだろうと、

可哀想に思ったものだったな。”

子供も一言多かった。

”ママが来ると持ってきてくれた、弁当を食べるんだ

そのときはすごいぞ!。何時もの園のと違ってごちそうなんだ!
それが楽しみなんだね、うん”

節子ーー”皆さんすみませんね。もう少し魅力的に
      なるよう勉強しますからね。”

(守があんなに結婚してくれって
拝み頼まれたから、一緒になってやったのに

あんなに迫ったのを忘れて--、あの時の言葉を
録音しておけばよかったわ!)

(子供も守に似て上げたり下げたり
皆いけずなやつ!、もう!!)


チャッピー物語 コーヒブレイク(12)

節子が職を求めて悪戦苦闘しているが、

実は,この物語を書いた最初の相手が(職業訓練所で
で開催している学校の)同窓生
(もちろん年齢は異なるが)であった。

作者が以前からセミナーなどで聞いてきた求職の
ノウハウが少しでも参考になり、苦闘する人たちのエールと
なるかと思いこの節子のコーナー(N113,N143、
N182,N257、今後N313)を書いて来たのである。

このノウハウは今でも使えると思うがいかがでしょうか。

もちろん求職に無関係な人にも、物語の楽しさを
味わってもらいたいと思うし。
作者というものは忙しいことではある(苦笑い)。


チャッピー物語(270)    ”男と女” 徹夫      

カメラマンの徹夫の話に戻る。

徹夫はいろんな地域を回りながら、写真を

撮って回っていった。そして久しぶりに

髪を切ってもらおうと、近くの理髪店に

寄った。お客が立て込んでいたので、

椅子に座り待っていた。退屈なので、

そこにある書棚を探していた。漫画本の中に

”鉄腕アトム”が数冊あったので、取り出して

ぱらぱらと見ていた。子供の時から、マンガ本

でもアニメでも徹夫もよく見たものだった。


『空をこえて ラララ
星のかなた
ゆくぞ アトム
ジェットのかぎり
心やさしい ラララ
科学の子
十万馬力だ 鉄腕アトム』
   鉄腕アトムの歌(1)


チャッピー物語(271)    ”男と女” 徹夫    
  
鉄腕アトムはご存知、手塚治虫の名作で
近代漫画の祖と謳われて、漫画の世界に

初めて映画の手法を取り入れたと評価され、
いつも人気は圧倒的であったが、

手塚亡き後 徹夫にとっても久ぶりだった。

手塚は医学博士としての資格もあって
科学知識も豊富で、ロボット、ロケット、未来都市

など未来像を描いても、どれも出色だった。

『耳をすませ ラララ
目をみはれ
そうだ アトム
ゆだんをするな
心ただしい ラララ
科学の子
七つの威力さ 鉄腕アトム』
   鉄腕アトムの歌(2)


チャッピー物語(272)   ”男と女” 徹夫 
     
当時の少年達はその斬新な未来像と、

アトムが単なるロボットだけでなく、

人間の心をもっていることに、共感する

ものであった。同時頃に流行った、横山光輝の

鉄人28号が意思を持たず、スイッチを

動かすとおりになった。正義の主人公の

正太郎君が持てばよいのだが、悪人に奪われたら

そのとおりになる。そこがアトムとの 違いだった。

『町かどに ラララ
海のそこに
今日も アトム
人間まもって
心はずむ ラララ
科学の子
みんなの友だち 鉄腕アトム』
   鉄腕アトムの歌(3)


チャッピー物語(273)    ”男と女” 徹夫  
    
鉄腕アトムを始めたのは昭和27年(1952年)

だったが、アトム誕生は未来の2003年の
4月7日の設定だった。


今(2007年)ならすでに過去の物語になりつつあるが、

連載当時ははるか未来の物語であり、読者の

感じ方はどうであったろうか。未来の夢を描いていたのか。

一般的に、過去『0年ーー2006年』なら、書籍、テレビ
で解るように有るように、明らかなことである。

例えば鎌倉幕府設立(1192年)は、
”いい国立てた鎌倉幕府”などと、
NHKテレビ”源義経”の影響もあり
まるで見てきたように話をする。

ところが西暦数万年は、はるか未来と
想像されるであろう。

『ビルのまちに ガオー
夜のハイウェーに ガオー
ダダダダ ダーンと 弾玉(たま)がくる
ババババ バーンと はれつする
ビューンと 飛んでく 鉄人28号
あるときは 正義の味方
あるときは 悪魔のてさき
いいも わるいも リモコンしだい
鉄人!鉄人!どこへゆく
ビューンと飛んでく 鉄人28号』
 鉄人28号の歌(1)


チャッピー物語(274)   ”男と女” 徹夫      

ところで、仮に今が西暦50年だったとしたら、

西暦2007年ははるか、未来と思うであろう。

せいぜい0年ーー50年(紀元後)が、


過ぎた事で、見てきた事のようにと思うであろう。

もし今が10万年であったら、過去になる西暦

2007年はまさに良く解る年代であろう。

『ビルのまちに ガオー
夜のハイウェーに ガオー
ダダダダ ダーンと 弾玉がくる
ババババ バーンと はれつする
ビューンと 飛んでく 鉄人28号
手をにぎれ 正義の味方
たたきつぶせ 悪魔のてさき
敵にわたすな 大事なリモコン
鉄人!鉄人!はやくゆけ
ビューンと飛んでく 鉄人28号』
 鉄人28号の歌(2)


チャッピー物語(275)  ”男と女” 徹夫      

従って年代というものは、絶対的なもの
(一応はそうといえるのだが)ではなく、人間の
感覚としたら相対的なものではないだろうか。

徹夫は鉄腕アトムを読みながら、”そうか過去は手の内か、
時間も絶対的なものではないな”と、感じていた。

いわば、アトムが始まった年(1952年以降)手塚読者は
同じ時代に生き、はるか未来の夢(2003年たとえばロボットの姿)を

見たはずだ。ところが2003年を過ぎて徹夫が今(2007年)アトムを見ると
その当時の世界(過去から未来)に入る懐かしさと共に、

(すでに話したり、歩いたりするロボットの進化を回りに見ているので)
アトムを現在から過去をみているのだ。

すなわち作品は同じなのに、読者が時代を超えているので、作品の中身を
時間空間を越えて感じていくのだ。

”喝采”は表現の妙でみせ、浦島はおとぎ話でみせ、
アトムは(作品は一点なのに)読者の進化で
宝石のごとく多面、多様に見れるのだ。

それにアルバムを友人に見せてもらった時

大勢の卒業写真の中からすぐにどれが本人かの見分けも
つくことができるな。
 同じく現在からも過去を想定できるのだ。

逆に現在からも未来は相当想像がつくのだろう。
例えば、ある娘さんを見た後、そのお母さんをみると、
その娘さんの未来の容姿などある程度見込みもつくのだ。

そういえば、”この間映画のなかでマリリンモンローがでていたな”

突然徹夫は感動でひらめいた。


チャッピー物語(276)   ”男と女” 徹夫      

”そうだ、そうだ解ったぞ!”

徹夫は感激で身震いして、

これを誰かに直ぐに伝えたかった。

そしてそれは誰かを瞬時に思いついた。

徹夫はやはり映画を一緒に見た早紀に

聞いて欲しかった。早紀を呼び出し至急会いたいと

呼び出した。早紀は何事かと思ったが、

徹夫の申し出がとても切迫しており、

しかも必死なので、直ぐに同意して、

その日の仕事の終わった後に会う約束した。

近くの喫茶店に行くと、徹夫はすでに待っていた。


チャッピー物語(277)   ”男と女” 徹夫      

徹夫は早紀に会うなり、挨拶もそこそこに、

”解った、解った”とまくしたてた。

”ほら先日一緒に映画を見に行った時、

ニュース映画にマリリンモンローが映って

いたろう。”とまくしたてた。マリリンモンローは若い時

生活の為 ヌード写真を撮っていたのだが、

あるときカメラマンの写真が壊れていたのか、

シャッターが瞬時に押されず、モンローの体の動き

そのものが多重に映っていた。1枚の写真

にマリリンのセクシーな魅力とあいまって、

あたかも動的に生きたように表現されたのである。

アニメなどに慣れた現代ならば、どうでもないことだが

当時はセンセーショナルを呼び、一躍

モンローは世界的話題の持ち主になり、

大スターの階段を上っていったのだ。

徹夫は早紀に関係なく、しゃべりまくった。


チャッピー物語(278)  ”男と女” 徹夫      

でも早紀にとって徹夫の話は何の

事かさっぱり解らなかった。

そこで徹夫は今までのいきさつを、

話した。妻の綾子と別れた事、カメラの苦闘、

プロジェクトの事、日本中を回っていること

そして、3重写しの事、喝采の歌、浦島太郎、

そして鉄腕アトム,アルバム写真の事など

一気にまくし立てた。 しかしながら、早紀のほうは、

なにか思いにふけり、聞いているようで聞いてなかった。

何か別のことを、気にしていたようだった。


チャッピー物語(279)   ”男と女” 徹夫      

早紀は質問した。”写真のことはよく解りませんが

その別れた奥さんの名前は綾子というんですか。

名字はなんと?”

”上条だけど”  ” ええー!”

”上条綾子さんって、まさか故郷の温泉の仲居にいるけどーー”

今度は徹夫が驚いた。 色々その後、時期

状況、年恰好、性格などを確認していくほど、

別れた妻の綾子に違いなかった。

そして今はと聞くと、就職した温泉の

若主人の良雄さんともう直ぐ結婚の

予定になっているとか。


チャッピー物語(コーヒーブレイク) (13)漫画、劇画

鉄腕アトムを書いた手塚治虫は他に
ジャングル大帝、火の鳥、リボンの騎士などにも

人気を集めていた。当時の少年雑誌は月刊誌で
少年、少年画報、冒険王、ぼくら、少女ものは少女、りぼんなどで

赤胴鈴乃助ーー真空切り(竹内つなよし)、いがぐりくん(福井英一)、
矢車剣之助(堀江卓)なども圧倒的人気を集めていて、
売り出しを待ちかねて本屋に駆込んだものだ。

少年時代後期には劇画が盛んになり、ガロなど貸本屋で
(たしか1日10円)

カムイ伝(白土三平)、ギャング物の佐藤まさあき、
ゲゲゲの鬼太郎の水木しげる、寡作であったが、つげ義春の
紅い花などのフアンであった。

後に超有名になったゴルゴ13の、さいとうたかおも
売り出したばかりだったと思う。


チャッピー物語(コーヒーブレイク) (14)オマーンの亀

浦島太郎が助けた亀に連れられて竜宮城にいった話で
思い出したのだが、作者がアラビア半島南端のオマーンに
家族旅行に行った時のことである。

オマーンはシンドバッド、オマーン帽とか、
日本とサッカーで対戦し、ご存知の方もいるだろう。

亀の産卵が見れるということで夜中に海岸に出かけ、
脅かしたらいけないので案内人のちいさな乾電池で

照らしてもらいながら、数メートルもする何匹もの大きな亀が
穴を掘って卵を産んでいた。子供たちも多く来ていた。

朝方になると何百という孵化した小亀が海のほうに向かい
飛び出していた。中には間違えて陸のほうに進む小亀たちもいた。

このままでは砂漠の熱で死ぬとか、他の動物の餌食になると、
あわてて子供たちはその亀たちを追いかけて

海の方に向かわした。無事に海に到着すると、みんなで大拍手。

あの亀たちは今ではアラビア海をゆうゆうと
泳いでいるのだろうか。そしてまたオマーンの海岸に帰り、
助けた子供たちを竜宮に案内するのだろうか。


チャッピー物語(280)   ”男と女” 徹夫      

お互いに綾子の知り合い同士が
こんな近くにいたとか。

早紀も混乱したが、徹夫はもっと
困惑した。こんな所に知り合いがいたとは。

でも今更分ってどうしようというのか。

でも、もう一度会いたいと思っていたのだ。

しかし相手は温泉の若旦那と再婚するそうだ。

今更顔を見せるなんて、どんなに迷惑だろうか、

とも思い直し悩んだ。

『伊豆の山々 月淡く
  灯りにむせぶ 湯の煙
  ああ 初恋の
  君をたずねて 今宵また
  ギターつまびく 旅の鳥』

  湯の町エレジー(1)  近江俊郎


チャッピー物語(281)  ”男と女” 徹夫      

でもあの時、彼女は何故自分から

去っていったのだろう。

彼女に不満があったのだろうか。

彼女が何か理由らしきものを

聞いた事は無い。勿論生活は苦しく

展望は見えないことはたしかだったが、

果たしてそれが理由だったのか、

もう一度会って話をしてみたい。

でもそれが良い事か。

『風の便りに 聞く君は
  出湯の町の ひとの妻
  ああ 相見ても
  晴れて語れぬ この思い
  せめて届けよ 流し歌』

  湯の町エレジー(2)  近江俊郎


チャッピー物語(282)   ”男と女” 徹夫      

徹夫を早紀に綾子が勤めてる温泉の

詳しい住所を聞いてメモは取った。

しかし綾子に会いに行こうか、

それとも止めておこうかと、いろいろ

迷っていた。

自分だけのことを考えたら、すぐにでも

飛んで行きたいのが、綾子の立場を

考えればそうはいくまいと、悩んでいた。

それと同時に、早紀をもともと呼び出したのは

なんであったのかを思い出した。

『淡い湯の香も 路地裏も
  君住むゆえに 懐かしや
  ああ 忘られぬ
  夢を慕いて 散る涙
  今宵ギターも むせび泣く』

  湯の町エレジー(3)  近江俊郎


チャッピー物語(283)   ”男と女” 徹夫      

やっと光が見えてきた仕事に

ついて徹夫は具体的に表現方法を

考えた。早紀に話したことで
気が付いたのだったが、

理屈は何とか分ってもらったとしても、
カメラマンの立場としては、万人に説明

するわけにはいかない。あくまで

作品の素晴らしさで勝負するしかない。

野球選手はグランドで、相撲取りは土俵で

あくまで自分たちの世界で勝負し、

世間に挑戦し、なるほどすごいとうならせるものを

作りあげるしかないのだ。


チャッピー物語(コーヒーブレイク) (15)

ほんとうにマリリンモンローだったのか?

物語には徹夫が早紀と見た映画に出ていた
マリリンモンローが開眼の因となるシーンがあったが、

この有名なカメラシーンが雑誌に載ったのを、
(作者は過去に一度みたと思ったので、)
ここにそのまま登場させたのだが、今回再登場させるにあたり
気になって再度、雑誌、写真集などを調べなおしたが、

どうしてもマリリンモンローのそのシーンはでてこなかった。
他のセクシーシンボルの女優と勘違いしたのかな?

でも一番なじみのあるのでそのままマリリンモンローとしたが
(虚実皮膜だからいいのだが、)こだわりの
イッチャンとしては今でも気になるところである。皆さんご存知かな?


チャッピー物語(コーヒーブレイク) (16)女優

以前に少年時代に逢えた映画の中で男優を紹介したが
女優も思いだしてみた。松竹では”秋津温泉”の岡田茉莉子
”ゼロの焦点”の久我美子、”もず”の有馬稲子 
それになんといっても

”君の名は”の岸恵子 国民的人気の”二十四の瞳”
”喜びも悲しみも幾年月”の高峰秀子、”東京物語”の伝説の原節子

日活ではもちろん吉永小百合、浅丘ルリコ、芦川いずみ、
冒険家の和泉雅子
最近も良く見る松原智恵子、裕次郎と結婚した北原三枝

東映城のお姫様としては、えくぼのかわいい丘さとみ、大川恵子、
高千穂ひずる、桜町弘子だった。

大映では日本一美人の山本富士子、”羅生門”の京マチ子、
最近話題の若尾文子、東宝では司葉子、星由里子、

歌手からは”じゃんけん娘””ロマンス娘”の美空ひばり、
江利チエミ、雪村いづみ
の3人娘が人気を集めた。みなキラ星のごとく。


チャッピー物語(284)   ”男と女” 高子      

編集長の高子の話に戻る。

高子も日々忙しい日々を過ごしていた。

母の澄江の病状も気になっては

いたが、帰れる状態ではなかった。

電話で近況を聞き、母の話をうなずいては

励ましていた。

雑誌社では、徹夫の写真などで評価を上げてはいたが、

さらに決定打を打つために、高名な小説家に

連載をお願いしたらと言う方針がでた。

『雨にかすんだ 御岳さんを
じっと見上げる 女がひとり
誰を呼ぶのか せせらぎよ
せめて噂を つれて来て
ああ恋は終わっても 好きですあなた
湯けむりに揺れている 木曽路の女』

  原田悠里   木曽路の女(1)


チャッピー物語(285)   ”男と女” 高子      

高子もその方針に基ずき、各方面に

リサーチしていたが、中々こちらの要請に

答えてくれるような作家は見つからなかった。

そのうち社長のほうから、ちょっと以前に

活躍していた作家の柿沢先生はどうかとの

打診があった。柿沢先生ならば、直木賞も

受賞しており、世間的にも有名であり、


高子も承諾して、その方向で取り掛かった。

社長も若いころお願いをした事があったそうで、
最近何かのパーテイで再会したそうだ。

小さい雑誌社にとっては、搭載してくれる有名人の、
名前だけでも、一つのステータスになってくるのだ。

『杉の木立の 中仙道は
消すに消せない 面影ばかり
泣いちゃいないわ この胸が
川のしぶきに 濡れただけ
ああ恋は終わっても 逢いたいあなた
思い出のつげの櫛 木曽路の女』

  原田悠里   木曽路の女(2)


チャッピー物語(286)   ”男と女” 高子      

高子は柿沢先生にアポイントをとる前に、

先生の作品なり、評論なり、経歴なりを

調べていった。依頼するにあたり、作者の

状況も把握していないのでは話にならない。

作家の経歴、作家暦、傾向などを充分

調査の上、雑誌社のポイントきめていくのだ。

多くの作品には、今でも切れとすごさを

感じることが出来た。しかし最近数年の発表が

無く、年齢が70を越して奥様が、

すでに無くなっていた。

高子は自分の頭の中で整理して

柿沢先生にまず電話連絡をとった。

『明日は馬篭か 妻篭の宿か
行方あてない 女がひとり
やっと覚えた お酒でも
酔えば淋しさ またつのる
ああ恋は終わっても 待ちますあなた
どこへ行く流れ雲 木曽路の女』

  原田悠里   木曽路の女(3)


チャッピー物語(287)   ”男と女” 高子      

柿沢は在宅していて、高子は丁寧な

挨拶をしてから、用件を切り出していった。

雑誌に連載依頼の件で一度面会をして欲しいと

願い出た。柿沢は電話口で愛想よく、

応対して、日時を確定していった。

高子は指定された、日時に柿沢邸に

訪問した。郊外の簡素な家であった。

作家は有名になっても、大きな家を

構えない人も多く、高子は気にしなかった。


チャッピー物語(288)   ”男と女” 高子      

チャイムを押すと、お手伝いさんがでてきて、

”先生がお待ちですよ”と言って、応接間に

通された。しばらくすると柿沢が現れた。

柿沢はにっこりと高子を向かえ

いかにも好々爺ぜんとして、高子の話を

頷いて聞いていた。話は無理なく理解され、その様子に

高子はこれでは商談成立と、簡単に思ったが、

多くの問題を抱えるのが分るのは

そう遠くは無かった。


チャッピー物語(289)   ”男と女” 高子      

柿沢との基本的な打ち合せが終わり

連載小説を書いてもらう方向で

一致した。その後柿沢は自分の作品の

うんちくや小説の書き方のポリシーを

延々と話だした。高子は相手の機嫌を

損ねてはいけないと我慢をして聞いていた。

柿沢は”私の話は分ったでしょうか?”

高子は”色々先生のご苦労、含蓄の深さを

を拝聴いたしまして、勉強になりました。

今後とも肝に銘じます”

柿沢はさらに”私の話は分ったのですのね”

高子”は? はい”

次の柿沢の言葉に、高子は困ってしまった。


チャッピー物語(290)    ”男と女” 高子      


柿沢は高子に”分ったというのなら、私の

作風、ポリシー、苦心”を全て言ってみてくれ”

高子は唖然とした。 商談としての開始時期、ギャラ

連載期間、連絡方法などの契約の基本線は

高子も編集長として、確実に抑えてはいた。

柿沢の作品の概要も押さえ頭に入っていた。

しかしながら雑談だと思っていた柿沢の作品の

詳細まではわからなかった。

相手の突然の質問に不意をつかれたものだった。


チャッピー物語(291)    ”男と女” 高子      

高子もさすがに編集長をしているもので

頭の回転は悪くはなかった。なんとか

つくろいながら柿沢にうろおぼえながら、返事をした。

柿沢は”それは全然違う。君は私と

仕事をする気はあるのか。人の話を

いい加減に聞いて、あいまいにしか

答えない。それでも編集長か!”

あの好々爺のまなざしは全く消えて、金壷眼の

目がらんらんと怒りの炎で燃えていた。


チャッピー物語(292)   ”男と女” 高子      

高子は変にいろいろ弁解すると、返って

柿沢の怒りを増すと考え謝った。

”先生の仕事にかける思いを理解せず、

いい加減になって誠に申し訳ありません。

今後は真剣に取り組んでいきます。”

柿沢はそれでも、自分の考えをくどくど

繰り返した。それはいつ果てるとも

知れなかった。

お手伝いさんが気をきかしてか、帰る挨拶に

来た時やっと柿沢の話は止まった。


チャッピー物語(293)   ”男と女” 高子      

柿沢邸を出たとき高子は疲れがどっと出てきた。

契約の方向は決まったが、今後とも相手にするには、

相当苦労するであろうと想像した。しかし社長の

顔もあるし、断る訳には行かない。

高子も多くの出版関係の人を相手にして、

いろんな人の経験してきて、

それなりに、こなしてきたつもりだった。

しかしながら”難しい人だ、えらいものを、

引き受けたものだ”と、真に分るのはこれからだった。


チャッピー物語(294)   ”男と女” 高子      

高子は雑誌社に帰って、社長に報告した。

来月から1年の連載の条件で、ギャラとか

柿沢先生と折り合い契約をとれた事を。

社長は”そうかそれは良かった”と満足した。

高子は社長にあえて柿沢の難しさは

言えなかった。それくらいのことは、

編集長としての仕事として、当たり前だと

思われるだけだと、感じたからである。

皆あらゆる修羅場を乗り越えてきた

猛者ばかりだった。高子はすでに

編集長なのだ。


チャッピー物語(コーヒーブレイク) (17) 男優

前回女優だったが、少年時代にであった男優についても思い出してみた。

松竹では高橋貞二、大木実、”君の名は”の佐田啓二(中井貴一の父)
の三羽烏である。いつのころか”男はつらいよ”の渥美清も圧倒的人気。

東映では”旗本退屈男”の市川歌右衛門、”七つの顔”の片岡知恵蔵、
豪快な”むっつり右門”の大友柳太郎、そして”新吾二十番勝負”の大川橋蔵である。
”武田一真”の月形龍之介も映画俳優ならではの存在だった。

新東宝の悪役は虐げられた弱い若者が悪に手を染めていくのが多いのだが
進藤英太郎、山形勲など東映は悪代官など権力者が多かったようだ。

ヤクザ物では鶴田浩二、そして高倉健は”幸福の黄色いハンカチ”、
”はるかなる山の呼び声”などで 後年の活躍はご存知のとうりである。

東宝では”七人の侍”の三船敏郎そして宝田明、小林圭樹も活躍していた。

大映ではご存知 勝新太郎、始めは白塗りで違和感があったが
不知火検校で転進しその後、悪名、座頭市は超有名であろう。

そして”忍びの者””眠狂四郎””陸軍中野学校”の市川雷蔵である。

日活では以前述べたとうりであるが、タフガイ、マイトガイ、エースのジョー
ダンプガイなどの名前で覚えている人もいるだろう。

高橋英樹もトニー事、赤木圭一郎の亡き後 売り出してきたようだ。

いずれも映画の黄金時代であった。

『俺ら岬の 灯台守は 妻と二人で 沖行く船の

無事を祈って 灯をかざす 灯をかざす

冬が来たぞと 海鳥啼けば 北は雪国 吹雪の夜

沖に霧笛が 呼びかける 呼びかける』

喜びも悲しみも幾年月  若山彰


チャッピー物語(295)   ”男と女” 綾子      

温泉旅館の話に戻る。

深夜、外には雪が多く振っていた。

突然ドアを激しくたたく音がした。

”綾子さん、ごめん起きてよ!、

綾子さん!大変だよ!大変だよ!”

どんどんたたく音が響いた。すでに寝ていた
綾子が起きてきた。

”綾子さん!綾子さん!”

綾子は聞き覚えのある声に何事かと、

上着を軽く羽織り、ドアをあけた。


チャッピー物語(296)   ”男と女” 綾子      

そこには仲居仲間の千佳子が立っていた。

千佳子ははげしく呼吸しながら、”夜分ごめん

でもね、大変なことになっているのよ

実はね若旦那の良雄さんが、昨日出かけたままで

帰って来ないのよ。女将の園子も

良雄さんが出かけたのを、ちらと見た

らしいが、今日になっても帰ってこないし

心配になって友達のところとか、親戚関係に

電話したのだが、知らないというばかり。

ようやく、よく行く飲み屋に当たれば、

どうやら昨夜山間部のほうに出かけたそうよ。

なにかを取りにいくとか。”


チャッピー物語(297)   ”男と女” 綾子      

千佳子はせき切って話を続けた。

”なにか飲み屋では、綾子さんの期待に答えたいとか

と言う事だったらしいの、それで綾子さん何か

知らない?”

”いま消防団とか警察とか、村人総動員で

山狩りをして、捜索隊を組んでいるのよ

綾子さんが何か知っていたらその人達に

伝えなければ”

綾子は大変な事になったと衝撃を受けた。

”良雄さんは私の頼みで高峠に黒百合の花を

取りにいってもらったのよ!!”


チャッピー物語(298)   ”男と女” 綾子      

千佳子は驚いて”詳しく言って、そして

女将と主人も待っているのでそこで

言ってよ!!” 

綾子は早速女将の園子と主人の順三の

所に駆けつけ今までのいきさつを述べた。

女将は驚き待機している人々に高峠への

捜索を懇願した。

順三はこんな場合どういう手を

打つべきかを考えだした。

早速捜索隊は高峠に絞ったが、未だ

暗い雪の高峠に捜索は難攻を極めた。


チャッピー物語(299)   ”男と女” 綾子      

夜遅く、寒さも厳しく、雪も多く

降り積もり、捜索は大変だった。

捜索を一旦中止して、明日あかるく

なってからということになった。

旅館で待つ、園子、順三、そして綾子、

千佳子に報告された。

綾子はそれまでに今までのいきさつを

報告していた。高峠の黒百合を取ってきて

欲しいと良雄に頼んでいた事を

どうしてもそれを見てみたいということを

それを私のために良雄さん自身で

取ってきて欲しいと頼んだことを。


チャッピー物語(300)   ”男と女” 綾子      

女将の園子は何のことか、始めはわからなかった。

(あのおっとりした良雄が

自ら行動を起こすなどは

しかも伝説に過ぎないことに対して!

しかし、もうすでに探しにでかけたそうだ。

綾子のたっての頼みに応えるために)

園子はようやく事情が分ってきたが良雄の
無事を案ずるのみだった。

捜索隊は朝になって再出発した。

千佳子もおろおろして、綾子と共に
良雄の無事を待ち望んだ。

そして数時間を得た。そして最悪の結果を

招いた事が分った。


チャッピー物語(番外)    作者より(14)     

連載も300回を迎えました。皆さんの

お蔭です。さて良雄の運命は、そして綾子は

徹夫、早紀、竜崎、高子、節子は

いかになるのか、作者もストーリーと

表現の仕方に最大に苦慮しております。

もう少し何とかならんかいなと思いながら、

文才の無い中、仕方ないのかとも

思っていますが

ところでここには、一般に興味があるといわれる

ものもないので、皆さんには物足りなく思われるでしょう。

しかし、どうしてこうも続けられるのだろうか。


チャッピー物語(番外)   作者より(15)     

勿論興味あるシーンは作者には書きたく無い

(正確には、書けるような力量がなく書けず)

ことが理由であろう。ささやかな自己の経験を背景にした

人生ドラマ、若干の推理が交じった心理ドラマである。

しかも喝采、竹取物語、鉄腕アトムとかほとんどの人が

知っていそうなものを多く登場させ、素人でゆえに、

物怖じせず(玄人はでは逆にできないと思うが)

しかも十数行の連載物語なので、逆に長く続けられのではないか。

次にはどうするか(ドウナルカ)との思いを作者自身が

わくわくしながら、苦しみながら熱中しながら

創作しておるのが実情です。

皆さんのほうはどう思っているでしょうか。

自分で自分の物語を分析したものですが、

そして最終章を迎えるまで

お楽しみいただけたらと思います。


続きは後編
 
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