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            チャッピー物語    by イッチャン

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ようこそ 

我が家の回想録として始まりますが

途中から男と女の物語になります。

全て創作であり、誰かをモデルにしたものでは有りません。

ご愛読下さい。

続編 後編 はこちらです

目  次

チャッピー 始まり  No1    しつけ No19  家族と  No28
 男と女  別れ No38   それぞれの旅路 No45   B01  B02  C01
 カメラ修行 No54 若主人 No58  雑誌社   No62  c02  
温泉にて  No72 C03早紀の立場  No86 仲居頭 時枝  No89
プロジェクト No95 B03 B04 登場人物  N101 高子と竜崎 N102
歳月 N106  C04  節子  N113   旅館 N120 千佳子 N126
契約 N132  三重写し N138  C05  節子の闘い N143 続編へ


チャッピー物語(1)

パソコン学校を卒業して1週間、時間がありすぎるので犬(チャッピー)を

連れて散歩をすることが、多くなった。

今までは土曜日、日曜日だけが私の番であり、

他の日は娘の番であった。

一緒に散歩するにつれ、チャッピーの今日に

至るまでを思い出してきた。興味ある人は

読んでいってください。 そういえば盲導犬クイールは

書籍とか映画にもなり多くの感動を与えたが。

それにはまったく及びませんが。


チャッピー物語(2)

チャッピーが生まれたのは3年半前の2001年8月15日

の盆の日で 父犬は”力”、母犬は”シェリー”

といい共に血統書付きの犬であり4匹の兄弟で子犬が

近所の団地のFさん方で生まれた。Fさんはどこか

飼ってもらえる人を探していたが、知り合いの私の

家内に持ちかけた。家内は一番可愛い”チャッピー”

(当時はFさん方では”チビ”となずけていたが)

を一目で気に入ったそうだが、私は誰が面倒をみるかで

難色を示し家内と娘が面倒を見るということで

我が家にきたのは10月下旬であった。


チャッピー物語(3)

早速 ゲージとか皿とか毛布などを家内が用意した。

また”えさ”とか犬の用品を家内が用意した。


(興味のあるかたは”おちゃめなシーズ”ーー主婦の友社版)

チャッピーを見てからは、その可愛さに私自身がすこしずつ

変わっていった。見るまでは、なるべくかかわりを持ちたくないと

思っていたが、無邪気にはしゃぎ、ぺろぺろなめに来るし

私自身がすこしずつほだされてきたようだ。それまでは

家の玄関の土間で飼おうと思っていたが

段々寒くなるし、家内の意向にも押されて家の中で

飼うように決めた。

ところが3日目に思いもかけない事が起こったのである!


チャッピー物語(4)

3日目にチャッピーをくれたFさんが、尋ねてきてチャッピーを返して

くれというのである。 家内は”え! 何で?”と驚き、理由を

問いただした。Fさんの話によると母犬の”シェリ”ーが子犬の

チャッピーがいなくなってから えさも食べずに夜も泣きまくり

チャッピーを探して泣きまくるそうである。4匹もいた子犬も早めに

2匹はもらわれたので居ないのと同じだったようだが、

妹犬の“葉月“と”チャッピー”は3ヶ月を

共にすごしていたので、母犬としての情がそういう状況に

なったのではないか。家内としてはこちらも情が移り”今更なにを”

ということで、相当声も高くなったのであろう。

なんとかする方法はないだろうか?


チャッピー物語(5)

Fさんからはあれほど”もらってくれ”といわれたのに今度は

”返えしてくれ”と言う。家内は”返したくない”ということで

なんとか良い方法はないかと考え、”今後チャッピーの子供が

出来た時に孫を返す”とか提案もしてみた。

でもFさんは母犬”シェリー”の悲しみを毎日経験しているので

絶対に譲らず、とうとうチャッピーを返してしまったので

ある。 仕事から私が帰った時はチャッピーはすでにいなくて

その話を聞いた私も相当残念に思ったし、さびしい思いを

したものであった。家内も娘ももっと落胆をしていた。

さてどうなるのだろうか?


チャッピー物語(6)  人気度

ちょっと話がかわるが、シーズ犬の人気度は

年によって変わるが、ほぼ上位を占めている。

成美堂出版の”シーズの飼いかた”によると

第1位 シーズ

第2位 ゴールデンレトリバー

第3位 ダックスフンド

第4位 ヨークシャテリア

第5位 ラブラドールレトリバー

の順位で年間登録台数で何年間シーズが

トップをしめている。勿論テレビ、映画の影響が

大きく影響するところがあるが


チャッピー物語(7)

チャッピーがいなくなって家内はさびしい思いを

取り返すために別の犬を飼おうと思い私にも

ペットショップにさそい犬のコーナーを探していた。

あちこちのペットショップを回り、多くの犬を

見にいった。最近はお客も多いし、犬猫コーナー

も充実していることが分ってきた。

でもチャッピーに代わるような可愛いシーズは

見あたらなかった。 少しでも飼った情のせいか

思い出のせいか? でもさびしさのせいか

ある程度気に入れば、飼おうかと思ったりもしたり、

心は千代々に乱れるのである。


チャッピー物語(8) ”予感”

もともと娘は神経質なところがあり

孤独におちいりやすい次男にも、

(もっとも当人たちはそう思ってないかも)ペットは良いと聞いていた。

3日間でも子犬の良さが分った家内は”明日には必ず

ペットショップで買いましょう”と持ちかけられたのだが、

でも私は”もう数日待てば、何かある”と

不思議な予感をしていたので、家内に

”すこし待って”と話をしていた。



(チャッピー物語(9) ”歴史”

余談ですが、シーズの歴史はチベット犬(ラサ・アプソ)と

中国犬(ペキニーズ)との交配によって作られた根っからの愛玩犬種だそうである。

シーズというのは、中国語でス・ズ・クウ(獅子狗)からきており

獅子(ライオン)はチベットでは非常に神聖視されており

あがめられていた。ライオンに似た外見を持つ この小さな犬も大切にされ、また

チベットと中国の貴族の間で飼われ贈り物として存在したそうである。

それがイギリス、オランダなどヨーロッパに持ち込まれ、アメリカに

などに渡りより外見などもより良くなってきた。

シーズは紀元前の美術品や壁画などにも登場するほどであるそうである。


チャッピー物語(10) ”Fさん訪問”

2−3日経つとFさんが訪れてきた。何事かと思えば

Fさんは今度は”チャッピーを引き取ってくれ”と

いうのである。またまた”何を言うか”と驚きながら

話を聞いてみると 確かに 母犬”シェリー”は

チャッピーをみて共に過ごすことになり安心して

落ち着いて暮らすようになったのだが

問題は妹犬の”葉月”ちゃんである。 3日間でも母犬とか

Fさん家の愛を独占していたのだが、チャッピーが

帰ってきたお蔭でそれが崩れてしまったそうである。


チャッピー物語(11) """葉月ちゃん"""

葉月ちゃんにとってはチャッピーは大変なライバル になった。

チャッピーも母犬に会えた事で普通以上に

くっつき、甘えるようになったそうである

(後から分るが別の処にすんでいる父犬の”力”と

チャッピーがたまに会っても血が繋がっていることは

双方に分るらしいが、どこかよそよそしい。人間も母と子供の

結びつきは父とは比べものにならないようである。)

”葉月”ちゃんは何かにつれチャッピーと

争い喧嘩が絶えないし噛み合うようにもなった。

Fさんは今度は犬同士の争いに多いに悩むように

なったのである。


ャッピー物語(12) ”課題

Fさんの返還の申しでに途惑ったわれわれであるが

(内心は良かった”ヤッター”と思ったのも事実であったが)

"でもすぐに""そうですか""とは、いえなかった。"

まず 再び引き取るとなると、Fさんのこと(?)とて

また”返してくれ”と言われかねない。

それを決して言わないことが最大の条件である。

また母犬シェリーが大丈夫かどうかである。

一応子供のチャッピーが生きていること、また一緒に

過ごしていけるのを母犬として安堵しているのに

また引き離すことになるのである。

これは近所でもあるので”随時顔会わせ”をして、

相互に安心感を与えることにする。

が問題はチャッピーそのものである。


チャッピー物語(13) ”特徴”

余談ですが(余談が多いが!)

シーズの可愛らしさ、愛嬌たっぷりの顔に

ある。鼻は上を向いて短く、受け口ぎみの口元、

ぎょろりとした大きな瞳は、小さな子供の

ような愛らしさがあります。

表情も中々豊かで、飼い主の態度や言葉、

その時の気分で色々な感情を反映してくれます。

胴長短足で骨太で弾けるような印象をあたえる。

またお尻を左右に振るような歩き方は

モンローウォークのようであり、ぬいぐるみの

可愛らしさを持つ。


チャッピー物語(14) ”子供心

チャッピーにとっては今度は完全に母犬の存在を

意識した状態で引き離すことになるのである。

これがまたうまくいくのだろうか、

一説によると 犬の2−6ヶ月は人間の5歳程度

に相当するといわれている。

人間に例えると、物心ついた赤子が住む家なり保護者が

変わるというのは、どうであろうか。

まして、”葉月”ちゃんとの争いの後である

”番場の忠太郎”ではあるまいが、帰った故郷は

冷たかったとチャッピーの心境を押しはかったものである。

犬のバウリンガルなどはないので、その心情は

分るはずもないのだが。


チャッピー物語(15) ”番場の忠太郎”

”番場の忠太郎”といえば最近は”氷川きよ”しの歌で知られていると

思われるが、もともと”長谷川伸”の時代劇の名作である。

古くは片岡千恵蔵、若山富三郎、萬屋錦之助などの主演で上映され

”瞼の母”で演劇場でも有名である。やくざ稼業の忠太郎は幼少時、別れた

母にやっと会えたが、娘お登世の為にと、母のお浜は涙を呑んで彼を突っぱね、

ここで有名な捨ゼリフを残して立ち去る忠太郎を見たお登世に迫られ、

お浜は娘と共に忠太郎の後を追ったのであるが、せん無かった。

今は核家族が進み人間関係の密度が薄く、孤独になりやすい

傾向があればあるほど、このような物語がまた受けるのではないか


チャッピー物語(16) """再度”"

心配はあるもののチャッピーを 結局引き取る事になった。

この間、戻した日から再度帰ってきた日まで

1か月くらいかかったと感じていたが、

過去の資料(我が家のチャッピー辞典?)

を見てみるとわずか数日の出来事であった。

時間は人の思いで長くも短くもなる。



チャッピー物語(17)

チャッピーを連れ戻した日は、さすがに

疲れていて、普段の愛想よさもなく

そのまま眠りこけ、えさも食べず、夜には

吐いて皆を心配させた。

ようやく寒くなってきた日々(11月)なので

暖房も用意したが、ぐったりと眠るばかり。

このままでは死ぬかもと心配していたが、

病院につれていって特に異常はないとのこと

で安心はしたが、当分じっくり休ませることにした。


チャッピー物語(18) ”健康チェック”

シーズ犬は生後3ヶ月には乳歯が抜けて永久歯が

生え始める。この時に乳歯の脱落がうまくいかないと

歯並びがおかしくなり、歯周病や虫歯の原因に

になる。動物病院で歯のチェックをしてもらうと

良い。また散歩に連れ始める時期の前には

他の犬との接触の予防としてワクチン注射が

(75日目、100日目頃)に必要である。

狂犬病の注射は義務付けられている。

(以後は毎年春に必要)

また、母犬と別れるのが早かったりして

母乳の時期が少ないときには、免疫抗体が

薄れるので、早めのほうが良いでしょう。

いずれにせよ飼い主の責務として

健康チェックは随時必要です。

ところでチャッピーの健康が回復した後に

新たな問題が発生してきたのです!



チャッピー物語(19) ”こまった

チャッピーが元気になってきたのは良かったのであるが、

皆がチャッピーを可愛がる中で新たな問題が発生してきたのです。

食事、トイレ、寝室、などの家庭内の問題である。

可愛がるあまり人間の食べるものを ほしがるようになる。

また自分のエサも随時ほしがるようになってきた

やらなければ吼えまくる。

テレビで話題になった近所迷惑の おばさんのようである。


チャッピー物語(20) ”これもまたこまった”

エサだけの問題だけでなく 夜も人間の寝る処へ来たがり

トイレもまだ定置場所が定まらない また歯が痒いのか

机椅子をガリガリと 噛むようになる。また他人が来ればほえる。

(恐ろしいのか、縄張り根性か)

また自分の”位”をあげるためかこちらのいうことを

聞かず、時には攻撃的にもなる。家族にとってこまった状態に来ていた。

犬としての自己主張の時期がきているのだろう。さて!


チャッピー物語(21) ”幼児性”

本によると『一般的に犬は生後3ヶ月を過ぎると

階級を意識するとの事。家での飼い犬の

シーズも飼い主に対してボスの座をかけて

挑戦してくる。わざと反抗してみたり、飼い主

に噛み付いたり、飛びついて脅しをかけたり、

不服従の態度にでたりします。

そのつど、飼い主は毅然とした、おどしに

負けない態度を犬にみせるべきです。

攻撃を許したり、言いなりになると、犬は

自分のほうが上だと理解するのです。

家族の中で自分が何番目か自分で

決める。あまやかすばかりで、

やりたい放題にさせていると、しつけも

出来ない問題犬になりかねません。』とある。


チャッピー物語(22) ルール

本などでこのようなことはチャッピー特有の

ことではないなと知り我が家のルールを作る事にした

@えさは朝夕2回 犬のエサのみにする。

  どんなに欲しがっても人間の  食べているものはあげない

Aトイレはチャッピー専用の ところで必ずさせる。

 失敗しても繰り返し教える

B寝る時には”ハウス“と指示して 必ず犬小屋で寝かす。

C”がりがり”は怒り、止めさせる。 留守の時など

 (通常は噛んでも良いおもちゃを与える)

 どうしても大事なところは防御策を  設けて通れないようにする。

Dお客などに吠えるの止めさせる

家族ばらばらでは効果がないので 最低限のルールを決めて実行した。


チャッピー物語(23) """しつけ@"""

こういう育てることに掛けてはやはり家内が得意である。

私などはつつい甘えさせる傾向があるが3人も子育てした

家内はさすがにビシビシやる。

チャッピーがどんなにほえても決めた事は必ず守らせる。

新聞誌を丸くして、チャッピーが言う事を聞くまで、

畳を(直接はたたかない)たたいて怒りつけるのである。

チャッピーのわがままは絶対に 通らせない


チャッピー物語(24) """しつけA"""

家内には愛情が根底にあり、(りっぱな犬に育てたい?)

さすがにチャッピーも分ってきたのか 次第に家内の言う事だけは

聞くようになってきた。しつけを守れば徹底的にほめ可愛がる。

それ以降は家族のいうことも分るようになってきた。

いまだにチャッピーにとってのNO・1は家内である。

シーズは比較的しつけやすい種類だが多少頑固な面もあるし、

しつけは生後1年くらいのうちが望ましいし

どうしてもだめなら専門家に相談してみる ことも必要であろう。


チャッピー物語(25) """しつけB"""

話がすこし重たくなるが、今の小中学校は授業にならないらしい。

真面目な先生方ほど、絶望し神経症にもなる。生徒は先生とも、

まともに相手に出来ないらしい。先生も授業をどうこなすかに精一杯で、人格の

”教育”などという観点はあきらめざるを得ない。”夜回り先生”が活躍せざるを得ないように

逆からいえば元気な生徒は夜に逃げ内気な生徒は内に引きこもる。

一部の生徒が爆発(殺人など)をマスコミが

取り上げるのでわれわれは手も出せないで恐怖感を強めるばかりである。

先生は家庭の”しつけ”をしっかりしてくれというし

父兄は先生に頼り抗議するのみである。


チャッピー物語(26) ”しつけC”

このような情勢に関して識者は いろんなことを述べても

毎日マスコミをにぎわす おぞましい事件が多く、その後追い

になるばかりである。

もちろんペットのしつけが ”人間に通じる”などと言う

つもりなどは毛頭ありません。

社会的、時代的、環境的影響をうける

人間はもっともっと難しいし また最も大切であると 思うからです。


チャッピー物語(27) ペットの価値

ただペットを飼うことが家族および少年少女の精神にとってすごく良いことが

(自然の一部に属している実感ができるというか)

(愛情的、家族的一体感になれるというか)

(ペットのほうから人間に無いものを教えてくれるというか)

(飼育を通し、未来っ子が情的、人間的関心興味を取り戻すというか)

すこしは分ってきたので、その事を表現できればと思うだけです。

(勿論これですべての解決になるとは言いません)

少し演説調になってきたのでまた本題にもどります。


チャッピー物語(28) 外出

チャッピーもしばらくして落ち着くと

今度は外に出て活動する時を迎えてきた。

いくら愛玩動物でも家の中ばかり

いると健康にも悪いし、社会性が

身に付かない。家の中だけにいると

家庭の人以外には、恐怖だけとか

あるいは、専横の体質が身に付き

兼ねない。そこで他のペットとか、他人とかに

交じらせることが必要になってきた。

いわゆる幼児でいえば”公園デビュー”の日が 来たのであろう。


チャッピー物語(29) 散歩

チャッピーも首輪を付けて始めて外へ出すとなると

こわごわであった。初めから遠くは無理なので

近所のみ数分で回ることにした。

歩き出すと色々興味と不安と入り混じりながら

の表情をしめす。まして人なり他の犬がくれば

構えて用心の様子をするのでおかしい。

ただ帰るときにはバケツ3杯分にぬる目の湯を

入れて洗うのが大変である

家の中で飼うのでよごれるとまずいので

洗いそしてドライヤーで乾かすのである

チャッピーも嫌がって逃げ回るので 中々やりにくい。


チャッピー物語(30) 女の作戦

特に寒い季節になっていたので バケツに3杯も湯をいれるので、

娘、家内は”担げない”とか、”重たい”とか、しおらしく

可愛い声(その時だけ)で言い、次第に私の役割になってきた。

始めの約束では犬の面倒はすべて家内と娘のはずだったのだが!

(これも家庭の平和のうちなのか?ーーぶつぶつ---)

どこの家でも家事分担はいかがなものでしょうか。

最近は夫の協力という以上に相当やらされているのでは?

(男よ、女の作戦には気をつけろ!女は先天的に演技者なのだ!ーーまちがいない

長井秀和)


チャッピー物語(31) 男のことば、女の言い分

世間によくある話だが 一緒になる前には男は、『好きだ、愛してる

必ず君を守るよ。明るい家庭をつくりたい。

もうすぐ給料も上がるので、庭付きの一戸建ての家を

買おう。休日には一緒にドライブ、買い物をしてそして

食事に行こう。そして時にはコバルトブルーの海や、

国外へ旅行をしよう。君といる時が一番楽しく

落ち着くんだ。家事も分担するよ』

とか甘い言葉を連発するが、それから数十年

今はどうなったでしょうか!(綾小路きみまろ)

女:あの時の約束はどうなったの!(怒り)

男:そんなこといったかな?(ごまかし)

女:だからあなたって言う人は!!

(男の甘い言葉に気をつけろ!愛してるというのは物にするまでだ。
間違いないーー長井秀和)


チャッピー物語(32) 人なつこい

ともあれ次第にチャッピーの散歩の範囲と距離は広く遠くなっていった。

出会う人また人に尻尾を振って 喜んで飛んでいき愛想をふりまく。

また離れる時もその人を追いかける出会う人も『可愛い、人なつこい犬』だと

ほめる。またであう犬犬にも すごくなつき、犬なつこい(?)犬

だと皆からいわれやはり飼い主が良いからと我が家は悦にいっていた。

ところがそれは、まったく表面的な 見方であったと後で分る。


チャッピー物語(33) 散歩の注意

楽しい散歩ではあるが、下記の点は飼い主の義務として守るべきである。
紐で扱いを上手にするべきでしょう。

1)交通事故に会わないように。  ほとんどの犬は自動車、信号は分らない

2)他の人(子供にも)トラブルを避ける  犬の好きな人ばかりではない

  抱っこ、なでるとかも人による  また原則として食べ物をもらわない

3)他の犬、ペット、鳩とかトラブルは避ける   喧嘩、交尾など避けさす
   狭い道はゆずりあって

4)吼えるのは止めさせる  近所迷惑

5)糞の後始末はきっちりと   放置されるのは一番の迷惑

6)ハエ、蚊などの予防クスリ吹きつけ、首に蚊よけをまく

7)暑さ寒さ対策 寒い時は暖房着

8)禁止区域には入らさせない

9)道に落ちているものを食べさせない最近は危ない事が多い

最低のエチケットと、安全を守るべきであろう


チャッピー物語(34) 家族の中心

我が家にお客が来てもまるで自分に客がきたように

喜びかえる。人とかに接することが楽しい時代でもあろうが

ともかく皆チャッピーのことをほめわれわれも飼いがいが

ありうれしく思っていた。もちろん家族が帰ってきても

同様の対応をして、この頃から我が家の中心、および関心、話題の

中心になってきたのである。皆さんの家にもお孫さんが

来たならば、きっと分るでしょうが想像して見てください。


チャッピー物語(35) 男と女 女の姿、男の言い分

世間によくある話だが 一緒になる前に女は輝いていた。

そのやさしい眼差しとすべてを自分に向けてくれる。

口数も少なく従順でまるで自分だけの

天使の様。体型はほっそりときれいで

丸っこく、しなやかで、熱く男の悩みを丸ごと受け入れてくれる。

仕事が終わればごちそうと明るい電気をつけて待って居てくれる。

それから数十年(またも綾小路きみまろだ)

男:あの時のあれは幻かーーー女:あなたの勘違いよ、私はそのままよ

   変わったとしたらあなたのせいよ!   なんなら昔に返してくれる!

男:ーーー(ぶつぶつ)(えーい!ーー男はロマンに生きるのだ!)

(女のすべてに勘違いをするな!女は変わるのだ!

ーー間違いないーーまたも長井秀和だ)


チャッピー物語(36) 車

散歩が大好きになったチャッピーだが 唯一つ逃げまわるものがあった。

それは車に乗せることであった。 車に乗せるとぶるぶる震え

ちじこまり、不安の様子で早くおろしてくれと催促する。

どうしてかと思えば

いままで車にのるとろくなことが なかったのである。


チャッピー物語(37) 医者と散髪

というのは車に乗るときは チャッピーにとっては災難ばかりで

あったからである。まず医者がよいである。時々予防注射をしに

動物病院に行く。そこで痛いめにあう。それから散髪である。すぐに刈って

くれるわけではなく他の犬を待つ間ハウスに閉じ込められ、しかも他の犬に

吼えられるからである。われわれも散髪ができるまで家に帰り

残されたチャッピーにとってはまたまた不安になる。

置いていかれたのかと感じるのは 子犬のせいか、または生い立ちのせいか

ともかく車には警戒していた。


チャッピー物語(38) ”男と女” 女の心

女は考えていたというより、追いつめられていた

といった方が良い。長年の男との関係をであった。

あれほど心通いあった中なのになぜにこうなったのだろう。

そして共に歌いあった歌をつぶやいていた。そして泣いていた。

『恋人よ。僕は旅たつ。東へと向かう列車で

華やいだ町で、君への贈り物探す。探すつもりだ。

いいえ、あなた。私は欲しいものはないのよ。

ただ都会の絵の具に染まらないで帰って、

染まらないで帰って』  大田裕美


チャッピー物語(39) ”男と女” おそれ

女を追い詰めたものは、経済的にもであったが、それよりも展望の見えない

暮らしであった。(何かを変えたい)だが其れは何か。

愚痴をいうなり、文句をいうなり、涙を流すなり、

でもその時期は過ぎ去ったようだ。 何も無かったように日々は過ぎていった。

男は何も分らなかった。女が身をつめて悩んでいたのを。

愚痴を聞くのより怖い事が起こってきたのを。

このままどろどろと憎しみあうようになるのを女はまったくおそれていた。


『あなたはもう忘れたかしら  赤い手拭いマフラーにして

  二人で行った横丁の風呂屋  一緒に出ようねって言ったのに

  いつも私が待たされた  洗い髪が芯まで冷えて

  小さな石鹸カタカタ鳴った  あなたは私の体を抱いて

  冷たいねって言ったのよ   若かったあの頃

  何も恐くなかった   ただあなたのやさしさが   恐かった』

神田川  南こうせつ


チャッピー物語(40) ”男と女” 決めた

男の単純な頭では、女の心の深さには到底

到達できなかった。

この人とこのまま暮らすのが良いのかどうか

これから迎える寒い季節のことを思った

そして女は決めた。


上野発の夜行列車 おりた時から
青森駅は 雪の中
北へ帰る人の群れは 誰も無口(むくち)で
海鳴(うみな)りだけを きいている
私もひとり 連絡船に乗り
こごえそうな鴎(かもめ)見つめ
泣いていました
ああ 津軽海峡 冬景色 』

石川さゆり 津軽海峡冬景色


チャッピー物語(41) ”男と女” 驚き

男はおどろいた。まさか冗談だろう

このごろ女は無口で”何を考えているのだろう”と

思っていたがそれほどとは!

自分なりには想像していたつもりだが 意外だった。

男と女といっても時がたてば

同士、戦友と同じで最高の仲間では なかったのか。

『歌をうたっていた あいつ
下駄をならしていた あいつ
思い出すのは故郷の道を
みんな一緒に離れずに
いこうといった仲間たち』

舟木一夫 仲間たち


チャッピー物語(42) ”男と女” メロデー

男はつねずね好きだった

メロデイー を思い出した。

これほど切実なものとは!

そして男もはらはら泣いた

『横浜たそがれホテルの小部屋

くちずけ 残り香 煙草のけむり

ブルース 口笛 女の涙

あの人はいっていってしまった

あの人はいっていってしまった

もう帰らない』

五木ひろし    横浜たそがれ


チャッピー物語(43) ”男と女”  男心

混乱のあと男は自分に言い聞かせるしかなかった。

(いいよ、いいよそれほどのことなら)

いつも迷っているばかりと

思っていた女の一念が

これほどとは!

『あんな女に未練はないが

なぜか涙が流れてやまぬ

男ごころは男でなけりゃ

分るものかとあきらめた』

村田英雄  人生劇場


チャッピー物語(44) 男と女 別れの朝

色んな悶着があって別れの時が来た。

ひなびた喫茶店を最後の時間をもった。

もうすでに覚悟は決めたのだ。

もう疲れたのか、最後くらいは綺麗にという思いか

男:すまなかったね君との約束が果たせなかったね

女:私こそ、あなたに尽くすことが出来なくて

男:どうしてこうなったのだろう

女:私がいいすぎたのね

男:でも言い合える人はこれから有るかな?

女:−−−−

音楽が流れてきた

『別れても別れても心の奥に
いつまでも いつまでも
憶えておいてほしいから
幸せ祈る言葉に換えて
忘れな草を あなたにあなたに』

忘れな草をあなたに  梓みちよ・菅原洋一


チャッピー物語(45 )   ”男と女” 女の嘆き

女は別れた後、傷心の心を癒すべく

旅にでた。

寒い北国でいやされたっかた

それが一番自分にふさわしかった

そして口ずさんだ。

『何処へ帰るの海どりたちよ
シベリアおろしの北の海
私はもどる胸もない、戻る戻る胸もない
もしも死んだらあなた
あなた泣いてくれますか
寒い心寒い
哀しみ本線日本海』

哀しみ本線日本海     森昌子


チャッピー物語(46) ”男と女” 温泉

女はとある北国の温泉で仲居の

職を得た。いつまでも感傷に

ふけっていればよけいつらい。

そして仕事をすれば忘れらる。

温泉客は多かった。そして

馴れない中でも一生懸命働いた。

『いい湯だな ハハハン 
いい湯だな ハハハン 
湯気が天井から、ポタリと背中に
つめてーな ハハハン
つめてーな ハハハン
ここは北国 登別の湯』

ドリフターズ いい湯だな


チャッピー物語(47) ”男と女”  酒

男は荒れた。酒びたりになった

あんな女に未練はないがと

いきがってみたが表面だけだった。

どうも男は女に母親役を もとめるようだ。

『 忘れてしまいたいことや
どうしようもない寂しさに
包まれたときに男は
酒を飲むのでしょう
飲んで飲んで 飲まれて飲んで
飲んで飲みつぶれて 眠るまで飲んで
やがて男は 静かに眠るのでしょう』

川島英五  酒と泪と男と女


チャッピー物語(48) ”男と女”  喧騒

男はひとりになりたかった。

しかしそれでは余計辛い時間になるので

喧騒の中に身をおいた。そして

何かに熱中してわれを忘れたかった。

『 これから始まる 大レース
ひしめきあって いななくは
天下のサラブレッド4歳馬
今日はダービー めでたいな
走れ走れ コウタロー
本命穴馬 かきわけて
走れ走れ コウタロー
追いつけ追いこせ 引っこぬけ』

走れコータロー  ソルテイーシュガー(山本コウタロー)


チャッピー物語(49)  ”男と女” 風景

男も失望から立ち上がらねばならない

もともとカメラマンをして各地の風景を とる仕事をしていたが

腕は良いが世渡りべたで、評価されてなかった。

その彼が風景を見る目が変わってきた。

単なる風景が風景としてのみではなく

心象として見れるようになっていた

久しぶりに夜空を見上げた。

『目を閉じて 何も見えず
  哀しくて 目を開ければ
  荒野に 向かう道より
  ほかに 見えるものはなし
  嗚呼 砕け散る 運命の星たちよ
  せめて密やかに この身を照らせよ
  我は行く 蒼白き頬のままで
  我は行く さらば昴よ』

谷村新司    昴(すばる)


チャッピー物語(50)  ”男と女” ふるさと

女も仲居として懸命に働いたが、酔った客の

相手はにがてだった。上手に対応できないのだ。

また女の一本気と美貌に反発する仲居もいた。

いじめにもあった。こういうとき女の慰めは

若い時の歌 、そしてふるさとの歌であった。

『格子戸をくぐりぬけ
見あげる夕焼けの空に
だれが歌うのか子守唄
わたしの城下町
好きだともいえずに 歩く川のほとり
往きかう人に
なぜか目をふせながら
心は燃えてゆく』

小柳ルミ子   私の城下町


チャッピー物語(番外) 作者より(1)

いつも”チャッピー物語”をご愛読いただきまして

ありがとうございます。さて連載も50回も

迎えました。多くの人の励ましのおかげです。

さて最近はチャッピーの出番が少なくなっております。

構想はあるのですが、中々題材が集めることが難しい

状況です。現在多く載っている”男と女 ”(歌謡曲編)も含め

”チャッピー物語”全体として、まったくのフイクション

と見てください。誰かを対象にしたものではありません。

初期のチャッピーは我が家の回想録だったわけですが、

もう作者の手を離れまったくの創作と思って下さい。

これまでにも気を悪くされた方は勘弁してください。


チャッピー物語(番外) 作者より(2)

今後も連載を続ける予定ですが、出来るだけ

皆さんの感想をお寄せいただけたらありがたいです。

それもほめ言葉でーー。”豚もおだてりゃ木に登る”の

心境です。なにしろ物語など書いたことがない

(パソコンソフトの連載シリーズはあるが)


勝手なことをいってすみませんがよろしく願います。


チャッピー物語(コーヒブレイク)(1)

どうもいけない!  話がすらすらと進みすぎて、歌ばかり目立つ。

なぜかと考えたら、以前は初めてのことであるし、作者としても

悪戦苦闘していたし、読者にとっても次にどうなるかの

緊迫感があったのでは。しかも平均1日に1回の掲載であったので

充分、文面の余白というものを想像する機会があったようだ。

具体的にして、若干解説しておきます。

1)別れの理由はなんだろうか。
どうやら女のほうに鍵があるのだろうが

2)女:私がいいすぎたのかな
  男:でも言い合える人がこれから有るかな?
  女:ーー
 ちょっとした言葉がどういう展開になるのだろうか。
 
3)喫茶店での別れの時に歌が流れてきた。
  ”忘れな草をあなたに”

  歌にも内容との関連も多いのだろうか。
  
これらが地下水脈なり伏線になり、どこかでひっかかり
どこかで噴き出してくるのであろう。NO38より読み返し
いただければ。

余白(余韻とか推量)のところにも充分見直していただければと
思いますが。

* 番外(B)は書いていた当時の感想なり、所感でありますが、
現時点の物をコーヒブレイク(C)と分けて以降表示します。


チャッピー物語(51)   ”男と女” 先生

田舎町で生まれたせいもあり

女の学生時代は良き日々であった。

人々がいまだ、ゆるやかな密な

信頼関係があったようだ。

そして女はその時代を思い出していた。

『淡い初恋 消えた日は
  雨がしとしと 降っていた
  傘にかくれて 桟橋(さんばし)で
  ひとり見つめて 泣いていた
  幼い私が 胸こがし
  慕いつづけた ひとの名は
  先生 先生 それは先生』

森昌子    先生


チャッピー物語(52)   ”男と女”  若主人

女の姿を見つめている人がいた。

温泉旅館の若主人であった

しばしば苛められる女に対し、優しいまなざしで

”よく頑張っているね””いつでも相談にのるよ”

と言ってくれてるような気がした。


『知らず知らず 歩いて来た
 細く長いこの道
振り返れば 遙か遠く
 故郷が見える 
でこぼこ道や 曲がりくねった道
 地図さえな いそれもまた人生
ああ川の流れのように ゆるやかに
 いくつも時代は過ぎて
ああ川の流れのように とめどなく
 空が黄昏に染まるだけ』

美空ひばり  川のながれのように


チャッピー物語(53)   ”男と女”  若主人

若主人の名前は良雄といった。

前の男が直情傾向であり、

すぐに怒りをぶつけるような人だったのに

たいし、良雄は落ち着いた様子で

若旦那らしく、はんなりとしてやさしかった。

男もいろいろだった。

『死んでしまおうなんて悩んだりしたわ
バラもコスモスたちも枯れておしまいと
髪をみじかくしたりつよく小指をかんだり
自分ばかりをせめて泣いてすごしたわ
ねえ おかしいでしょ 若いころ
ねえ 滑稽でしょ 若いころ
笑いばなしに 涙がいっぱい
涙の中に 若さがいっぱい
人生いろいろ 男もいろいろ
女だっていろいろ 咲き乱れるの』

人生いろいろ    島倉千代子


チャッピー物語(54) ”男と女” 365歩

男も頑張っていたが、なかなか

うまくいかなかった。人はすぐには

変われないし、また認められるものでは

ない。多くの忍耐を要するものだろう。

『 幸せは歩いてこない だから歩いていくんだね

   一日一歩 三日で三歩   三歩歩いて二歩下がる

   人生はワンツーパンチ   汗かきべそかき歩こうよ

   あなたがつけた足跡にゃ  綺麗な花が咲くでしょう

   腕を振って足を上げて ワンツーワンツー

   休まないで歩け』

水前寺清子  365歩のマーチ


チャッピー物語(55) ”男と女”  思い出

苦闘と挑戦がつづく日々に男も少年時代を思いだしていた。

男も小さいころに父親に連れて行かれた大阪球場である。

杉浦、野村、広瀬、 穴吹、杉山の活躍した黄金時代だ。

輝ける思い出持つ人は幸せだ。

『グランド照らす太陽の  意気と力をこの胸に

  野球に生きて夢多き  南海ホークスさあ行こう

  ああ金色(こんじき)の 羽ばたきに

  そらに鳴る鳴るひるがえる勝利の旗!

  ホークス ホークス 南海ホークス』

南海ホークス応援歌  灰田勝彦


チャッピー物語(56) ”男と女” 変化

しかしながらこんどは滅入らなかった

そしてカメラを持ち各地を回った。いままでの

仕事振りを振り返りながら。

それまでは風景は風景としての

被写体だけであったが、気持ちの持ち方を

風景の気持ちになって、ささやき掛け、

応答しながらの写真を心がけるようになってきた

『松風さわぐ 丘の上
  古城よ独り 何偲ぶ
  栄華の夢を 胸に追い
  ああ 仰げば侘びし 天守閣』

古城   三橋美智也


チャッピー物語(57) ”男と女” 清冽

景色がこんなにも色鮮やかに

訴えてくるとは長年のカメラ生活でも

分らなかった。

仕事は雑誌社とかグラビアに持ち込む

ものであったが次第に関心を示されだした。

男の仕事には光るものが出てきた。

『広瀬川 流れる岸辺
  想い出は 帰らず
  早瀬躍る 光に
  揺れていた  君の瞳
  季節はめぐり また夏が来て
  あの日とおなじ  流れの岸
  瀬音ゆかしき 杜の都
  あの人は もういない』

青葉城恋歌   さとう宗幸


チャッピー物語(58) ”男と女”  相談

女も悩んだ末思い切って

若主人の良雄に相談した。

毎日の仕事の悩みである。

良雄は、想像どうり親切だった。

仕事の基本を噛んで含めるように教えた。

お客への対処の仕方
仲居の心覚え
先輩仲居への対応
温泉のポリシーなど


特に悩んでいた反発する仲居の性格、長短など

を話してくれたので、女も対処が分り安心できた。

これからもやっていけそうと思い返した。


チャッピー物語(59) ”男と女” 転機

良雄は女が安堵したのを見て取って、

”これからも何でも相談にのるよ”

といってくれた。

女は少しながら希望がでてきた。

何でもひとりで悩まずに相談できる人が

いれば乗り越えられるようだ。

女は教えられたことを少しずつ

実行していった。人の評価を待つより

自分が良き人として、信頼されようと

考えた。年配仲居との溝も徐々に埋まっていった


チャッピー物語(60) ”男と女”  交流

女はそれからしばしば良雄に 相談しにいった。

良雄は親切に 応対してくれた。主人と仲居という

人の目もあるので、2人きりである。良雄も

女の事に関心を示すと共に自分のことも

話し出した。 見かけは立派な温泉だが

経営は苦しく中々大変であるとの事。

女も跡継ぎの良雄の苦境が分ってきた。

しんまいの仲居である女には聞いても

どうするすべもなかったが

良雄は”苦しい話も出来ることと、

女が同感して聞いてくれるのに”満足していた。

少しずつ、お互いの心の交流が始まっていた


チャッピー物語(61) ”男と女”  うわさ  

ある時、女は良雄には彼女がいることをうわさで聞いた。

それまでは主人としてだけで
男としてはみてなかったが

女は”良雄を思っていた時間が多いのに”返って気がついた。

ある時、女は良雄に呼び出された。女もその事について確認したかったが

自分が”意識していることを悟られる事”をはばかり聞けなかった。

一家の跡継ぎと自分とは身分違いなのだ。

従業員のひとりではあるし、対等に 相手にされるとは、

考えられないし、 女も古いタイプの人間だった。


チャッピー物語(62) ”男と女” 編集長

男も少しずつ自信がついたので

ある目標にチャレンジしようと思っていた

それはいつも断られる中規模の

雑誌社である。そこの編集長には、

いつもすげなく断られるのである。

獲得できれば、今後大きいものに

なるので男は自信作を持って行った。

編集長は高子といい、有名大学出の

やり手で通っており、男などは

いつもやり込められていたが、今度こそはと意気込んだ。


チャッピー物語(63) ”男と女”  駄目

編集長の高子は男の作品を一応

全部見てはくれたが、一呼吸置くと

”これでは駄目ね”と拒否された。

男も今回は認めてもらえると

期待が大きかったので、なぜか

と粘った。高子は自分で考えろと

言はんばかりだったが、ついに

”むらがあるのよ、あなたのものには

これでは、とても乗せられないは!

私も読者の評価との戦っているのよ!” と言われた。


チャッピー物語(64) ”男と女”  反省

男はまたもショックを受けたが

いままでのように、編集長に

対し、かっとすることはなかった。

今回は冷静に考えられた。

”むら”が有るとは何だろうと

持ち込んだ20個の作品を見て見ると

たしかに、出来のよしあしが歴然としていた。

これは何にもとずくのだろう?


チャッピー物語(65) ”男と女”  発見

男は今までの仕事を考えた。

そうだ編集長のいうとおりだ。

でもそれはなぜ? 男は仕事を始めたことから思い起こした。

小さいカメラ店に勤めだして、店主の仕事を

見よう見まねでカメラの扱い、現像の方法などを

学んできたが、それから”自分でもカメラで

作品を作ろう”と決意して、独立して

自分なりにやってきた。チャンスに巡り合えすればと思っていた。

そうだ自分は経験はあるが、理論がない

だから対象に恵まれて、自分の調子のよい時は

良いがアンバランスになると、極端に悪くなる。

之がむらだ。プロとはどんな時でも

一定以上の線を出さねばならない。


チャッピー物語(66) ”男と女” 高子の立場

編集長の高子は皆からやり手としてとおり、

その仕事ぶりから恐れられてもいた。

次の重役の椅子も噂されていた。

だが高子の心境はそれどころではなかった。

雑誌業界もその中身は熾烈を極めていた。

昔は一度雑誌を選べば中々浮気はされなかった
今は読者は次々と気分が変わりその流行の

対応に追われるように新機軸を 打ち出す必要があるのだ。


チャッピー物語(67) ”男と女” 編集長

エログロに転換すれば、一時的な購買は

上がるが、下品になり従来の読者が逃げる。

同じような企画ならば作りやすいが、

すぐに読者に飽きられる。

どんな企画とポリシーと選択力を持つかが

編集長の腕なのだ。

従来の購買層にも満足を与えながら

斬新なものを打ち出さねばならない。

しかも結果は直ぐに購買量で現れる。

しかも敵は読者だけではない。

社内の部下、上司および同僚でもある。

編集長の首など直ぐに挿げ替えられるのだ。


チャッピー物語(68) ”男と女” 怒り

高子にも恋とかいうものもあったが 全て振り捨て仕事にかけてきた。

このような毎日が続く高子にいろいろな作家とか写真とか漫画を

持ちかけて来る人達がいた。 こちらからお願いするような

一流作家たちとは違う。多くはまったくは端にも棒にも

かからないものが多い.高子はこれからの時代を

切り開く新進作家を育成しようなどという

余裕などまったくなかった。貴重な時間をつぶされた

怒りで一杯になる事が多かった。


チャッピー物語   コーヒブレイク(2)

この物語がある程度できた頃ある出版のプロに

見せたところ、次のような評価をいただきました。

”デイテールを描き過ぎない事が

お話としての最大公約数的なところだけ出て

空白を多く仕掛ける事によって、読者は自分なりの

解釈を通じて作品世界に積極的に参加できるのです。

見所は随所にあります。”専門家は難解な事を言いますが

過分な評価を頂きました。それが前回言った

余白を楽しんでといった事につながります。

手前みそになるとは思いますが。


チャッピー物語(69) ”男と女”  応対

このような時に高子はカメラマンの男に作品を

見て欲しいと持ちかけられたのだ。いつもの風采の上がらない男で

あったが今回は少し変わった印象があった。なにか変わったものでも

持ってきたかと期待して面接をしたのだ。なるほど今までの男のものとは

違い心引かれたものもあったが、全体をとおして引き受けられる

ようなものではなかった。 また怒りの言葉がでた。


チャッピー物語(70) ”男と女”  理論と実践

男は高子の言葉を自分の物にしようとした。

実践に強い人は理論をおろそかにし、自己満足に陥る。過去

うまくいった時だけの感性に頼る。 そして時代の流れが分らないようになる。


理論だけの人は実践を知らず独断に 落ちいりやすいし、人の心が分らない。

読者の関心、評価を冷静に客観的に 見ようとしない。

”自分を理解しない世間”を恨む傾向も。 多々ありがちになろう。

解決方法は自分の中に必ずあるのだ。


チャッピー物語(71) ”男と女”  基本から

男はどうだったのか、これからでも基本を身に付けなければならない。

その道の理論の本を読んで基礎から勉強をしていいった。

我流な点も気がついた。また高度な最近の技術も知らない事が分って来た。

今までやって来たのを再整理しながら理論づけ、自らのものとすべく

実践を積んでいった。 自分流が長年身に付いていた。

それを直していくのは並大抵のことではない。 でも男は頑張った。


チャッピー物語(72) ”男と女” めまい  

温泉旅館の話にもどる。

若主人の良雄の話しを聞いていた女は

良雄がどこかいつもの様子が違うのが分った。

苦しそうなのである。

突然良雄はしゃがみ込み

”助けてくれ”といった。女は何事かと

思いどうしたのかといぶかれば良雄の顔は真っ青だった。

”大丈夫よ、すぐに救急車を呼ぶからね”といって

あわてて電話した。早速救急車が駆けつけ

病院へに運ばれ女も同乗した。


チャッピー物語(73) ”男と女” 女将  

女は直ぐに良雄の母の女将 園子にも

連絡を取った。 母も直ぐにかけつけた。

女将は女に、ただ”ご苦労さま”と声をかけ

後は息子の容態を案じ、医者に 相談するばかりだった。

診察によると軽いめまいの事ゆえ 大事には至らず

2−3日で退院できた。日ごろの良雄の心労の故だった。

が女は良雄と2人きりの時に起こったことで

後ろめたい気持ちになった。 女将にすまない

というよりは、女将がどのように思ったのかが気がかりであった。


チャッピー物語(74)  ”男と女”  親密

その日から良雄は余計に女に頼りにするようになった。

女もいつも良雄のことに気を掛けるようになっていった。

軽い冗談も言えるようになってきた。

”朝起きると、君がエプロン掛けて朝食の

支度をしている夢を見たよ。”

”やっぱり夢ね。”女ははぐらかそうとした。

”良雄さんには彼女がいるじゃない

”ああ早紀ちゃんのことかあれは幼馴染の子で

時々有って話しをするだけの中だよ”


チャッピー物語(75)  ”男と女”  女将の思い

良雄の母である女将園子は常々 息子の嫁を

どうしたらよいかと考えていた。

彼女自身はもともと温泉旅館に1人娘として生まれ

主人順三は養子であった。若い頃から

温泉をいかに維持、繁栄させるかを

生きがいと目的にしてきた。

またそれを両親より託されてきた。


チャッピー物語(76)  ”男と女”  妻として母として

主人順三は穏やかで悪くはない。

が順三はもう一つ商売には熱心ではなかった。

夫としてはやさしく包容力があるが、

女将園子としては、我慢できなかった。

それだけ息子に掛けてきたが、もう一つ身体が弱く

将来を心配していた。年頃になり良雄の

嫁というより、温泉を支える若女将として

つとまる人を嫁にと考えてきた。


チャッピー物語(77)  ”男と女”  嫁

女将園子は良雄の嫁として

幼馴染の”早紀”さんも

どうかと考えたが。もう一つ

"物足りなかった。""早紀""は確かに"

近くの温泉の娘であり、世間的のつりあいも

とれる。ただあまりにお嬢さんとして育てられ

温泉の若女将として、良雄を支え

傾きかけた経営を再興させることが

できるのか。そんな時、良雄が倒れた時

良雄のそばにいた女はどんな人か

と思いついた。園子は世間の評判より

実際の人となりを重視する人間であった。


チャッピー物語(78)  ”男と女”  試す

園子は女にすこしずつ難しい課題を

与えていった。女は不器用ながら

一生懸命応えていった。時に叱責も厳しくしたが

女は懸命に励み、表面だけの

頑張りだけでなく、園子が内心

感心するほどの結果をだしていった。

園子は女の真心こもる行動に感歎し、

ついにはあの人を良雄の嫁にどうだろうと考えていた

そんな時良雄から母に話があった。


チャッピー物語(79)  ”男と女”  主人の立場

主人順三は養子であった。 結婚した時は

旅館にたいする意欲はあったが、未だ先代が

元気であり、なにより嫁の園子に対する

遠慮もあった。 しかも園子の経営感覚は

秀でたものがあり、順三が考え付く以上のものが

あった。経営に力を注ぐ園子の立場は高く

皆にも重きを置かれず、夫婦の仲も、あきらめに

近かった。それだけに息子の結婚には家庭円満を

第一に考えていた。そして このごろ園子が力を

入れている女に驚いた。若いころの園子に

よく似た美貌であり、しかも芯がしっかりしており、

それだけに良雄が心引かれるのが理解できた。


チャッピー物語(80)  ”男と女”  求婚

そして良雄はついに女に求婚した。

”私と一緒になって欲しい”

君と暮らしたい。君以外は考えられない”

”これからの苦労も共にして 、そして幸せになろう”

”旅館も一緒にやっていきたい”

良雄は真剣だった。女は良雄にとって精神的にも

また母親似の姿も求めていたそのものであった。


チャッピー物語(81)   ”男と女”  拒否

女は求婚を受け入れらるはずもなかった。

温泉旅館の跡継ぎの嫁ともなれば

若女将である。その大変さは、

女将の園子を見ていれば分った。

また他の仲居と仲良くなっては来たが

彼女等のまとめ役などまったく無理である。

しかも女は離婚を経験し、旅の途中で仲居に

なったような身分である。

由緒ある温泉に嫁げるようなことはできない。

両親の主人と女将も了解するはずがない

と考えた。


チャッピー物語(コーヒーブレイク)(3)

以前に主人公の女が温泉の若主人良雄に彼女がいるらしいことを

確かめたいがそれも聞けなかった。

また良雄が倒れた時女将の園子がどう思うかを気にしている

シーンがある。良雄を気になる比重が多くなるにつれ

女が自らの立場を考え、それを人に気づかれることさえ抑えているのだろう。

これらは百人一首の

〔忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は物やおもうと 人のとふまで〕

を下地にしたものである。でもこんな女の人いる?

という読者からのダメだしがありそう。最近しらべてみたら平兼盛という

男性が作者であった。ちょっとがっかりしたが。でもこんな女の人にも

憧れるのだが、皆さんどうでしょう。


チャッピー物語(82)   ”男と女”  良雄の思い

女は良雄が冗談をいっているのだと

思いたかった。

女ーー”どうしてあたしなの”

良雄ーー”この間倒れた時考えた。

いや君がここに来た時から思っていた”

女ーー”仕事などなにもできないのに”

良雄ーー”いままでどうりがんばってやればできるよ”

女ーー”他の人達に申し訳ないわ”

良雄ーー”僕と君とのあいだの事だよ

君なら他の人も付いてくるよ!”


チャッピー物語(83)   ”男と女” 迷い 

さらに会話は続く

女ーー”女将さんも了解しないわ”

良雄ー”母にはすでに話した。”

”母は君ならと喜んでいたよ”

女ーー”ご主人様は?”

良雄ーー”父は僕の選んだ人なら納得してくれるよ”

はんなりとした良雄にはいつになく強さがこもっていた

女はついに過去のいきさつを話すべきかと迷った。

もうそうする以外に断る道が

無いのかと追い詰められていた。


チャッピー物語(84)   ”男と女”  告白 

過去の事とはいえ、未だ心が癒えた訳ではなかった。

また人との結婚とか共に生活するべく自信がない

其れと共に過去の男との生活を思い出してきた。

完全に忘れたわけではない。

また忘れようがなかった。

女はついに過去の事を良雄に話した

自分は離婚の身で、傷心の旅の途中で

この北国の仲居の職を得たことを。


チャッピー物語(85)   ”男と女” 良雄  

良雄はおどろいた。

女にそんな過去があったのか。

なんといっても旧家の長男として

大事に育てられて成人してきたのである。

しかしそれだけに物事を純粋に把握できた。

そして聡明でもあった。

そしてそういう苦労した人だからこそ

温泉にも自分にも必要であると考えた。

そして過去はどうあれ未来を共に築いていこうと

説得をつづけた。


チャッピー物語(86)   ”男と女”  早紀の立場

良雄の幼馴染の早紀(さき)はいろいろな

うわさに悩まされていた。良雄が

仲居の女と仲良いだけでなく求婚したとかいう噂をきいた。

自分は小さいころから良雄と友達で

よくままごとで”お父さんは良雄”

”お母さんは早紀”と言う遊びもした。

大きくなっても仲良く話ができた。

人からも”似合いね”とよくからかわれていた

早紀はそれでもうれしかった。


チャッピー物語(87)   ”男と女”  狼狽

早紀は良雄からはっきりと告白されたことは

なかったが、娘なりの夢をみていた。

それは必ず実現するものと思っていた。

ところが、女の出現によりまったく

予想外の事になった。人は失った時に、始めて

大切なものだったと分る事がある。

私を良雄さんはどう思っていたのだろうか

そして良雄さんが思いを寄せる人は

どんな人なのか


チャッピー物語(88)   ”男と女” 様子  

早紀は良雄のところに遊びに来た振りをして

女の様子を伺った。女将の園子の

指示を受け懸命に働く女の態度を

影で見ながら、他の仲居達に

どんな人なのかそれとなく聞いてみた。

女の人柄とか働き振りを皆が褒めていた。

良雄も熱いまなざしを女にそそぎ、

早紀の事等、うわのそら事だった。

唯ひとり批判めいた人がいた。


チャッピー物語(89)   ”男と女” 仲居頭  

其れは仲居頭の時枝であった。

最近は女将直属になったみたいな

女の活躍する姿をみていた時枝は

自分の存在が薄くなっていくのを

感じていた。しかも良雄と結婚とか

のうわさも耳にしていた。

時枝は早紀の心を敏感にさとり

"女は女将に取り入り、良雄も自分のものに"

しようとしている腹黒い人よ"と早紀に吹きかけた。

早紀は其のまま、その言葉を鵜呑みにした


チャッピー物語(90)   ”男と女” 時枝の立場  

時枝は先代の頃から旅館に働き

今の女将の園子を助けて来た。

青春を旅館にかけ旅館のことならほとんど知らない事はなかった。

それだけにプライドが強く

主人と女将の絶対の信頼を得ているという思いが強かった。

ところが新参の仲居が女将に尊重され

自分の立場が奪われるという危機感を

抱いていた。そのために女に対する

恨み不信感が増して早紀へのささやきとなった。

時枝としてはそれ以外考えられなかった。


チャッピー物語(91)   ”男と女” 逆上  

早紀はなんといっても旧家の嬢様として育てられて来た。

たいていの事は自分の思うとおり出来、我慢とか辛抱とか疑いということは

縁がないし、それだけ時枝の言葉を鵜呑みにした。

どうして良雄さんは仲居なんかに乗せられたのだろう

早紀は怒りに震えた。家に帰った後、考えていた

早紀は思わず手にしたボールペンを

投げつけた。それは障子を突き抜け

ビリビリと落ちた。


チャッピー物語(92)   ”男と女” 再挑戦   

男の話に戻る。

カメラマンの男は数ヶ月後再度

自信作を作り高子編集長の雑誌社を

訪問した。今度は相当のレベルアップを

したつもりだがやはり不安も大きかった。

ここを乗り越えれば仕事が開けると

いうよりも、自分のプライドを掛けて高子に

”これはすばらしい”といわせたいと思っていた。

高子も前回の事を覚えており、再挑戦してくる男の願いをかなえ

応対する事にした。


チャッピー物語(93)   ”男と女”  掲載   

の持参の作品を一つ一つ見た

高子は内心予感した。”これはすごい

これを取り入れたい。” 雑誌に大きくインパクトを与えるのでは”

編集長としての勘だった。

高子は男の作品を次月号に掲載することを約束した。

高子の予感は当たった。読者のこの写真について、問い合わせが

多く次回からも掲載の要請が多かった。

高子は意を強くして、連続して掲載をするように男に持ちかけた。

購買量も飛躍的に伸びてきた。すこしずつ口コミで評判が広がってきた。


チャッピー物語(94)   ”男と女” 気付き    

雑誌の売れ行きの増加ほど

編集長にとって嬉しいことはない

高子はお礼にと男を食事に招待した。

男は自分の作品が編集長に認められたことに感謝して、

”今後もっともっと素晴らしい

作品を作る”事を情熱的に述べた。

食事をしながら、高子は男には

功利的な言動がないことに気が付いた。周りに多くいる

男たちとはこんなに異なる人もいるのか。

”金とか待遇とか求める”

人が多いのに高子はある意味男を

見直し、またどこか気を許せる人だと分った。


チャッピー物語(95)   ”男と女” プロジェクト     


雑誌社では男の作品をもっと戦略的に

掲載できないかという方針がでて

編集室と販売部でプロジェクトが

発足する事になった。当然高子はその

リーダである。 高子はこれこそ飛躍の時と

感じカメラマンの男に持ちかけた。

男は自分の作品がそれほど持ち上げられる

のに光栄に思ったので直ぐにOKをした。

すこし違和感や不安感を感じたのだが

その時は喜びのほうが大きかった。


チャッピー物語(96)   ”男と女” 不安     

プロジェクトの発足と共に男もその会議に出席する事になった。

各種の意見が出たがさすが編集長の高子の

采配ぶりは冴えていた。あらゆる意見を集約しながら

一つ意見にまとめあげていった。

だが作品をいかに”売る”かの次にどのような

作品を”作る”かにかかって来た。

ターゲットを成人にするか、若者にするか

何処の場所にするか、季節は何時がいいか

購買意欲を増すものはどのようなものか何時までに仕上げるのか

そこで出た結論は男の望んでいるものでは無い事も多かった。

そこで始めて男の不安が分ってきた


チャッピー物語(97)   ”男と女” 衝突     

男は自分の考えで今まで作品を

作り、納得するしないも自分であった。あくまで自分が

全責任を持つしできた作品は120%の自分満足

できるものだけを目指していた。

ところがプロジェクトの求めるものは

"いかに""売れる""かという事である。"

そのためには自分はシステムの一部であり

単に機械の歯車の一部となる事を要求されるのだ。これは男の

職人気質をずたずたにされることが多かった。

当然高子とは衝突していった。


チャッピー物語(98)   ”男と女” 助け舟   

お互いの信念には並行線をたどった。

"いかに""売るか""といかに""作るか""という"

プライドとプライドとの争い、自己を掛けての口論になり

到底結論は出そうもなく、

会議はいたずらに流れ、皆を困惑させた。

ほとんどプロジェクトは失敗かという時双方の助け舟がでた。

営業部長で取締り役をしている竜崎であった。


チャッピー物語(99)   ”男と女” まとめ    

竜崎は男の職人気質を

尊重した。このままでは作品そのものも

男の個性が磨耗されてつまらないものに

なることも恐れた。

そしてカメラマンの主張を大幅に

認めながら、雑誌として最低限の

要請、納期などだけを依頼してカメラマンに

後は託するようにした。

男も自分の意見が取り入れられた事により

返って絶対に成功しなければいけないと責任感を増した。

勿論編集長の立場がなくなるようなことはしなかった。

編集の苦労を充分考えながら話した。

上役の意見として高子も同意せざるを得なかった。


チャッピー物語(100)   ”男と女”     

そして竜崎はこのプロジェクトは社運を

かけている事を力説した。

”仕事は皆いやでもするが心から納得してしかも心を合わせて

進む”のはもっとも大切である。しかしそれは最も難しい。

竜崎はこの事に最大の配慮をして

力説した。『皆さんに成否はかかっている。

このプロジェクトに社運がかかっている

これが成功か失敗で大きく変わるのだ

他に頼める人はいない。われわれだけである

どうかよろしく願いたい。』竜崎の言葉に

皆の思いは一つになってきた。


チャッピー物語(番外)   作者より(3)

皆さんのお蔭で連載も100回になりました。

皆さんに励まされたお蔭です。

つたない物語を最大限持ち上げてくれ、ねぎらって

くれたお蔭で継続は出来たということです。


チャッピー物語(番外)   作者より(4)    

さて”チャッピー物語”は今後どのようになって

行くのでしょう。作者としても毎回苦しみながら

1)新味はあるのか
2)整合性はあるのか
3)表現は妥当なのか
4)とにかく面白いのか
と自己に問いながら(うまくいかず)、1回ごとに
これでも悩みながら考えているのですが。

兼好法師の徒然草に『つれづれなるままに、日くらし、
硯にむかいて、心に移り行くよし無しことを、
そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそ
ものぐるほしけれ』
の気持ちが少しは分るような気がしています。


”巨人の星”の父親の星一徹みたいに”ちゃぶ台”を
ひっくり返せれば楽なのですが

止めれば自分がつまらないし
楽しみ生きがいにもなっています。
今後何処まで続けれるか分りませんが

出来るだけがんばります。


チャッピー物語(101)   ”男と女” 人物と内容     

ここで登場人物と内容の整理してみよう

登場人物  男と女

女ーー男と離婚  主人公  現在 温泉旅館の仲居

良雄ーー旅館の若主人

園子ーー良雄の母 旅館の女将

順三ーー良雄の父 旅館の主人

早紀ーー近所の旅館の娘

時枝ーー旅館の仲居頭

男ーーカメラマン 女と離婚  主人公

高子ーー雑誌社の編集長 澄江ー高子の母

竜崎ーー雑誌社の重役兼販売部長

節子ーー高子の友人 守ーー節子の夫


離婚の傷心の旅の途中職を得た旅館で
女将主人に見守られながら、
息子の良雄に求婚されている女が
時枝、早紀に快く思われていない

雑誌社の編集長の高子に会い、葛藤をへながら
男はカメラの仕事に取り組む。
高子には元恋人の竜崎と
友人の 節子がいる。

チャッピー   シーズ犬  最近出ない

家内

息子


チャッピー物語(102)   ”男と女”  いきさつ     

プロジェクトの活動もあり

雑誌の売行きの増大に合わせて

高子には別の呼びかけがあった。

販売担当の重役である竜崎である。

竜崎は高子が入社以来の先輩で、

多くの手ほどきをしてもらったものだ。

竜崎は最近高子が手がける雑誌の

売行きの好調さを称えた。

高子は素直に喜んだが、もう一つ

気がかりだった。というには

昔のことになるが、単なる先輩としてでは

ない思いがあったのである。


チャッピー物語(103)   ”男と女”  先輩後輩    

高子は入社当時から竜崎の仕事振り

とかだけでなく、人間として惹かれていった。

竜崎もそうであった。聡明で美人の

高子は飲み込みもよく教えることも

楽しくいつしか心の中で愛の対象になって

きて、高子もこの人ならばと決めていた。

しかし当時は社内での恋愛は何かとはばかれる

時代でもあった。

『古いアルバムめくり ありがとうってつぶやいた
いつもいつも胸の中 励ましてくれる人よ
晴れ渡る日も 雨の日も 浮かぶあの笑顔
想い出遠くあせても
おもかげ探して よみがえる日は 涙そうそう』

夏川りみ   涙そうそう


チャッピー物語(104)   ”男と女” 母    

もうひとつ気になったことがあった。

高子の母の澄江の事であった。
母は田舎に一人でおり病弱で

病院通いの身であった。高子は
母の事が気がかりで将来自分が

結婚する相手にも迷惑を掛けることに
なるのではと思っていた。

全てを受け入れてくれる相手が
本当の伴侶となれるのであろう。


雪解け間近の 北の空に向かい
  過ぎ去りし日々の夢を 叫ぶとき
  帰らぬ人達 熱い胸をよぎる
  せめて今日から一人きり
  旅に出る
  ああ 日本のどこかに
  私を待ってる人がいる
  いい日旅立ち 夕焼けをさがしに
  母の背中で聞いた 歌を道連れに』

いい日旅立ち   山口百恵


チャッピー物語(105)   ”男と女” 澄江の立場    


高子の母 澄江は高子が小さいころ

連れ合いが病気でなくなり

女で一つで高子を育ててきた
一流大学まで出して雑誌社に
就職した高子に対し澄江の心配は高子が
いい人を見つけ結婚するだけだあった。

自分の望みはあと一つだけ
病院通いをしながら都会の娘の
事を案じつづけていた。

しかし自分の病気と多額の借金が娘の
足かせになっているのも知っていた。

『きんらんどんすの帯しめながら
花嫁御寮はなぜなくのだろう
文金島田に髪結いながら
花嫁御寮はなぜなくのだろう』
童謡   花嫁人形


チャッピー物語(106)   ”男と女” 疎遠     

そういうこともあり、高子と竜崎は
いつしか疎遠になっていた。

社内事情を考えたのか、身を引いたのか

仕事が面白くそれどころではなかったのか
職場も変わり2人も自然に会う機会も
少なくなってきた。

『愛する事に疲れたみたい
嫌いになった わけじゃない
部屋の明かりはつけていくわ

カギはいつもの下駄箱の中
きっと貴方はいつものことと
笑い飛ばすにちがいない
だけど今度は本当みたい

貴方の顔もちらつかないわ

男はいつも待たせるだけで
女はいつも待ちくたびれて

それでもいいと慰めていた
それでも 恋は恋』

松山千春   恋


チャッピー物語(107)   ”男と女” 歳月     

 
竜崎は才能に恵まれ、上司の覚えもよく

営業端で頭角を示し、重役兼務部長に

上り詰めた。高子も仕事に打ち込み編集長に

抜擢されていた。

それからすでに長い年月は経過していた。

雨 潸々と この身に落ちて

わずかばかりの運の悪さを 恨んだりして

人は哀しい 哀しいものですね

それでも過去達は 優しく睫毛に憩う

人生って 不思議なものですね』

美空ひばり   愛燦燦


チャッピー物語(108)   ”男と女” 食事     

竜崎は高子に最近の雑誌の好調さ

と高子の苦労をたたえた。

高子も仕事に掛けてきた。

しかも今回は購買挽回をかけた

プロジェクトが大成功であったので

饒舌になった。今後いかにすべきか

についても意見の交換をしておきたかった。

”一味”という言葉がある。悪党一味、山賊一味

などがある。酒を介して食事を共にすると、

日中どんなに交流するよりも、本音が言え、

”一味的”結束が図れるのであろう。


チャッピー物語(109)   ”男と女” 何か     

しかしながら

仕事の話だけで終わると、高子は何か

物足りない思いがした。もうすでに

あの時のときめきは

過去のことだったのだろうか。

もうすでに立場がちがうのだろうか

『夕陽の丘の ふもと行く
バスの車掌の襟ぼくろ
わかれた人に 生き写し
なごりが辛い たびごころ

かえらぬ人の 面影を
遠い他国で 忘れたさ
いくつか越えた 北の町
目頭うるむ たびごころ』

夕日の丘  石原裕次郎 浅岡ルリ子


チャッピー物語(110)   ”男と女” 竜崎の立場     

竜崎もあの時、いざ高子に求婚しようという時に

会社の方針で海外赴任が決まった。

当時としては海外に行くというのは

会社としてはよほどの人物とみなした

人だけであった。竜崎もこの期待に

沿うべく一代決心をして赴任した。

彼女を向こうに連れて行くとかなど

許されない今とは違う状況だった。

無事に使命は果たした時には

多くの歳月が流れていた。そして

竜崎はいまでも独身であった。


『おそかったのかい 君のことを
好きになるのが 遅かったのかい
ほかの誰かを 愛した君は
僕を置いて 離れて行くの
遅かったのかい 悔(くや)んでみても
遅かったのかい 君はもういない』

佐川満男    今は幸せかい


チャッピー物語(111)   ”男と女” 思慕      

一方カメラマンの男も仕事が一段落し、

やっと身の振り返りができるように

なってきた。プロジェクトの疲れをいやし、

同時に高子のことを考えていた

外柔内剛の元の女に対し、見かけは強いが

どこか壊れそうで、倒れそうな高子で、

可哀想だなと思ったのも事実だった


恋というもの 知りたくて
あの娘の名前をよんでみたら
俺の心のかたすみを 冷たい夜風が
吹き抜けた ああ この寂しさは
もう恋なのか
 ああ この寂しさは
もう恋なのか』

にしきのあきら  もう恋なのか


チャッピー物語(112)   ”男と女” 友人     

高子のほうは友人などと会った時

皆から羨ましがられた。

なにしろバリバリの編集長である。

友人は平凡な結婚をして子供もでき

家庭の主婦に納まっているのも多かった。

身なりも構わず唯主人子供の為の

人生に不満とため息を漏らすのである。

”何かを捨てなければ何かを得られないのか。”

高子のほうでは、逆に羨ましく思う部分も

あった。夜一人になると孤独で寂しい気分は

だれにも理解されないと思った。


『小さな日記に つづられた
  小さな過去の ことでした
  私と彼との 過去でした
  忘れたはずの 恋でした』

小さな日記   フォーセインツ


 チャッピー物語(コーヒーブレイク) (04)

以前から気になっていたが、職人気質とはいかなるものかと。
たまたま新聞の評論を見て、その案内により
”五重の塔”の演劇を見に行った。

”のっそり”とあだ名された渡り大工の十兵衛が
恩義ある大工の棟梁の川越の源太をないがしろにして
施主の朗円上人に(自分に全部やらせてほしいと)直訴した。

親方の源太は葛藤したが、結局譲るだけでなく
代々伝わる設計手法をも、教えようとしたが
全部十兵衛に拒否された。

落成式の前の晩、大嵐が
来て果たして十兵衛の作った五重の塔がどうなるか
が最大の見せ場である。

言わずとしれた明治の文豪、幸田露伴の名作である。
西洋文明の流行に竿さし、職人気質を
通じ日本のすぐれた文化と精神を標榜されたとされる。

職人気質の一端を味わったような気がしたが。
さて物語のカメラマンの主人公はいかに生きるべきか?
はるかに難しい時代に生きる一人の男はさてさて


チャッピー物語(113)   ”男と女” 主婦    

高子の友人の一人である節子も家庭の主婦に納まっていた。

小さい子供2人を育てながらサラリーマンの主人守と仲良く

暮らしていた。時々時間があるとき高子と”だべる”のが楽しみの

気のおけない仲だった。

人それぞれの幸せというものがあるのだろうか。

でも節子なりに高子をうらやましく

思っていた。自分にも何かできないか。

勿論家庭を大事にしながらである。


チャッピー物語(114)   ”男と女” 職探し     

節子は職探しをはじめた。 学校を卒業して数年の

OL生活の経験があるが、主人 守と結婚してからは

主婦として治まり、子供も直ぐ産まれたので、世話に追われ

特に技術があるわけではなかった。

近所の奥さん方にも聞いたりしたが要領を得ない。

新聞のチラシもよく注意してみた。

子供と主人の帰るまでの時間帯でしかも節子が

出来そうなものは見あたらなかった。


『風の中のすばる
砂の中の銀河
みんな何処へ行った 見送られることもなく
草原のペガサス
街角のヴィーナス
みんな何処へ行った 見守られることもなく
地上にある星を誰も覚えていない
人は空ばかり見てる
つばめよ高い空から教えてよ 地上の星を
つばめよ地上の星は今 何処にあるのだろう』

地上の星     中島みゆき


チャッピー物語(115)   ”男と女” 節子の行動     

知り合いのコネもないので、ハローワークに

行ってみる事にした。手続きをして

パソコン検索をして職業の応募を探すように

言われた。何十台のパソコンが並び大勢の

求職者がそれに向かっていた。

こんなに大勢の人がきているのかと

節子は思いながら、それに向かった。

自分の年齢、希望職種、地域

希望月収または時給などをインプットしながら

求職をしていくのだ。


チャッピー物語(116)   ”男と女” 応募      

パソコンはOL時代に触ったくらいであった

が何とかこなし、希望の職をプリントして

係の所に持参した。係員は”ジロッ”と節子を

見たようなきがした。口調は丁寧だったが

節子はその視線に”ヒヤッ”とした。

『ここはすでに30人が応募していますが

かまいませんか』と係の人は事務的に質問した

節子は”そんなにたくさんの人が”と

思ったがお願いした。


チャッピー物語(117)   ”男と女” 高揚      

自分なりの履歴書を書いてポストに投函した

節子はすでに高揚していた。

もう直ぐ就職できる。そうしたら

どうしよう。給料が入ると子供たちにも何か

主人にもプレゼントをしたい。そして

通勤するなら新しいドレスと靴も

買っておしゃれもそれなりに整えよう。

まったく新しい未来が始まり

生きがいができるといった思いに

胸を膨らませていた。

『菜の花畑に 入日薄れ
見渡す山の端 霞ふかし
春風そよふく 空をみれば
夕月かかりて におい淡し』
童謡  朧月夜


チャッピー物語(118)   ”男と女” 不採用      

それから1週間たった。ポストに応募会社からの

通知がきていた。今日か明日かと待ちかねていた

節子は早速封を切った。でも中身は不採用だった。

”残念ですが今回はご期待に添えません”

と事務的に書かれているばかりだった。

節子は不採用の理由が書かれているのか

と探したがどこにも無かった。高揚しただけにがっかりしたが

”まいいいか 他にもあるさ”と気楽に考え直した。

節子が本当の状況が分ってくるのは

これからだった。


ャッピー物語(119)   ”男と女”  夫      

夫の守に報告すると、『節子(セツコ)が

ひっくり返って コセツ(骨折)したのか』

守ーー『どれどれ オーイ ママが痛がっているぞ』

『どれどれ、イタイイタイの飛んでいけ』

知らぬ間に来た子供たちも

『イタイイタイの飛んでいけ』

節子ーー『ふざけないで 30人も受けたのだから』

守ーー『30人だって俺など100人もの女を

振り分け掻き分け選んだのがママだよ』

子供達ーー『へーママってすごいんだな』

守ーー『でも100人目には疲れてしまって

つかまったんだ』

子供達ーー『ギャー キャー ゲラゲラ』

節子ーー『止めてよ 子供が本気にするから もう』


チャッピー物語(120)   ”男と女”  旅館        

旅館の話に戻る。

仲居頭の時枝は良雄から(求婚された

新参の女)に対して腹が立って仕方なかった。

女将の園子も最近は女を自分より

大事に扱っているような気がしていた。

園子を助け温泉に青春を掛けていた

時枝にとって女は許されない存在と

映っていた。あんな女に乗っ取られるとは

温泉のためにも何とかしなければと思っていた。

同様の思いをする近所の温泉の娘の

早紀と相談するようになっていた。

早紀にとっても何処から来たかも分らない女に

幼馴染の若主人の良雄を横取りされる

ことは我慢のならない事であった。


チャッピー物語(121)   ”男と女”  いじめ        

仲居頭の時枝は何かにつけて無理難題を

持ちかけ、失敗も彼女のせいにした。

そして、みなの前で叱責を繰り返した。

女将のいないところでいじめを繰り返していた。

『こんなことぐらい分らないの、なにをやってんのよ

あんたに仲居の資格はないよ

やる気のない人は止めてもらっていいのよ』

訓練というのは心の中になんとか成長して欲しいという

心があるものだが、見かけ上はいじめと区別しにくい。

それは地球の表と裏ほど違うものだ


チャッピー物語(122)   ”男と女” 千佳子       

そのころ女にも強い味方ができていた。

同じ仲居で千佳子(ちかこ)といった。

ちょっと、反抗的でおしゃべりなタイプであった。

『最近の時枝さんときたらまったくひどいのね

なんでもあなたのせいにして、

しかも怒り方も異常よ

まったくヒステリーも度が越しているよ』

『あいつは、あなたが目立つもんだから

憎んでいるのよ。いつか女将に言いつけてやるわ』

『わたしも気が付かず悪いのだから』といいながら

女も千佳子に助けられた気分だった。

『知床の岬に はまなすの咲くころ
思い出しておくれ 俺たちの事を
飲んで騒いで 丘にのぼれば
はるかクナシリに 白夜は明ける』
知床旅情  加藤登紀子


チャッピー物語(123)   ”男と女”  忍耐       

女も普通の仕事はこなせるように

なって来たのだが、やはり例外の突発的な

事は分りにくい。其処を突然、突かれるので

不器用で失敗も多く、けれどもめげなかった。

千佳子という気の許せる友が出来た上

良雄、園子に信頼されている事があったからである。

結婚の事は 決心は付かないが、自分をそこまで

認められているということに、

応えようという意識が強く芽生えていた。

人は弱くもなるが、支える人がおれば

まったく強くもなれるのであろう。

『君はおぼえているかしら 
あの白いブランコ
風にふかれて 二人でゆれた
あの白いブランコ
日暮れはいつも淋しいと
小さな肩をふるわせた
君にくちずけした時に
優しくゆれた
白い白いブランコ』

ビリーバンバン   白いブランコ


チャッピー物語(124)   ”男と女” 激怒        

また早紀も訪れてきた。さすがに

お嬢さんだけあって直接意地悪は

出来ないだけに、怒りがさらにつのっていた。

そこで良雄にぶつけるのである。

『どうしてあんな女がいいの』と

2人になれば、泣き喚くのである。

良雄もこれには困ったがいかんともしがたい事だった。

早紀はさらに時枝に恨み辛みをぶつけ

けしかけるのだった


二人の恋は 終わったのね
  許してさえ くれないあなた
  さようならと 顔も見ないで
  去っていった 男の心
  たのしい 夢のような
  あのころを 思い出せば
  サン・トワ・マミー
  悲しくて 目の前が暗くなる
  サン・トワ・マミー』

サントワ・マミー   越路吹雪


チャッピー物語(125)   ”男と女” 気使い        

千佳子(ちかこ)もさらに女に語りかけた。

『近頃の早紀さんもおかしいね

良雄さんを貴女に取られそうに

なったので、時枝と共謀しているのよ

気を付けなくてはね』

女は苛めにひるみそうには

なるがなんとか堪えられるように

なってきた。しかし早紀の件については

自分が良雄との間に入ってきたので

早紀を苦しめるようになったのでは

と気使っていた。

『遠い遠い はるかな道は
  冬の嵐が 吹いてるが
  谷間の春は 花が咲いてる
  ひとりひとり 今日もひとり
  銀色の はるかな道』

銀色の道  ダークダックス/ザ・ピーナッツ


チャッピー物語(126)   ”男と女” 千佳子の立場       

千佳子は小さい時に母に死なれ、

父親の手で育てられた。

それだけに母の面影を思い出しては

泣いて暮らしていた。グレたりして

友も少なかった。

ある時喧嘩をして、相手を傷つけ

学校も退学してふてくされていた。


女心の悲しさなんてわかりはしない
世間の人に
よしてよしてよ 慰めなんか
嘘と涙のしみついた
どうせ私は 噂の女』

内山田洋とクールファイブ   噂の女


チャッピー物語(127)   ”男と女” 千佳子の思い       

父親だけは心配して説教をくりかえしたが

聞く耳を持たなかった。

千佳子にとっては、愛すべきなにものも

なかった。信ずべきなにもなかった。


年頃になり好きな道もなく、家にいても、

しかたなく、退屈紛れに父親のコネで、この温泉の

仲居に雇われたのである。


『しかられて しかられて
あの子は町までお使いに
この子は坊やをねんねしな
ゆうべさみしい村はずれ
コンと狐がなきやせぬか』
童謡   しかられて


チャッピー物語(128)   ”男と女” 親密      

反抗的で、言いたい事をいうので、

温泉でも皆から敬遠されがち

だったが、新参の女だけは異なっていた。

いろんな親切をされる内、仲良くなってきたのである。

千佳子にとっては無き母の面影をみたのか

姉のように慕っていった。

女も千佳子の性分がよく理解できた。

人は思いがけない所で味方にも敵にも

なるのだろうか。


『月の砂漠を はるばると
旅の駱駝がゆきました
金と銀との鞍置いて
ふたつ並んでゆきました

金の鞍には金の瓶
銀の鞍には銀の瓶
二つの瓶はそれぞれに
紐でむすんでありました』

童謡  月の砂漠


チャッピー物語(129)   ”男と女” 思案        

時枝と早紀もいらだっていた。

女を追い出そうという事も

うまくいかず、良雄にも

まともに相手にされず、

しかも千佳子も向こう側になっている。

どのようにしたらいいのか

という点で作戦をねった。

彼らには意地悪とか、いじめとかの

意識は全然なかった。あくまで

悪辣な女を追い出す事が

旅館のため、良雄のためになる

いう思いであった。大抵の揉め事は相手の

立場を考えれば解決できるであろう。

『涙じゃないのよ 浮気な雨に
  ちょっぴりこの頬 濡らしただけさ
  ここは地の果て アルジェリヤ
  どうせカスバの 夜に咲く
  酒場の女の うす情け』

カスバの女   エト邦枝


チャッピー物語(130)   ”男と女” 自縛        

時枝と早紀は共謀していった。

やはり女将の園子に訴えることだろう。

しかし信頼厚い女の悪口だけでは

女将も承諾しないだろう。

なにか確実なものを持っていかなければ

ならない。それでは

主人の順三はどうかと考えた

(人を陥れる人はその穴に自分が

落ちることを知らないのだろうか)


チャッピー物語(131)   ”男と女” 転機

順三ならば我々の言い分を

聞いてくれるのではと考えた。

時枝と早紀が打ち合わせて

順三に相談したことが、局面を

多いに変わる事になることが

そのときは誰も分らなかった。

未来はいつも分りはしない。


『川は流れて どこどこ行くの
人も流れて どこどこ行くの
そんな流れが つくころには
花として 花として 咲かせてあげたい
泣きなさい 笑いなさい
いつの日か いつの日か
花をさかそうよ』

花    石嶺聡子


チャッピー物語(132)   ”男と女” 契約     

カメラマンの男の話に戻る。

雑誌社ではプロジェクトの成功に

伴い、男と特別な契約を結んでいった。

それは長期的に日本の新紀行の

状況を紹介していくことである。

古い日本、新しい日本変わりつつある状況を男の

シャープな映像で読者に訴えるということである。

具体的には男に任せるように

竜崎と高子は支援する事になった。


チャッピー物語(133)   ”男と女” 責任    

高子は男に充分な手当を与え

旅行とかが自由にできるようにした。

雑誌であるから月に1度だけ

作品を送付してもらうことを要請した。

男も高子の要請を承諾して

カメラなどの準備をしていった。

しかし男もプレッシャを感じていた。

あまりに自由にしかも高額で任せられる

と言う事は責任も重たいという事である。

『あした浜辺を さまよえば
  昔のことぞ しのばるる
  風の音よ 雲のさまよ
  寄する波も 貝の色も』
童謡   浜辺の歌


チャッピー物語(134)   ”男と女” 誰かのために       

与えられた事だけすることは、

面白くもないが、それだけ楽である。

うまくいかなくても他人のせいにできる。

ところが任せらると言う事は

全部自分の責任になるのだ。

男は重圧を感じながらもここが飛躍の

時と感じていた。そしてもう一つは

高子の依頼ということでもあった。

編集長という熾烈な立場が分ってきただけに

自分ががんばることが高子を守りささえる

ことになると感じていた。

人はだれかの役に立ちたいのだ。

それも気になる人のために


『君の名はと たずねし人あり
  その人の 名も知らず
  今日砂山に ただひとりきて
  浜昼顔に きいてみる』
君の名は   織井茂子


チャッピー物語(135)   ”男と女” 喫茶店       

男が調査の旅に出かける前に

近くの喫茶店に高子と

打ち合わせを行った。

すでに大綱は決まっていたので

激励会みたいなものだ。

高子は男の体調管理を心配し

風邪など引かないように話した。

その時、聞き覚えの音楽が

流れてきた。

『別れても別れても心の奥に
いつまでも いつまでも
憶えておいてほしいから
幸せ祈る言葉に換えて
忘れな草を あなたにあなたに』

忘れな草をあなたに  梓みちよ・菅原洋一


チャッピー物語(136)   ”男と女”  曲       

男は『この曲はどこかできいたことが

ある。とても大切な時に』と思った。

そして前の女と最後の日に

喫茶店で聞いたものだと思いだした。

その時の状況をさまざま

思いこしながら、男は感傷にふけっていた。

そして仕事とはいえ、高子との
しばらくの別れになる。それらは

@は現在の喫茶店での感傷
Aは別れた女の思い出
Bは高子との思い出
いわば3重写しの思いだ。


『赤い靴はいてた 女の子
  異人さんに つれられていっちゃった

 横浜のはとばから 船に乗って
  異人さんにつれられて いっちゃった』
童謡   赤い靴


チャッピー物語(137)   ”男と女” 3重写し       

男にとって今は高子と話しているが、

音楽を聴くことにより、別れた女との

生活を思いだし、それに耽っていると、

高子の言葉に、今度は

(写真を持参し、厳しい指摘で再挑戦し、

プロジェクトで激しい意見を交わした)

高子との思い出に耽る。

そして高子の言葉に我に帰る。


『いつのことだか おもいだしてごらん
  あんなこと こんなこと
  あったでしょう
  うれしかったこと おもしろかったこと
  いつになっても わすれない』
童謡  思い出のアルバム


チャッピー物語(138)   ”男と女” シーン      

それが次々に万華鏡のように

(次々とバラバラにシーンが変ると)

思えば、(女との思いでの背景に高子との思い出が

でて来ては、其処から現実の高子がでてくるような)

映画の連続回想シーンのようなものが男の脳裏に

繰り返されるのである。

これはカメラマンとしての業なのか

感性が澄まされすぎたのか

夢をみているのか

はっきりとは分らず、しかし

なぜか切なかった。

この3重写しが男の1つの発見と

気づくのは、だいぶ先のことだった。

『だれかさんが だれかさんが
  だれかさんが みつけた
  ちいさい秋 ちいさい秋
  ちいさい秋 みつけた
  目かくしおにさん 手のなるほうへ
  すましたお耳に かすかにしみた
  呼んでる口笛 もずの声
  ちいさい秋 ちいさい秋
  ちいさい秋 みつけた』
童謡   ちいさい秋みつけた


チャッピー物語(139)   ”男と女” 哀愁       

高子の方では、男がしんみりしている

のを見たが(3重写しまでは)分らず、自分も

同じくしんみり気分になってきた。

竜崎とはうやむやなままではあるが、

カメラマンの男に対する比重は知らぬまに

増していた。

通常の仕事上の付き合いとは

異なるさびしい思いに気が付いた。



『男と女の間には
深くて暗い河がある
誰も渡れぬ川なれど
エンヤコラ 今夜も船をだす
ローアンドロー
ローアンドロー
振り返るな ローロー』

黒の舟歌  野坂昭如


チャッピー物語(140)   ”男と女” 2人を想う      

喫茶店での話がつき

男が出発する時間となった。

高子はなにか別れがたい思いに

刈られたが、『元気でいってらっしゃい』

というばかりであった。

男はまず大阪から日本各地を

目指していた。

男は高子としばらく会えなくなるという思いと

もう一つ分かれた女はどこにいったのか、

”また会えるのでは”という

気持ちがあるのもうそではなかった。


チャッピー物語(141)   ”男と女”       

男の旅は始まった。それは日本の新紀行という

ものを写真に収める事

であった。仕事の為にはあちこち探しまわり

苦労していった。そして疲れた足取りで

昔懐かしい歌を口ずさんでいた。

それは男の心情から始まり、やがて知らずしらずに

目的にもなっていった。


『水の都の 大阪は 僕にゃあんまり 広すぎて
昨日ミナミに 今日キタへ 足も重たく なりまする
一つ噂を 追いかけりゃ いやになります さみしさで
涙が泳ぐ この胸は いつになったら すっきりと
誰かあの娘を ああ 知らないか』

佐々木新一     あの娘たずねて


チャッピー物語(142)   ”男と女”       

男も各地の景色を周りながら

夜にはその地で有名な温泉に

入り疲れを癒す事にした。

そして番頭、仲居にいいスポットが

ないかと聞き取りもするのだ。


『窓は 夜露に濡れて
都 すでに遠のく
北へ帰る 旅人ひとり
涙 流れてやまず』

小林旭    北帰行


チャッピー物語  コーヒーブレイク(5

カメラマンの男が3重写しの心境になるが
これは川端康成の”雪国”をヒントにしたものである。

主人公の島村が雪国へ向かう汽車の中で向かい側の
座席に娘が窓に映っていた。ちょっと引用すると

『それは鏡のようだが、外の景色が流れていた。
つまり写るものと写す鏡とが、映画の2重写しの
ように動くのだった。登場人物と背景とは何のかかわりも

ないのだった。しかも人物は透明のはかなさで風景は夕闇の
おぼろげな流れでその2つが融けあいながら、この世ならぬ

象徴の世界を描いていた。殊に娘の顔のただなかに野山の
ともし火がともった時には、島村はなんともいえぬ美しさ
に胸がふるえたほどだった。』

とある。この娘との未来をも予感させるすばらしい
秀逸な表現であろう。

ただ”雪国”は景色が主人公に影響を与えるに対して、
この物語では、心情に感じたものを、いかに具現化するかで
カメラマンの男を今後、悩ませていくのである。


チャッピー物語(143)   ”男と女” 節子の闘い      

節子の話に戻る

節子は編集長の高子と話あううち

自分も主婦だけでは、物足りなく感じ

求職をしたが、みごとに失敗をした。

楽しい夫の守と子供達に囲まれながら

それでも自分の賭けるものを探していた。

『夕焼小焼の 赤とんぼ
  負われて見たのは いつの日か

 山の畑の 桑の実を
  小かごに摘んだは まぼろしか』
童謡   赤とんぼ


チャッピー物語(144)   ”男と女” 履歴書      

あれから,なんども節子はハローワークに通い

満足できる就職先を探すのだが、

どこも旨くいかなかった。

節子はどうも履歴書の書き方に

有るのだろうと思った。

うまく書けないのだ。

そこでハローワークの中で

履歴書の書き方を教えてくれる

セミナーを受講した。


『子供たちが 空に向かい
  両手をひろげ 鳥や雲や夢までも
  つかもうと している
  その姿は 昨日までの
  何も知らない私
  あなたにこの指が 届くと信じていた
  空と大地が ふれあう彼方
  過去からの旅人を 呼んでる道
  あなたにとって私 ただの通りすがり
  ちょっとふり向いて みただけの異邦人』

久保田早紀       異邦人


チャッピー物語(145)   ”男と女” 選抜       

セミナーも盛況であった。

受講者も熱心にメモをとっていた。


講師も熱心でいかに現在の

就職戦線を勝ち抜くのが

難しいかを力説した。

節子にとって今までの経験から

これは真剣に聞かねばと感じた。

講師いわく『企業の求人の担当者

にとっては,よき人を選ぶのは当然だが

応募者が多すぎる。そこでは

応募者の文書でまず選別せざる

を得ない。』


『しゃぼん玉飛んだ 屋根まで飛んだ
  屋根まで飛んで こわれて消えた
 しゃぼん玉消えた 飛ばずに消えた』
  生まれてすぐに こわれて消えた
  風、風吹くな しゃぼん玉飛ばそ』
  童謡  しゃぼん玉


チャッピー物語(146)   ”男と女” 魅力       

講師はさらに力説した。

『したがってどれだけ魅力的な文書で

採用したいと思わせるものを届けるかにかかっている。

おかしいものは、ゴミ箱に捨て去られるのだ。

その文書とは履歴書であり、

職務経歴書である。

履歴を書くにはまず自分を

知る事である。 しかも数行の中に

キラリと訴えるものを』


『遠い山から 吹いて来る
  小寒い風に ゆれながら
  けだかく清く におう花
  きれいな野菊 うすむらさきよ』

童謡    野菊


チャッピー物語(147)   ”男と女” 棚卸      

講師は続ける。

『そのためには自分の過去の棚卸をすべきである。

自分の過去の趣味、職歴がどのような

ものであったかを。』

節子は聞いていたが益々不安になってきた。

自分には棚卸すべきのような

材料が何にも無いのではと


『北風吹きぬく 寒い朝も
  心ひとつで 暖かくなる
  清らかに咲いた 可憐な花を
  緑の髪にかざして 今日も ああ
  北風の中に 聞こうよ春を
  北風の中に 聞こうよ春を』

吉永小百合 マヒナスターズ   寒い朝


チャッピー物語(148)   ”男と女” 小さな事        

しかしさすが講師は続けた。

『わずかのことでもいいのです。

思い出しながら、それをメモに

するのです。

そして自分が過去褒められた事

失敗した事、そして感心を持った事

このようになりたい事とか人とか

なんでもいいのです。』


『われは湖の子 さすらいの
  旅にしあれば しみじみと
  のぼる狭霧や さざなみの
  志賀の都よ いざさらば』

学生歌  琵琶湖周航の歌


チャッピー物語(149)   ”男と女” メモ       

節子は思い直し、OL時代のことを

思い返しながら、メモを取っていった。

あの時の仕事、同僚、先輩、上司

の顔を思い出しながら、

経理の伝票をパソコンに入力、

伝票は別の部門がもってきた。

入力ミスをして怒られた。

5時間位残業したこともあった。

そういえば資料の順番を考えて

整理し直し上司からほめられた

ことなど思い起こしてきた。


『名も知らぬ 遠き島より
  流れ寄る 椰子の実一つ
  故郷の岸を 離れて
  汝はそも 波に幾月』

童謡   椰子の実  


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